HIGH-GEARed AW11のボディーカラー








***ボディカラーにロッソコルサを選んだ理由***

2003年6月、HIGH-GEARedのAW11はTOYOTA純正スーパーホワイト2(カラーコード040)
から、FERRARI純正ロッソコルサ(カラーコード300/12)に色換え塗装を施しました。

ロッソコルサとは、世間的呼称でよく言われる『フェラーリレッド』のことです。


『どうせ赤にするんだったら高級なフェラーリの赤に!』とミーハーな思いで色換
えしたかのように受け取られがちですが、自分にとって、この色への思い入れはそ
のようなミーハーな受け取り方とは一味も二味も違います。

フェラーリの赤への思いいれが強くなった時のことを振りかえると、はるか小学生の
時代にまで遡るのですが、当時、生活が豊かではなかったこともあって実家には自
動車はなく、乗せてもらう機会も少なかった僕が車に興味を持つようになったのは
コンペティションフィールドの観戦にはじまりました。

話をもっと遡れば、当時けっして『出来の良い良い子供』ではなかった自分がゲー
ムセンター通いをしていた頃に、当時人気だったレースゲームに夢中になったこ
ともあって、そこからコンペティションへの興味が沸いてきたのだと思います。

初めて興味を持った車が乗用車ではなく、レーシングカーだったこともあって、僕
自身の車への思いいれは現在でも自分の車作りにも現れているように思います。

レースの世界に興味を持てば、もちろん次の興味はレースの歴史へと向かうわけで、
ここで初めてフェラーリの活躍を知りました。もちろん、最高級のスポーツカーメー
カーとしての認識はありましたが、むしろ、興味を持ったのはフォーミュラ1やル・
マンをはじめとする、レースへの参戦、そして勝利の記録です。

フェラーリが戦後から世界中のメジャーレースのタイトルを総なめにしてきたこと
はもちろんですが、僕と同じように、数々の優勝を成し遂げてきたマシンの優雅な
スタイリングにも魅せられた方は多いと思います。



↑フェラーリのレーシングカーで個人的に最も美しい
と感じている2台(上:512Sル・マン 下:333SP です)


もちろん、それらのマシンは全てがイタリアのナショナルカラーでもあるイタリアンレ
ッドに塗装され、そのボディは見とれる程に美しく輝いていました。今思えば、速さと美
しさを兼ね備えた王者の色という印象が幼い心に焼き付けられていたのかもしれません。

その後は、いわゆるスーパーカー少年としての車好き生活を送ります。いつかはフ
ェラーリに乗りたい!と叶わぬ夢を見続ける中で、小学校高学年の頃に、はじめて
AW11と出会う機会が訪れました。

レーシングカーがきっかけで車好きになった自分にとってはミッドシップであるこ
とが自分の乗りたい車の第一条件だったこと、当時はまだ新車価格だったとはいえ、
けして非現実的なプライスでないこと、そして当時それはスーパーカーと並べても
遜色ないであろうと思われたインパクトの強いスタイリングをもっていたこともあ
り、その後、実際にAW11を購入するまでの10年間に渡ってこの車は僕を魅了しつづ
けました。



AW11と共に過ごした時代、ドライブに、メンテに、チューニングに、ジムカーナな
どの競技に参戦したり、はじめてサーキットを走行したのもこのAW11と一緒で、そ
の楽しい時代は、AW11を『スーパーカーの雰囲気を味わえる車』としてではなく、
『AW11そのもの』として愛し、スーパーカーやレーシングカーへの夢はしばらく記
憶の片隅に追いやられることになりました。

しかし、走りに躍起になっていた車生活が落ちつき、今後はAW11を大切に保存して
いこうかと考えていたさなかに、僕は商売上の関係で、東京に住むひとりのフェラ
ーリオーナーの方と出会いました。実に10年間働いて貯め続けた貯金で、フェラー
リ・テスタロッサを購入、地道なメンテナンスやパーツの自作も行ってこのテスタ
をレストアし、現在ではサーキットでタイムアタックも行うその世界では大変有名
な方です。

子供の頃からフェラーリに憧れて、仕事を頑張っていつか絶対にフェラーリに乗る
!という信念を貫き通したというお話を聞いて、幼い頃の気持ちがまた自分の中に
蘇ってくるのを感じました。

AW11の塗装が酷く痛んでいたこともあって、『塗り換えるなら赤』と考えるように
なったのはこの頃からでした。フェラーリは憧れの車であったことは当然の理由で
すが、コンペティションな香りを匂わせる車作りには、コンペティションの世界で
最も活躍した車の色が最も相応しく思えたことも理由でした。

その後、その方とは取引を終えた後でもずっと仲良くして頂き、フェラーリのイベ
ント
に招待して頂き、F40などの普通の人生では一生座ることが不可能な運転席に

座らせていただいたり、数多くの素晴らしい体験をさせて頂きました。





***フェラーリの赤と言ってもメーカーや年式に違いあり***


しかし、ひとくちに『フェラーリレッド』と言っても塗料選びの選択肢は非常にた
くさんあります。

まず、フェラーリの赤には大まかに分けて3色『ロッソコルサ』『ロッソフィオラノ』
『ロッソバルケッタ』の3色が存在します。その中でも、『ロッソコルサ』がモダン
フェラーリの赤として最もポピュラーなものではあるのですが、そのロッソコルサも
年式によって微妙な色調の違いがあります。

と言うのも、ロッソコルサはこれまで何度も色調をマイナーチェンジしており、最近
の例をあげると、およそフェラーリ308i最終モデルの時代以降に3回マイナーチェンジ
しています。カラーコードも異なり、それまでのものは『FER300』、その後のものは
『300/6』『300/9』『300/12』です。


↑フェラーリF-1のカラーリングはテレビのブラウン管を
通して見た時にロッソフィオラノに見えるように調色され
た色だと聞いたことがあります。

塗料メーカーも年式によって異なり、例えば『300/12』のロッソコルサで塗装されて
いるF355を例にとっても、前期モデルはグラスリット製、後期モデルはPPG製と、違う
メーカーの塗料を使用しているため、選択が難しくなります。

カラーコードにしたがって調色すれば、理論上は日本ペイントでも関西ペイントでも
ソフト99のペイントプロショップでも同じ色がでるということにはなっているのです
が、国産ペイントで塗装したロッソコルサの車両を見ると、模型が趣味で長年ありと
あらゆる赤を見続けている自分の目にはあまりに安っぽい色に思えて、写真ではごま
かせても、実際に日の光の下で見比べるのは辛いものがあります。

フェラーリの赤はひなたで写真にとると『朱肉』のようなオレンジがかった安っぽい
色に映ってしまう傾向があるのですが、どうやらこの色を再現してしまっているよう
です。


↑F40のドア。NASAダクトを境に光の当たり具合
で色調に差があるのがわかります。

例えばプラモデルのフェラーリを製作する際に使用するロッソコルサを再現したプラ
カラーは有名どころでは全部で3色あるのですが、実際、ピンクの下地を作っても、黄
色い下地を作っても、3色とも全く違う色調になるのです。このちがいは長年の謎だっ
たのですが、イベントに参加して、本物のフェラーリのロッソコルサを飽きるほど目
の前で凝視した結果、これは「ひなたで写真に映る色」と「日陰で写真に映る色」の
違いであることに気づきました。


↑プラモデル用の塗料もどちらかというとひなた
の写真の朱肉色っぽい色彩です。このエンツォは
ピンク下地にモデラーズのフェラーリレッドを使
用したものです。


↑一方、このF40の塗装に使用したGSIクレオスの
モンザレッドは日陰のトマト色です。下地は同じ
くピンク立ち上げのもの。


本物の色はひなたと日陰で全然色がかわるのです。しかも、その違いは実際に肉眼で
みるより写真にとるとよりはっきりとした差があることがわかります。明るいところ
だと朱肉のようだし、暗いところではトマトのような色に映ります。しかし、実際に
肉眼で見える色は、ひなたでも日陰でも、深みのあるとても上品な色です。






***最終的な選択はフェラーリプロの薦めで***



このような難しい色とは知らず、どのような塗料を使用していいものか、悩んだ末、
誰に相談すべきか考えると、やはりそこは本物のフェラーリオーナーに訪ねてみるこ
とになるのは自然なことでした。

それは丁度、前述で紹介しているイベントの時だったのですが、軽く聞いてみたつも
りが、フェラーリのショップから直接分けてもらえばいいじゃん!ということになり、
なんとその日のうちに塗料の商談まで話が進んでしまいました。

ショップの方とは最初にテスタロッサの方を知り合った時から面識があったのですが、
一般客には自分の店で使っている、他人には簡単に譲らないという塗料を特別に分け
てくれるということで、価格も『秘密厳守』ということで身内プライスで設定しても
らいました。突然のことで驚いたのですが、ここまできて引き下がれません、もちろ
んその場で購入を決定しました。

1週間後、代金振り込み後2日で到着した塗料はSTANDOXのものでした。グランプリカ
ラーと呼ばれるエクスクルーシブラインでモンツァ・レッドなどをラインナップする
ドイツ製の高級塗料です。

トップコート(スタンドクリル)仕上げでカラーコードは『300/12』、最も隠ぺい力
の強い物で、F355シリーズなどに使用されているものです。イベントではこのショッ
プでレストアしたフェラーリを何台も見てきたのですが、これらは全て朱肉でもなけ
ればトマトでもなく、しっとり上品な落ちついた色でした。



↑イベントの際にご一緒した皆さん。同じショップがメインの
クラブの集まりです。





***塗装の前に***



実際に塗装に入る前に、15年間に渡って列悪な日本の環境にさらされてきたボディを
全体的にリフレッシュしました。特に左リアクオーターの腐りは酷く、トランクとリ
アフェンダーパネルの境目の錆をおとしていると、ついに磨き痕がトランク内部まで
貫通してしまったため、パテで埋め、角の部分は模型作りの技術を生かして(?)自
分で成形しなおしました。 同じように、トランクの純正リアスポイラー取りつけ穴や、
フロントボンネットのエンブレム取りつけ穴も当て板をして塞いだ上で、パテを盛っ
て成形しました。

こういう作業は塗装の際にプロにお願いするのが確実ではあるのですが、予算的な都
合もさることながら、やはり自分自身で愛車の腫瘍(?)を取り除いてあげることが
楽しかったことも理由におもえます。結果的に、プロ作業と比較すると自分で処理
した部分に多少に歪みがでましたが、それも手作りの味だと思えば綺麗好きでも気に
なりません。(笑)

また、偶然にもこの機会と同時にkimiさんに1年前に製作をお願いしていたシュノー
ケルダクト完成の報告と、中古のオーバーフェンダーをもしよかった使ってくれとい
う知らせが入り、ボディサイズ拡大にあわせてリアウイングもより大型のものを中古
で購入しました。その際、純正トランクをSIMASIMAさんのストックから分けて頂くな
ど、たくさんの方のお世話になりました。


↑自家板金中の写真。既にボンネットエンブレム穴は
塞がっています。パテ盛り中のリアフェンダーの写真
を撮影しておかなかったのが悔やまれます。





***塗装作業***



あとは実際の塗装だけとなりましたが、これもショップ選びに苦労しました。安価に
済ませてくれるのは確かにうれしいのですが、やはり詳しい話を聞くと安いところは
安いなりの作業みたいです。『自作派オーナー大歓迎』という触れこみの店でも、実際
に話を聞いたらエアロの取り外しはできない、自分でやるっていってもだめというよ
うなところもあり、まず塗料の持ちこみを了解してくれる店自体が少ないこともあり、
中には金額が常識外な上に作業はやっつけみたいなところもあるようなので注意が必
要でした。


↑塗装直前に見た最期の白い姿。代車として、となりのマーチ
に3週間ほど乗りました。白いAWと会えなくなる寂しさもな
かったかと言われれば嘘になります。


最終的にお願いしたお店はかなり高級車指向のボディーショップでしたが、オーナー
が元カウンタックオーナーだったことなど、スーパースポーツ好きの方だったことも
あって、3週間かけてCピラーのモールディングや前後バンパー、サイドステップ、オ
ーバーフェンダーにボンネットトランク、エンジンフード、ドア内張りなどすべてバ
ラした状態で下地をピンク色で立ち上げ、2コートに塗装した上、仕上げに綺麗に磨
き上げてくれました。



結果は予想以上のもので、大満足です。色はまちがいなく、イベントで見たあの本物
のフェラーリの色そのものでした。塗料の良さと仕上げの丁寧さが相俟って年式を感
じさせない素晴らしい仕上がりとなり、今後もAW11を今まで以上に大切に維持してい
こうという思いを新たにしました。

表向きには『白いMR2がフェラーリレッドになった』だけのことではありますが、こ
こまでくるのには長い憧れと研究、そして多くの人の手を借りてはじめて完成したこ
と言えます。

憧れの色を分けてくださった方々、ワンオフパーツの作成やストックパーツを譲って
くださった皆さんの力なしには今このHIGH-GEARed AW11の姿はありません。 そうし
た皆さんの気持ちをムダにしないためにも、今後もこの車をいつまでもいつまでも
大切に乗って行けたらと思ってます。

オリジナル派の方からみると、年式的にも貴重な車をわざわざ塗り換えてしまうのは
もったいないとおもわれるかもしれませんが、もちろんAWオーナーとしての誇りは捨
てていません。いつまでも可愛がって行きたいからこそ、自分仕様の、自分だけのAW
としての姿を作り上げました。






***たからもの***


AW11が塗装を終える前日、突然 自分宛に注文した覚えのない宅配便が届きました。

差出人は例のテスタオーナーの方からです。開けると中から出てきたのはフェラーリ
クラブ オブ ジャパンのステッカー。クラブに所属しない一般の人間には入手不可能
なものです。クラブに所属するにはイタリアで適性試験としての面接を受けるなどを
してようやく手にする事が可能な特別なものです。

驚いて電話をかけると、かえってきた言葉。それは

『それはHIGH-GEARed君のMR2がフェラーリの赤になった記念のプレゼントだよ。』



*** 一生のたからものができました ***










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