戦艦 大和
タミヤ 1/350 徹底ディティールアップ決定版






↑日本海軍艦艇の対空兵装で最もおなじみの12、7cm連装高角砲。今回はシールドなしを紹介します。


八九式 12、7cm連装高角砲 シールドなし

前回に引き続き、今回も八九式12、7cm連装高角砲の紹介となりますが、今回は露
天で設置されたシールドなしのものを紹介します。

日本海軍において、圧倒的な信頼性を誇った八九式12、7cm連装高角砲は、1929
年に設計を開始し、31年に試作砲が完成。その後、数多くの試験における試行錯誤
の結果、35年に目標の精度を達成し、終戦までに1300門も製造され、各艦艇に装備
されました。

この高角砲は砲身の俯仰角速度と発射速度に重点を置いて開発され、その結果
毎分14発もの速射性を達成し、最大射程距離は13200メートルを実現しました。

砲の操作はあらゆる部分が自動化され、半自動砲とも呼ばれました。砲尾からの
砲弾の装填は、砲弾を砲架に乗せるだけで、バネ駆動によって自動的に行われ、
初弾を発射したあとには、発射の際の反動を利用して弾薬包が装填され、次々と
発射を行うことが可能でした。

照準も高射指揮所から送られたデータに応じて信管秒時が自動的にセットされ、
発射も高射指揮所の引き金に連動し、その時照準のあっている砲からのみ砲弾が
発射されるという自動化されたもので、空薬莢も自動放出されます。(5番高角砲の
坪井氏によれば、この空薬莢を受けて兵員が負傷する事故も起こっていたようです)

射撃に必要な人員は射手が1名、旋回手が1名、俯角手が1名、装填手が2名、
砲弾を運ぶ砲弾手を合わせて12名の兵員が必要でした。 射撃は主に高射指揮
所からの管制射撃になりますが、指揮所が破壊された時には、もちろん砲側照準
による射撃も可能でした。 管制時の射手や旋回手の役割は、指揮装置のデータ
と砲の照準が合っているかを確認することが主な任務になります。

なお余談ですが、HIGH-GEARedの母方の祖父は、戦時中は陸軍の高射砲隊隊長
(終戦時陸軍少尉)でした。

陸軍の高射砲は、海軍の高角砲にあたるものですが、敵機を射撃する際には どの
高度で信管が作動しているか、地上からのみの測定では判断しづらいため、標的の
吹流しを引く飛行機に同乗して、上空からデータを取ることも多かったそうです。

演習とはいえ、実弾が次々と飛んでくる中、もちろん命がけの任務でもあり、機に被
害を受けて着陸が困難になる事態も起こったそうです。(終戦後住職、現隠居)



↑では、早速1/350決定版大和のシールドなし高角砲のディティールアップを開始
します。これはキットのパーツをそのまま組み立てたもので、砲台と砲身を組み合わ
せただけのシンプルなものです。12、7cm連装高角砲は、なぜか昔から正確な形状
を再現したキットパーツが少なく、せっかくのキットの良さを台無しにしてしまうパター
ンが多かったのですが、タミヤのこの高角砲は、おそらく現在出回っている各スケー
ルの高角砲パーツの中でも、最も実物に近い形状を再現しているものといえると
考えています。(シャッターの位置がもう少しオフセットしていたら完璧でした)


↑これは後部の様子です。左側の照準所の裏側がちゃんと実物どおり抜けている
のはなんともありがたく、ディティールアップベースとしては最適です。また、控え
目ではありますが、砲尾には、砲弾の装填架もちゃんと再現されているので、ここ
をメタリックで塗装するだけでも、それなりに実感を出してくれるのに役立ちそうです。


↑ディティールアップは、まずは砲身側から開始します。使用パーツはシールド付
き高角砲の時と同じ、FUKUYAの真鍮挽き物高角砲身です。しかし、見てのとおり、
長さも違い、これまでのように基部に穴をあけるような加工も難しいため、「これいった
いどうやって使えばいいの??」と思うのが本音です。


↑いろいろ考えてみた結果、砲身をまず切断し、砲身の延長上にある裏側のモー
ルドを全て削り、キット砲身よりわずかに低い場所に設置してみることにしました。
上が加工前のパーツ、下が加工(荒削り)後のパーツです。


↑後部にプラバンを貼り付けて砲身に合わせた高さを出し、砲身を接着します。
キット状態よりも、少々砲架の位置を含めた駐退発条筒の位置が上がってしま
いましたが、本来キットパーツの発条筒の位置自体が、実物より少し低めに設定
されていたので、むしろ丁度良くなりました。


↑接着を終えた砲身を上からみた図です。駐退発条筒の間にある砲身モールドを
切削していないので、発条筒の間に謎の筒が確認できますが、これは見なかったこ
とにしておきましょう。(笑) 上記しておりますように、本来は駐退発条筒は砲身より
一段高い位置に設置されているものですから、こうしてできた立体感も実感的とい
えば実感的です。


↑このパーツは必要数が6基分ありますので、各砲に個体差がでないように、慎重に
作業を進めなくてはいけませんでした。 砲身側のディティールアップは、まだ終わ
りではありませんが、次は砲台側の作業を開始します


↑前回のシールド付き高角砲の紹介で、「シャッター取り付けは高角砲で終わり」
と記載しましたが、これがその最後のパーツです。 ライオンロア製のシャッターは、
砲側照準所楯のワクを一体に再現されているため、表面に並べられたリベットまで
も再現可能です。 このシールドなし高角砲用のエッチングパーツとしては、ライオン
ロアからは前部メンテナンスハッチ(?)のパーツも使用しました。


↑ライオンロアの2種類のエッチングパーツを取り付けたあとは、側面のジャッキス
テーの再現を始めます。 パーツは設定されていないので、資料に従った位置に、
0、3ミリの真鍮線を貼り付けて再現します。 上手くやるには、最初から必要な長さ
に切ってから貼り付けるより、この画像のように、少し長めの真鍮線を接着し・・・。


↑それから、このようにはみ出した部分をカットする方法のほうが作業性は良好
です。照準所床下の補強板には、ピンバイスで軽目穴を開けておきました。


↑続いて、もう片方の電動機室側も同様に再現します。


↑砲のメンテナンスに使用するラッタルも再現するのですが、これは本来はモンキ
ーラッタルが前後左右に張り巡らされているもので、1/350の場合ですと、かなりの
厚化粧になりそうな気がしたので、考えた結果、一部のみ通常のラッタルで追加し、ワン
ポイントとしました。今回の決定版大和では、モンキーラッタルでの追加ディティール
再現を行う予定はなかったですし、だからと言って通常ラッタルで前後左右に取り付
けるのは明らかに不自然なので、バランスを考えてこのような再現となりました(けして
面倒臭くてやっていないワケではありません)


↑これはいったいどのようなパーツなのでしょう?実は砲員が砲弾を装填するために
使用する装填台と照準所の床面のパーツで、ホワイトエンサイン製のものです。
左右のパーツが装填台、上に映っているものが照準所床面パーツで、それぞれ
切断してから折り曲げ、使用します。


↑右砲用の装填台(塗装済)を箱型に組んだ様子です。これを砲台と砲
尾にそれぞれ接着することで、映画「男たちの大和」で高知東生氏が演
じた川添二曹の装弾シーンを彷彿とさせる(笑)、装填台が再現できます。


↑このように、しっかり固定します。観測室床面および、電動機室への扉
も再現しました。(ホワイトエンサイン製汎用扉パーツ)

装填手は、この装填台に乗って砲弾手から手渡された砲弾を次々と装填架に乗せ
ていくことが任務でした。

「男たちの大和」に登場したこの12、7cm連装高角砲は、本当に完成度の高いもの
で、これまでたくさんの和製戦争映画を見てきましたが、あのような臨場感のある
高角砲射撃を見たのは初めてのことで、実写映像で確認できるようなブローバッ
クこそ再現されていませんでしたが、高角砲射撃の初の本格的映像化には本当
に感慨深い思いがありました。(製作側も苦心のあとを見てもらいたいのか?こと
あるごとに自動装弾のシーンを流してましたね) 


↑前から見た12、7cm連装高角砲の様子。これでようやく完成です。


↑右側面の様子。ジャッキステーは電動機室の側面にも回りこませました。


↑今回の12、7cm連装高角砲は、1/350で可能な限りのディティールアップを施し
ました。使用パーツは、FUKUYA、ライオンロア、ホワイトエンサインの3種類(自作
ジャッキステーを含めて4種類)を使用していますが、その中のどれを欠かしても
この再現は不可能でした。 キットパーツの原型がいいため、基本的には追加し
ていくだけの作業で、それなりのディティールを持った高角砲を再現できたのは、
大きな喜びです。

ところで、この大和の12、7cm連装高角砲ですが、25mm三連装機銃シールドなどと
同じく、個人的に長年の間、謎に思っている部分があるのです。

それは、戦闘時における、給弾方法です。 揚弾機から、砲弾手がバケツリレーの
ように砲弾を受け渡ししつつ、装填手の手に渡るのは分かるのですが、その揚弾機
がどこにあったのか?? それを示す文献にはまだ出会っていません。

大和の艤装平面図によれば、高角砲弾薬庫は第一副砲塔直下の第一、第二船倉
甲板および船倉甲板に存在します。 直上には副砲塔があるため、ここから高角
砲弾を直接上げることは不可能です。

砲弾をリレーする砲弾手は8人とされていたそうですから、高角砲座から揚弾機まで
は、それほど離れていないはずです。(映画「男たちの大和」ではブルワーク内に
扉があり、その近くに揚弾機が配置されていました) となると、第一副砲直下の船倉
甲板付近から、艦中央部へ砲弾を給弾する機器または兵員による作業があったもの
と思われるのですが、現状ではまだそれらの給弾方法を実証する一次資料には出
会っていません。


↑両面テープを巻いた割り箸に固定され、塗装を待つシールドなし高角砲郡


次回は、このシールドなしの高角砲を塔載する高角砲座について紹介します。


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