1/700スケール 重巡洋艦 利根 1944年
Aoshima製インジェクションキット













アオシマ 1/700

重巡利根といえば、以前はフジミのキットがおなじみでした
が、WLシリーズのフジミ脱退後にリリースされた青島のキッ
トは今回が初挑戦です。

特徴ある艦容を見事に再現した好キットでした。重巡洋艦とい
えば、フジミが脱退してから各社ともニューリリースやリニュ
ーアルが相次いで、HASEGAWAの青葉型を除くとほとんどが90年
代以降の金型技術でリニューアルされ、繊細なモールドでコレ
クションにも最適なものとなってきたように思います。

重巡洋艦 利根(とね)は、最初は最上型重巡洋艦の5番艦とし
て建造の計画が進められていましたが、計画途中で偵察巡洋艦
としての機能を備えた新設計が盛りこまれ、結果として軍縮条
約失効後の20cm主砲搭載型巡洋艦として最後に建造された艦型
になりました。

前部に全主砲を集中装備し後部のスペースを偵察機の搭載用に
使用することによって、強力な索敵能力を持つ巡洋艦として姉
妹艦筑摩(ちくま)とともに、昭和13、14年に竣工しました。

利根は筑摩とともに第八戦隊を編成し、太平洋戦争戦時下にお
いては空母機動部隊に所属して、真珠湾攻撃に始まる日本海軍
の主要な空母機動部隊作戦のほとんどに従事しました。

真珠湾攻撃時においては、『トラ・トラ・トラ ワレ奇襲ニ成
功セリ』の暗号伝聞で歴史的にも大変有名な真珠湾奇襲部隊
の先陣を承って、利根から発進した零式水上偵察機が真珠湾上
空に一番乗りで直前偵察を行いました。

その後も、ウエーキ島攻略、ラバウル攻略、ポートダーウィン
空襲、セイロン島攻撃などの諸作戦に従事し、ミッドウェー海
戦においてはカタパルトのトラブルにより偵察機の発進が30分
が遅れたものの、発進した索敵機がアメリカ軍機動部隊を補足
し、機動部隊に通報しました。



ガダルカナル島の攻防においては第二時ソロモン、南太平洋海
戦に参加し、以後は輸送任務をはじめとして、インド洋での交
通破壊戦に使用されました。

昭和19年、マリアナ沖海戦を最後に空母部隊の直衛任務を離れ、
比島沖海戦から戦艦大和を含む決戦兵力として有名な栗田艦隊
に所属、レイテ沖においてはアメリカ護衛空母部隊との戦闘に
よって、戦艦金剛と強力してアメリカ空母ガンビア・ベイを撃
沈する大戦果ををあげるほか、駆逐艦1隻の撃沈と他艦にも損傷
を与え、日本の戦況が極めて不利なものに陥って行く中で最高
と言える戦果を上げました。

その後、内地に帰還した利根はその後の戦争拡大を考慮し、機
銃の増備などの改装工事を実施しますが燃料が不足しており、
米軍の空襲をかわすことができす、昭和20年江田島において大破
着底し、そのまま終戦を迎えました。

余談ですが、この重巡洋艦利根の英語表記『TONE』を見て、米
英軍はこの巡洋艦をローマ字読みの『トネ』ではなく英語読み
で『トーン』と呼んでいたという逸話があります。


今回、この利根を再現するにあたってベースとしたキットは上記
のとおり、1/700スケールの洋上艦船模型の最大のブランド、ウ
ォーターラインシリーズのAoshima製のキットです。


↑アクリルケースに納めた写真。モデルの全長はおよそ28cm、デ
ィスプレーケースの大きさは長さ36cmです。

利根のキットは、ウォータラインシリーズ発足当時、FUJIMIが
担当していたのですが、これは考証に誤った点が多く見られ、
艦橋が竣工時期のものであるにもかかわらず、対空機銃は1945
年当時の配置に設定されていて、また後部予備指揮所の前後の
機銃台が省略されるなど、考証派のユーザーの不満がつのるも
のでした。

FUJIMIがウォーターラインシリーズを脱退してから、Aoshima
がこのキットを完全新金型でリニューアルしたのですが、近年
のAoshimaの成形技術は素晴らしく、時代設定を定めてFUJIMI
のキットで指摘されていた省略されたモールドを全て再現し、
砲塔上の測距儀などの高さも訂正された素晴らしいキットに
しあがってます。

今回はこのキットをベースにAoshimaのスーパーディティールキ
ットのものとその他にゴールドメダルモデルズとエデュアルド、
そしてジョーワールドのエッチングパーツを使用して各種ギ装を
ディティールアップし、ピットロードのディティールアップ用イ
ンジェクションパーツやホビーチェーン、精密テグスによる空
中線再現などで仕上げてみました。


↑艦首、アンカーチェーンの様子。

まず、下準備として、船体の舷窓を全てピンバイスで開口し、
モールドのメリハリを強調したほか、成形の都合で閉塞されて
しまっている魚雷発射管の開口部を開口させて、より自然な姿
になるよう成形しなおしました。

手摺の再現にはリノリウム甲板にはAoshimaのスーパーディ
ティールキットに付属のエッチングパーツを使用し、鉄甲板
にはトムズモデルワークスのものを使用しています。


↑艦橋トップからのアングル、防空指揮所の双眼鏡は太さ0、3
ミリの真鍮線を使って自作したものです。艦橋や甲板どうし
を繋ぐラッタルはゴールドメダルモデルズのエッチングパー
ツを使用して再現しました。

また、第四主砲塔の後に見えるパラベーンはキットの浮き彫りモ
ールドでは立体感に乏しいので、モールドを削りこんだ上でピッ
トロードの日本艦船装備セットにあるものを貼りつけて立体的に
再現しました。

ジブクレーンはスーパーディティールキットのエッチングパーツ
を純正のプラモールドと併用して細かい支柱を再現、カタパルト
はスーパーディティールキットには含まれないため、エデュアルド
のエッチングパーツを組み立ててトラス構造とし、立体感のある
仕上がりにしました。


↑ボートダビッド付近。各種タラップやグライプバンドの再現。

電探は前部マストの二十一号電波探信儀、後部マストの十三号電
波探信儀ともに、スーパーディティールキットのものを使用して
います。

1944年当時に増設されていた機銃ですが、単装機銃については
付属のAoshimaのプラパーツで再現、25mm三連装機銃および二連装
機銃は当時増備されていた12丁全てをピットロードの2ps構造の立
体的なものに交換し、当時装備されていたと思われる防盾をすべ
ての連装機銃に装備しました。使用したパーツは残念ながら絶版
になってしまったジョーワールドの『96式25mm連装機銃用盾』の
エッチングパーツのストックで、プラだけでは再現できない特徴
のある機銃の姿を再現しています。


↑後部航空作業甲板の様子。零式水上偵察機を二機搭載していま
す。また、防盾付きの三連装機銃や増設された単装機銃、クレー
ンやカタパルトのディティールアップの様子がごらん頂けます。

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0,128mm)を着色し
て使用しました。取りつけは全て瞬間接着剤によるものです。

着色してはいますが、もともとは極細のテグスですので糸のよう
にメンテナンスの心配がいらないのがメリットです。


塗装は今回は外舷色にGSIクレオスの32番を使用しています。

甲板のリノリウム色の再現にはピットロード艦船カラーの『11
リノリウム』を使用し、専用色として実艦のイメージそのまま
に塗装しました。船底はGSIクレオスMr.Colorの『29艦底色』
で、外舷色、甲板色、船底色などはすべてエアブラシによる重
ね塗りを施してあります。

また、スケール製を考え、船体やパーツの本塗装の前には塗装
後の塗膜の発色を良くするために、ホワイトサーフェーサーで
下地を作った白たちあげにて塗装しています。

上記のように、ほとんどの塗装に塗膜の丈夫なラッカー系塗料
を使用しましたが、菊花紋章やライトレンズ、機銃の銃身など
は金属色の表現に適したタミヤのエナメル塗料を使用しています。

また、主砲の測距窓や高角砲、機銃シールド、艦橋の窓などは
スミ入れをしてモールドのメリハリを強調し、最期の仕上げに船
体全体に艶消しコートを施して質感を統一してまとめました。


**総括**

Aoshimaと言えば、艦船模型ファンからすれば、非常に繊細なモ
ールドと組み立てやすさ、実艦の仕組みに合わせたパーツ構成
で定評のある「タミヤスタンダード」と比べ、それとは対極の
立場にある「アオシマスタンダード」という蔑称を呼んだくら
いで、WLシリーズの開発初期には良い加減な考証や角張った砲
身などでファンから惨憺たる非難を浴びた物でした。

僕も小学生の時からWLシリーズに親しんでいたため、最近にな
るまでまだAoshimaのアオシマスタンダードのイメージが抜けき
らず、アオシマのキットというだけで購入意欲をそがれていた
ものでしたが、長門型の再開発キットをはじめて製作したとき、
タミヤスタンダードにまったく引けをとらない繊細なモールド、
同型艦の違いの表現、そして組み立てやすさに驚いたものでした。

この利根のキットもフジミ脱退後に再開発されたキットとあっ
て組み立てやすさと言い、行き届いた考証といい、美しい艦容
の再現と、どれをとっても文句のつけようのない素晴らしい仕
上がりのものでした。魚雷発射口が凹モールドのみの再現にな
っているのが少々もったいない気もしましたが、そこは製作者
が貫通口を開いて魚雷をセットすれば良いだけですので、小加
工で最高の利根が再現できるのは本当にありがたいです。

タミヤ、ハセガワに続いてAoshimaも2003年度のWL再開発が機動
にのってきていることもあって、今後のリニューアルキットの
登場が待ち遠しいです。発売日が伸び伸びになっている空母飛龍
のキットはリリースされたら即製作にはいりたいものです。






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