戦艦 大和
タミヤ 1/350 徹底ディティールアップ決定版






↑航空艤装は、この後アップ予定の航空作業甲板の頁でも紹介していきますが、ここでは
先にカタパルトとジブクレーンについて紹介します。


1/350戦艦大和 カタパルトとジブクレーン

1/350戦艦大和、徹底ディティールアップ決定版製作記は、開始から2週間が経過し、
終戦記念日をはさみました。

ここしばらく、副砲、主砲と、砲槓兵器類を中心に作業を進め、まだ機銃と高角砲のディテ
ィールアップを残しているわけですが、ここでいったん話題を変更し、航空艤装の製作を
進めていきます。

大和型戦艦は7機の艦載機を運用するため、当時世界の戦艦史上最大規模の格納庫
および航空艤装を装備していました。 

なぜ格納庫が必要かというと、それは主砲発射時の爆風から飛行機を守るためです。

艦載機の任務には、砲撃戦による着弾観測の他に、本来は巡洋艦が担当していた長距離
偵察も考慮に入れ、最終的には防空任務、攻撃任務についても検討され、水上爆撃機
瑞雲や、彗星艦上爆撃機を改造した機体の運用まで検討されるに至りました。

しかし、残念ながらそれらの案は実現することなく。、また、機数も定数を塔載して出撃す
ることはありませんでした。 時代は既に航空戦とレーダーによって行われる時代に変化し、
観測機による着弾観測等のの必要性もまた、少なくなっていたからです。


艦載機を射出するために必要なカタパルトは、大和の設計当初は大型の一式二号一〇型の導入
が討されましたが、結局は呉式二号五型という海軍の標準タイプのカタパルトが装備されました。

発射のタイミングに合わせて射手が引き金をまわすと、爆発筒内の火薬が炸裂してピストンが
動き、艦載機が乗せられた滑走車に繋がる作動索が引っ張られ、秒速30メートルもの速さで
艦載機が撃ち出されます。 発射直後は、機首が一瞬下がったりして、パイロットはヒヤリと
することが多かったそうですが、次の瞬間には機首が上がり、事故などは少なかったといいます。


↑ライオンロアのカタパルトのパーツを8割型並べてみました。実はこの画像を撮影した時、
足場のパーツの切り出しを忘れていたので、実際にはこれで全部ではありません。 1基の
カタパルトを組み立てるために、合計20枚のエッチングパーツを組み立てました。これら
のパーツも、電探パーツと同じく色の周りの悪さを考え、先に塗装を済ませてからの組み立
て開始になります。

カタパルトのような薄いトラス状のパーツは、エッチングパーツの得意分野です。各メーカー
のカタパルトパーツは、どれも出来のいいものばかりですが、メーカーごとの解釈の違いは
あるようで、細部の形状には違いがあります。今回使用したライオンロア製のパーツは、爆
発筒こそ再現していませんが、内部プーリーの再現が魅力的で、大変気に入りました。


↑カタパルト内部にプーリーを仕込んだ状態。プーリーは滑走台の裏側にもう一基再現さ
れるため、内部に再現されるプーリーは、全部で3箇所になります。


↑そして内部に仕切りを追加。内部プーリーを再現しているため、仕切りの数はゴールドメ
ダルのパーツより少なめです。今回は再現していませんが、爆発筒を仕込むとなると、これ
らの仕切りは更に間引く必要がありそうです。 HIGH-GEARedは射出機の仕組みにはあま
り詳しくありませんので(資料もあまりない)、今回は説明書の指示に従って素直に組み立てました。


↑足場の追加。射手はここに立つのではないかと勝手に理解しているのですが、間違って
いるかもしれません。(笑) 昔、日本海軍の実写ニュース映像ばかりを集めたビデオを持っ
ていまして、その中にカタパルトから零観らしき機体を射出する実写映像が映っていたの
を見ているのですが、数年前からそのビデオが行方不明になってしまい、現在確認作業が
困難になってしまっています。(汗)


↑滑走台を取り付け、先頭部に4個目のプーリを取り付けて、無事にカタパルトが完成しま
した。余談ですが、呉式カタパルトといえば、以前ハセガワが1/72スケールで、零式三座
水偵および、九四式水偵に、呉式二号射出機五型(大和に塔載されていたものと同じ)を
セットしたキットをリリースしており、カタパルトの構造研究用に役立つを考え、とても欲しか
ったのですが、結局入手することはありませんでした。キットのカタパルトが、どこまで正確
に再現されているものかは分かりませんが、カタパルトの大型モデルは貴重ですので、今
後機会があれば、研究材料としてぜひ入手しておきたいと考えています。


↑側面にはリベットがビッシリ並んでいて精密感があります。ライオンロアは、精密かつ、メ
リハリのある再現が得意のようで、このようなリベット表現は、他のメーカーのカタパルトと比
較すると随分過剰なのですが、だからといってうるさくなりすぎたり、あまりにもオーバー
スケールという状況にはけしてならないもので、設計者のセンスの良さが伺えます。


↑カタパルト内部です。仕切りをたくさんいれたゴールドメダルの設計とはまた違うアプロ
ーチで作られていて、新鮮です。このカタパルトは、実艦ではどのような方法で固定され
ていたのか?大和沈没の際には艦が傾斜した時に、右舷側のものが外れて落ちていく
場面が目撃されています。


↑もう1基のカタパルトも同じようにして組み立てます。こうしてみると、カタパルトのような
構造物は、エッチングパーツの独壇場という気がします。もし、エッチング技術によるこの
ようなパーツ製法が開発されてなければ、精密なカタパルトを作るのは至難の業になって
いたことでしょう。 このカタパルトは完成後にもういちど仕上げの塗装を済ませて完成です。


次はジブクレーンの再現です。 謎が多い大和の艤装の中では比較的珍しく、実物の図面
が残されているもので、この図面は製造元のIHI石川島播磨重工業内の膨大な資料の中から、
あの「船の科学館1/50戦艦大和」製作で有名な、日本海軍艦艇模型保存会の河井登喜夫先生
が発見されました。

以降、プラモデルにおいても、エッチングパーツにおいても、ほとんどのメーカーのクレーン
の形状は、この実物図面に基づいた形状を再現しており、保存会の大和研究の大いなる
成果のひとつとなりました。

今回は、図面に最も近い形状を再現しているライオンロアのパーツを使用します。



↑ジブクレーンのパーツを8割がた並べてみた図。これも例によって、全てのパーツではあり
ません。細かいトラス状のパーツなどは、パーツ番号が分からなくなる為、組み立て直前に切
り出しました。数えてみると、このジブクレーン組み立てに必要なエッチングパーツは、全部
で41枚にのぼりました。もちろん、今回使用した各社のエッチングパーツの中でも最多の部品
数になります。


↑まず、回転クレーン台の裏側のトラスを組んでいきます。ジブクレーンの図面をお
持ちの方ならお分かりになると思いますが、ほぼ資料と同一の構成になっており、ラ
イオンロアが資料的な下地に則って正確なパーツ設計を行っていることが理解でき
ます。


↑回転台の基部は円柱構造で、こればかりは板状のエッチングパーツではどうにもな
らない部分ですから、キットの回転台のパーツから切り出して使用します。この画像は
キットパーツの回転台の裏側ですが、こうしてみるとキットパーツの再現もなかなか大
したものです。これをベースに軽目穴を開けるだけでもそれなりにひきたつかもしれ
ません。


↑しかし、今回は基部以外は全てエッチング化するため、トラス部分を削り取っ
て、基部をノコギリで切り出します。


↑切り出したパーツをヤスリとペーパーで整え、エッチングパーツで組んだ回転
台にあわせます。エッチングパーツの方も、キットパーツの寸法に合わせて作ら
れているため、このようにスキマなくピッタリはまりました。


↑そして、回転台上部のディティールを追加。これも図面をお持ちの方が
みればお分かりになるはずですが、ほぼ資料そのままです。(起倒式支柱
の受け側の位置のみアレンジしています) これら部分の再現に関しては、
大和では貴重な第一次資料の発見の成果が非常に大きいという気がします。


↑続いて、起倒式支柱とジブを組み付け、ケーブルを張りました。空中線支柱はまだ取り付
けていませんが、写真解析によりますと、天一号作戦時には空中線支柱は取り付けられてい
なかったという説が近年有力です。 もしその考証が確かであれば、当時のクレーンは、この
写真のような姿であったということになります。


↑ジブの先端の様子。上下用滑車は内側に取り付けてしまったのですが、実際は外側に
取り付けられていたようですので、これは修正の対象になります。


↑起倒式支柱の様子。名前の通り、この支柱は起倒式で、これは倒した状態です。クレーン
起動時には、空中線支柱と同じ垂直に近い角度まで起こしてからジブをコントロールする仕
組です。なお、ライオンロアのパーツは、この支柱は倒した状態で再現するようになっており
ますが、エデュアルドのパーツは、起こした状態を再現できるようになっています。ケーブル
は、このパーツでは4本のケーブルパーツを組み合わせて再現されていますが、実際の
クレーンでは、このケーブルは1本のケーブルが複雑に絡み合うように行き来しているもので、
複数本張られているわけではありません。


↑空中線支柱は、模型映えを考えるとやはり外せないもので、今回も取り付けまし
た。まだ部品状態の船尾に仮置きしてみた様子です。


↑エッチングパーツの空中線支柱は、トラス状の構造をシャープに再現できる反面、
折り曲げた部分にスキマができることが欠点です。今回はこうして生じたスキマをす
べてゼリー状の瞬間接着剤で埋め、塗装しなおすことでトラスパーツどうしに一体感
を持たせました。また、支柱に登るためのラッタルも追加してあります。実際は、モン
キーラッタルか、横棒を溶接しただけの簡易ラッタルだった可能性がありますが、こ
こでは若干アレンジした表現としています。


↑塗装済のパーツを組み立てたからと言って、完成したらそのままではなく、上記のスキマ
を埋めた部分のタッチアップや、組み立て中に色はげしてしまった場所を修正するために、
もう一度仕上げのための塗装をやりなおします。 基部に爪楊枝を刺して持ち手とすれば、
吹き付け塗装も比較的簡単です。


大和型戦艦の航空艤装は、非常にディティールアップのやりがいのある部分で、今回は
カタパルトとクレーンのみを紹介しましたが、まだまだディティールアップの必要な箇所は
盛りだくさんです。

それらの紹介は、後半にアップを予定している「航空作業甲板のディティールアップ」に
て紹介予定ですので、またご覧くださいませ。



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