戦艦 大和
タミヤ 1/350 徹底ディティールアップ決定版






主砲はキットパーツは一切使わず、5種類のメーカーパーツを組み合わせて完成させました



1/350戦艦大和 主砲塔の組み立てとディティールアップ 前編

1/350戦艦大和徹底ディティールアップ決定版製作記は、ようやく大和のハイライトとも言える
主砲にきました。

今更説明の必要はありませんが、大和型戦艦に搭載された「九四式四五口径四六センチ砲
(秘密厳守の為、書類上の名称は四○センチ砲)」は、太平洋戦争期間中、世界の戦艦にあ
って、それまでに例のない巨大な艦載砲でした。

(戦艦以外の例では、実は46cm砲は単装のものが、フューリアスという巡洋艦に塔載された
例があるのですが、全く成果をあげることがないまま、のちに航空母艦へ改装されました。)

三連装砲塔3基という主砲レイアウト自体も、日本海軍では初めて採用されたもので、それま
での主力戦艦であった、伊勢型戦艦、長門型戦艦の連装4〜6基というスタイルをくつがえす
画期的なものでした。 

この三連装砲塔は、1基あたりの重量が2670トン程もあり、駆逐艦1隻分にも相当する重量を
持つもので、砲身長は20メートル余り、一門あたりの重量は65トンあったそうです。

この砲身から発射された砲弾は、初速で秒速780メートル(時速2800)で撃ち出され、毎秒
60回転の回転運動を行いつつ、最大11900メートルの上空まで高度を上げ、42000メートル
先の目標まで、約90秒で到達します。 砲弾の威力ですが、30キロ先の厚さ40センチの
鋼鉄板を貫通させる威力を持っていました。

どうして日本海軍がこのような巨砲を開発する必要があったかといいますと、それは条約面
でも、工業能力的にも、日本のもてる主力艦の数が、当時の列強国と比べて少なかったこと
が原因です。 

すなわち、1隻で数隻を相手に出来るような戦い方が必要になり、そうした戦い方をするには、
相手の砲弾よりも遠くまで届く砲を開発し、敵艦が射程距離に入ってくるまでに、重大な損
害を与えられるようにする必要があり、結果、射程距離が長く、破壊力のある砲が求められ
たのです。

日本が46センチ砲を塔載すれば、敵国も同じく46センチ砲を開発してくれば同じこととも
言えるわけですが、当時仮想敵国と考えられていた米国の戦艦は、パナマ運河を通過する
必要性から、艦の横幅が制限され、46センチ砲の発射の衝撃に耐えられる船体を作ることは
不可能と考えられていました。

大和型戦艦の砲弾には、対艦攻撃用の九一式徹甲弾、一式徹甲弾、対空用の零式通常弾
と三式通常弾の4種類があり、フルに装薬した状態で、一発発射するごとに330キロの炸薬を
爆発させるため、砲身内部には3300気圧の圧力がかかり、200発程度撃つと、砲身は寿命を
迎えることになりました。

しかし、残念なことに大和の建造から沈没までに発射された主砲弾は合計311発、一門あた
りに換算すると34発しか発砲しなかったわけで、当然砲身を交換する機会はありませんでした。

映画「男たちの大和」や「連合艦隊」では、坊ノ岬沖海戦の冒頭で、迫り来る米艦載機郡に
三式通常弾を叩き込むシーンが描かれていますが、実際は発砲したという説と、発砲してい
ないという説があり、測距儀におられた八杉氏や石田氏は、常に測距不能状態であったと
証言されています。(このとき石田氏は、米艦載機が、パイロットの顔が見えるくらい近くまで
近づいてくる様子を見て、「石でもあれば投げつけてやりたいくらい悔しかった」と生前良く
口にされていました)

しかし、主砲を撃つ大和を見たいという思いは、ファンなら誰しも持っているものですから、
ああいうシーンは映画ならではのサービスと言えるのかもしれません。

なお、「男たちの大和」のレイテ沖海戦のシーンでは、主砲を旋回させるときに、甲板上の
機銃員が待避するシーンがちゃんと描かれていました。 主砲発射時の危険な爆風なら逃
れるためで、史実に乗っ取ったシーンをちゃんと再現してることに感心したものですが、
坊ノ岬沖海戦時では、なぜか機銃員の配置が終わり、砲塔上部の増設機銃に向かう兵員
が映った直後に三式弾の射撃がはじまりました。 せっかくレイテ戦での主砲発射をリアルに
再現していただけに残念ですが、映画の編集テンポを考えれば仕方のないことなのかもしれ
ません。


↑今回、製作のベースには、キットパーツではなく、ピットロードの「1/350大和改造セット」
を使用します。改造セットというネーミングですが、実際には主砲関連パーツだけを納めた
セットで、キャスト(ポリウレタン)製の砲塔と機銃座および防水キャンバス、そして真鍮挽き物
製の主砲身が含まれます。


↑これが、キャスト製の砲塔パーツ。キットパーツよりは若干小ぶりで、最新の考証に合わせ
た設計変更がされています。プラパーツと違い、こうしたキャスト製のパーツは型抜きの都合
に左右されず細かいモールドを入れることが可能ですので、砲塔のような複雑な形状のパー
ツを一体成型で抜くことに向いています。 

測距儀覆筒は一体成型で、伝声管も再現されているあたり、プラパーツとは一味違う良質パ
ーツといったオーラが漂っています。


↑防水キャンバスと、砲塔上部増設機銃座のランナーパーツの様子。増設機銃座は、近年の
考証にある、戦時急造タイプの6角形の形状がデザインされ、ブルワーク内側の補強板も再
現されています。

大和の主砲塔の側面形状は、一時的資料がないため写真解析による考察が一般的で、中
でもポーランド人の艦船研究家、ヤヌス・シコルスキー先生の出版された図面集の1/150
図面が大和模型ファンの間では有名です。

同氏の描かれた図面の側面形状が、かなりはっきりとした線で書かれているのに対し、ピット
ロードの主砲はそれに近い表現で若干ボカし、突出部を誇張した造型になっています。また、
測距儀はキットのものと比較すると、かなり小ぶりで測距儀シャッターを開けた状態を再現し
てあります。

なお、日本海軍艦艇模型保存会の大和を撮影した学研出版の写真集の中にも「アバウトなもの」
と注釈した上で、保存会独自の写真解析による側面形状の図面が記されていたのですが、シコル
スキー先生の解釈に近いものの、わずかに違うものでした。



↑これがその突出部分です。側面ラッタルがモールドされていますが、
これはエッチングパーツに交換するため、切削してなくしてしまいます。
側面形状が微妙なだけに、切削作業もそれらの造型を崩してしまわな
いように、入念な処置が必要でした。


↑切削完了。残った痕はサフを吹いた後には完全に消えてくれました。ラッタルをモールドで
再現してくれるのはありがたいと言えば有難いのですが、エッチングラッタルを追加すること
を前提とした場合、結果的に少々過剰サービスになってしまっています。(笑)


↑前盾のラッタルももちろん切削します。また、下に見えるキャンバスガードも
エッチングパーツに交換するため、切削します。キャンバスガードは砲座のモ
ールドに重なる形で成型されているので、綺麗に取り除くのに随分苦労しました。


↑ラッタルとキャンバスガードの切削完了。ピットロードのキャストパーツに使わ
れているレジンは、ハイキャストなどと比べると若干硬いもので、エッジをシャー
プに出してくれる半面、切削する際にはプラパーツと同等か、それ以上の硬度
があり、なかなか手ごわい素材です。


↑背面ラッタルと出入り口。この部分も最新考証に合わせてシャープな仕上がり
になっています。しかし、これらもエッチングパーツに交換するため、もったいな
いですが、切削させていただくことになります。


↑そして言うまでもないですが、このような大きなバリも取り除きます。測距儀の覆筒
側面の測距儀取り出し口(?)のモールドも、エッチングパーツに交換するため、後
に削り取りました。


↑これらの切削作業が終了したら、レジンプライマーで表面を軽く整え、切削したラ
ッタル類をエッチングパーツにて追加していきます。今回取り付けるラッタル類は
塗装後の後付け用にいくつか用意してあったもので、先に塗装を済ませてあるものです。


↑背面のラッタルも同じ様に追加します。出入り口は、ライオンロアのエッチングパーツ
を使用したのですが、解説書にあるように折り曲げて成型してから取り付けると曲げた
部分がダルくて実感がなくなってしまうので、扉、足場、ラッタルのみっつに分断してからひとつ
ずつ取り付けました。 赤い塗料が付着しているのは、赤茶下地に使う艦底色を、同じ
エッチングパーツ内の他のパーツに吹き付けた際に付着したものです。 主砲塔は、
この後全体を赤茶下地に塗装する作業がまっているので、多少色が先に付着していた
ところで関係ありません。(笑)


↑続いて、砲塔上部の手摺を接着していきます。実際の艦船では、戦闘の際にはこれらの
手摺はチェーンを抜いて支柱を倒していたもようですが、今回製作している大和は出撃直前
の姿ですので、模型映えの点でも大きなアクセントになるこのような手摺は、しっかり再現して
おきます。これは上部に機銃座のない一番主砲塔上部の様子です。


↑これは増設機銃のある2番主砲塔上部の様子です。これら手摺の再現には、これまで20回
近く使用してきて慣れている、ゴールドメダル製のエッチングパーツを使用しました。このパー
ツに初めて挑戦した時は、副砲の手摺と同じく、折り曲げて形を整えることが上手くいかず、
斜めに折り曲げてしまったり、落として無くしそうになったり、使用する接着剤の量が上手く分からなか
ったりして、泣きそうになりながらやった思い出があります。(笑) このパーツは、タミヤキット
のパーツに合わせて設計されているようですが、ピットロードの主砲上面にもピタリと合い、修
正作業もそれほど必要とはしませんでした。(何本か脚の長さを切り詰めたのみです)


↑タミヤのキットパーツには、ジャッキステーが精密にモールドされているのですが、ピット
ロードのパーツにはモールドされていません。よって、これをライオンロアの汎用ジャッキス
テーで追加しました。 スペース的に前面や後部のジャッキステー再現は無理だったので、
側面のジャッキステー再現に焦点を当てました。


↑ななめ左側から見下ろした図。前面部分のジャッキステーは、手摺の途切れた部分のみ
の再現としました。


↑レジンモールドを削り取ったキャンバスガードをエッチングパーツで追加。
細かい軽眼孔がたくさんあけられていて、レジンパーツとは比較にならない
精密感です。パーツは、ライオンロアとエデュアルドの2種類が使用できます
が、ライオンロア製の方が折り曲げ部分の切れ目が深く掘られていて直角を
出しやすかったので、ライオンロア製を使用しました。


↑測距儀覆筒側面のハッチもエッチングパーツによる再現としました。これまでの製作記の
画像では、このハッチのモールドが残っていますが、この時点で削り取り、ライオンロアのパ
ーツを貼り付けました。 エデュアルドにも同様のパーツが存在しますが、ピットロードの測
距儀覆筒のサイズを考えると、少し大きめで使用できませんでした。 なお、実艦では、この
ハッチを開け、内部の測距儀を取り出すことができました。

砲塔本体のディティールアップは、これで完了です。 次回はいよいよ46cm主砲身のディテ
ィールアップを紹介します。


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