2005年9月20〜22日、第3回東京旅行 船の科学館および記念艦みかさ見学


船の科学館館内



公園外のベンチでひたすら待ち続け、10時の開館時間を迎えました。もちろん、HIGH-GEARedが当日の一番客
だった模様です。ホームページから割引券を入手していたので、館外に展示されている南極観測船宗谷や青函
連絡船羊蹄丸なども含めた全館共通の観覧チケットを購入し、館内に入りました。



最初に目に飛び込んできたのでこの競技用モーターボート、ヤマトA 8504型です。排気量は176〜250cc、1987年
に行われた国際大会において、ヤマトクラブ所属の橋本選手がこのモーターボートを操縦し、最高速度150キロを
出して優勝したそうです。



コクピットはさながらフォーミュラカーそのものといった雰囲気ですね。ステアリングもフォーミュラカー用であろうと
推察します。



カラック船のサンタマリア。HIGH-GEARedは軍艦ばかり作っていますが実は大の帆船ファンです。サンタマリアはコ
ロンブスが西インド諸島に到着したことで、歴史的に有名な船ですが、帆船模型界でもメジャーな船で、木製モデル
でのキット化なども盛んに行われています。カラック船とは後のガレオン船の元になったと言われる中型の帆船で、
その帆装は北欧の横帆船と地中海の三角帆船が融合して生まれたものといわれています。



世界の軍艦史、海軍史においてその名を残す戦列艦ビクトリー。HIGH-GEARedはガレオンから戦列艦、フリゲート
艦にかけての年代の帆走軍艦が主に好きなので、このビクトリーも数ある人気帆船のなかでもお気に入りの帆船で
す。このビクトリーは1765年に竣工、ネルソン提督が座乗する英国艦隊の旗艦として、1805年のトラファルガー海
戦において、フランス、スペインの連合艦隊を破りました。この海戦は、ナポレオンの英国本土進攻の野望を打ち
砕き、その後の英国の優位を不動のものした歴史的な戦いでした。



ビクトリーは、1765年に建造され、キールは「にれ」材、フレームと外板は「なら」材にて作られ、船腹は銅板を貼って
フナクイムシの害を防いでいました。こうして頑強に建造されたビクトリーは建造から250年を経た今でも、ポーツマス
のドックに保存され、現役艦としての扱いで日々の任務をこなしています。(現在でも代々艦長が任命されているそう
です) 木製帆船模型の世界ではたくさんのメーカーがキット化していて人気も高いビクトリーですが、この模型はオ
リジナルのものでしょうか? 大変大きく、また丁寧かつ精密に再現されていて見ごたえがあります。 帆船模型とい
えば木製模型が有名ですが、ビクトリーに関してはエレールから大変精密に作られ有名な大型プラキットもリリース
されていて、このキットもプラ帆船界では同社のソレイユ・ロワイヤルのキットと供に有名です。

なお、現在ポーツマスで保存されている戦列艦ビクトリーは、このあと紹介する記念艦みかさと(米国フリゲート艦コン
ステチューションと)供に、「世界の3大記念艦」と呼ばれているもので、今回の旅とも大きく関わりのある船といえます。



クリッパー船カティーサーク。この船も帆船模型界で人気の高い船で、HIGH-GEARed HOBBY WORKS!!でもア
オシマの小型キットの完成例を展示しています。カティーサークは中国から欧州へお茶を運ぶために1869に鉄骨と木
材を組み合わせて作られた木鉄合造船でした。就役後、1877年まではティークリッパーとして、1897年には羊毛を運
びました。蒸気船の進出に押されてクリッパーとしての積荷をえられなくなり、その後幾度か転売され船名も帆装も変
わりましたが、1922年に英国に買い戻され、かつての姿に復元されて保存されています。模型映えする帆船を絵に
描いたような優美な船で、実物が存在することにより資料もえやすいところなどが、モデラーに好まれるのかもしれませんね。 



客船モレタニア。艦船模型関係で親しくしている方がモレタニアがお好きですので掲載しました。モレタニアは世界初
の3万総トン級高速客船ルシタニアの姉妹船として、1907年に竣工しました。主機関に蒸気タービンを本格的に採用
した結果、北大西洋横断航路を平均25ノットの高速で4日間で横断することに成功し、以後22年間に渡って最高速客
船の栄誉を示すブルーリボンを保有し続けました。



貨客船浅間丸の模型です。実船は日本郵船が太平洋航路の充実を図るため、17000総トン、20ノット級客船を建造
就航させた3隻の豪華客船の第一船が浅間丸でした。船内の装備には豪華な装飾が施され、イギリスの古典様式を
取り入れるなど、「太平洋航路の女王」の名に相応しい船でした。さらに浅間丸は当時、国内最大の客船であったば
かりでなく、大型ディーゼル機関を搭載した客船としても太平洋航路では最初の船でした。



模型は天幕支柱まで再現され、素晴らしい仕上がりです。ウインチやキノコ型缶室吸気穴などは金属で作られ、美し
く輝いていました。



この作りこみ・・・。じっと見ていると模型であることを忘れさせられる出来です。乗組員や乗客が甲板や構造物上を
移動する姿が見えるようです。客船の模型となると、安価に手に出来るキット化はほどんどなされず、このような博物
館で一点モノを見る以外になかなか良い方法はないため、客船ファンは悔しい思いをしているというお話を良く聞き
ます。こうした魅力的な船を自宅で楽しむことができないのは何とも残念ですね。



貨客船うめが香丸。この模型も上の浅間丸と同じく素晴らしい完成度でした。うめが香丸は日露戦争での戦時補助
船舶に高速船が少なかったことをふまえ、平時は客船として、有事の際には仮装巡洋艦へ転用が可能な義勇艦隊
の建造を計画しました。その第二船として、うめが香丸が船舶奨励法の適用を受けて建造され、神戸と基隆間に就
航しました。しかし就役6ヵ月後には青函、関釜航路に配船されました。



作り手の気持ちが伝わってくるリアリティ。船橋の内部の様子など、実物がどういう構造であったか良く分かる作りこ
みです。博物館模型を製作される職人さんの心意気と技術の素晴らしさにはただ頭が下がるのみです。



これは何を撮ったものなのか分かりにくい画像ですが、実は大型オイルタンカーの模型の甲板部分をとらえた画
像です。この模型のプロトタイプであるオイルタンカー ユニバースアイルランドは石川島播磨重工業横浜第二
工場で建造されました。その大きさは、当時世界最大であった出光丸をはるかにしのぐ326585キロトンの載貨
重量を埃、ペルシャ湾から欧州への原油輸送に従事しました。



タグボート、ニイガタZペラタグボートの模型です。小さい船体でかわいらしい姿をしていますが、大型船をすば
やく牽引できるよう、その見た目とはうらはらに大変高性能な作りの船です。新潟鉄工所製のこのタグボート
は同社が開発したZ形の軸形配置をもち、それにより駆動されるコルトノズル付きプロペラは水平に360度旋回
でき、どの方向にも自由に全推力を出せる特長になっています。



これがピッチを旋回可能な特殊なスクリュープロペラです。羽部分に駆動軸が付いているのが画像からも分かる
と思います。タグボートも船ファンに人気のある船種のようで、この日お話しした愛知から来られたというおじさんも
タグボートが大好きとおっしゃっていました。 この方は戦艦大和もお好きな方で、マニアックな話題で盛り上が
りました。



これは車いじりが好きな方にはおなじみの形をしたもの、タービンですが、後ろの手摺との大きさを比較すればい
かに馬鹿でかいものかよくわかると思います。船舶モノはひとつひとつのパーツの規模が桁違いで面白いです(笑)
ここに展示されている船舶用のタービンは実験機関で従来の無加給機関の出力を60パーセントも増大させ
たそうです。



ヤンマーディーゼルの小型船舶用ディーゼルエンジン、3SMです。3気筒水冷4サイクルで26馬力。重量は530kgの
ものです。



一般貨物船の船体構造を説明するため、外板をはがした状態でモデリングされた模型です。内側のバルクヘッド
やフレームの組み合わせの様子がよくわかり、外部からの水圧に船体がいかにして耐えているかを説明してくれ
ています。しかしこの細かい模型を作るのも実に大変だっただろうと想像できます。そして模型でも大変なのです
から、実物の船の建造はいかに大変な作業か、これを見ればわかりますよね。



造船所の仕組みを説明したパノラマ模型。縮尺は1/600で、我々艦船モデラーも扱うことがあるスケールです。
このジオラマでは、船体のブロックをつくる工場と、各部分のブロックを組み上げて船体を作り上げるドックなどが再
現されています。そしてこれらの施設を囲むように各種の部品を作る工場や、その他の付属施設が作業工程にあわ
せて合理的に配置されています。



未来の海洋開発を予想した模型。良く見るとさきほど館外で見た海底ハウスも見えますね。



階段部分に貼ってあった帆船ゴールデンハインドの写真。実船は16世紀にキャプテンドレークが世界一周を成し遂
げたときに乗船していたものですが、この写真は映画の撮影のために復元されたもので、撮影のために日本に来航
そのさいに撮影された写真だそうです。



オイルタンカー出光丸。これも船好きには有名なタンカーで、1966年の竣工当時、世界最大で主機関のタービンも
世界最大出力を発揮する船でした。しかし、上記しましたように1968年にアメリカでユニバース・アイルランド(326585
d)が建造されると、その船が世界最大となるなど、次々に大型船が建造されました。



フェリーの模型は内部にミニカー搭載にて内部の様子を教えてくれました。このさっぽろ丸は1979年に竣工、画像に
も映っている中央のひれのようなフィンスタビライザーや船首にバウスラスターなどを装備して船の横揺れ防止や離
着岸時の操船を行えるように工夫されています。 自動車を搭載した船の模型では、他にも内部構造を紹介した自動
車運搬船の模型もあり、こちらは居住性とは無縁の車高ぎりぎりの階層が並ぶ工場的なせまくるしいイメージのもの
でした。(神業の船積みドライバーが新車を次々搭載していく船です)



舷側の大きな太陽のマークで有名な「さんふらわあ」はなんと1/30スケールの大型模型が展示されていました。模型
のプロトタイプは改良型の「さんふらわあ5」で、東京〜那智勝浦〜高知間を旅客とともに乗用車、トラックなどを運ぶ
大型フェリーとして1973年に竣工しました。同年6月には姉妹船の「さんふらわあ8」も竣工し、同航路に就役しました。
両船ともに一見してそれとわかる舷側の太陽のマークとともに長距離フェリーの花形として活躍しました。



ハワイ出身の某元横綱現親方を彷彿とさせる船名です。(笑)



日本を代表する超豪華客船の飛鳥です。近年急速に高まりつつある日本国内のクルーズ人気を背景に、これまで
の客船に比べて内装や船内サービスを重視した大型豪華客船として完成しました。 日本一周クルーズや小笠原ク
ルーズ等の国内クルーズのほかに、東南アジア、オセアニア、南太平洋、グアム、ハワイ等へのクルーズに就航して
います。



クイーンエリザベス2.通称QE2の模型の木甲板部分の再現には本物の木目シートが使われていました。このシート
に継ぎ目を書き入れれば結構リアルで手軽な木甲板再現ができるかもしれません。いつか試してみたいです。 実
船のQE2は完成から30年以上を経過していますが、現在でも人気がたかく、世界一有名な客船といえるでしょう。毎
年1〜4月に行われる世界一周クルーズでは、現在でもしばしば日本に寄港しているそうです。



客船新田丸の模型。この客船は太平洋戦争時に海軍に接収され、航空母艦沖鷹に改装されました。この船を航空
母艦に改造し、飛行機が発着できるような状態にされたことが信じられないと話していたお客さんがおられたので、飛
行甲板を船橋の上に設置したことや、客室部分が格納庫に改造されたことなどを説明しました。(おせっかいですね)



巡視船やしま。200海里漁業水域や国際条約に基づいた広域哨戒体制の整備に伴い建造された、ヘリコプター2機
搭載型の巡視船です。海上保安庁に所属する最大の巡視船「みずほ」型の2番船で、第三管区海上保安本部に所
属し、主に太平洋を舞台とした軽微、救難活動に活躍しています。



ふと前方に目をやるとお目当ての1/50戦艦大和が見えました!ウワサには聞いていましたが、実に巨大です。HIGH
-GEARedはまだこの旅行の時点で大和ミュージアムは訪れていないのですが、尾道の実物大戦艦大和を見たあとで
も思わず圧倒される大きさです。



お客さんの大きさと比べると模型の大きさも理解して頂けると思います。作者は日本海軍艦艇模型保存会の河井
登喜夫先生です。HIGH-GEARedが艦船模型を作り始めた頃と丁度重なる99年に惜しまれつつ亡くなられたのです
が、戦艦大和の資料誌にて河井先生の素晴らしい作品を見たことがきっかけでHIGH-GEARedは艦船模型を作ろうと
思い立ちました。彼の活躍なくして、HIGH-GEARedも艦船模型に興味を持つことはなかったと考えると、会ったこと
はなくても人生の恩人と言える方と思います(おそらHIGH-GEARedと同じように河井先生の模型を見て艦船模型が
好きになった方は数多くおられるのではないかと思います)。 こうして河井先生の魂がこもった模型と対面することは
以前からの目標でした。



大型モデルのみが再現可能な距離感を伝える構図です。特に主砲身が長く伸びこちらに向いている雰囲気は小型
のモデルでは再現できない大型モデルだけの特権です。 船体は樹脂の積層によるもので、ほとんど無垢といえるも
のだそうです。艤装品などの製作には真鍮やアルミ材などの金属パーツも多様され、精密なのはもちろん、重厚で重
々しく仕上がっています。



水上から大和を見上げる角度での画像です。こうして飾ってあるだけでもあまりに素晴らしすぎる模型ですが、なんと
この大和はラジコン搭載で実際に走航試験が行われ、操舵時には実艦と同じように船体を傾けつつ旋回、実艦が水
偵を収容するときに利用したといわれる航跡静波まで実艦どおりに再現したといいます。冒頭で紹介した1/50戦艦大
和DVDにこの走航試験の動画が収録されていますので、大和ファンの方はぜひご覧になることをお勧めします。



この走航試験の際の河井先生の興奮している様子がHIGH-GEARedが所有している日本海軍艦艇模型保存会の会
報に掲載されているのを見ていたので、いまその模型と対面していることには深い感慨を覚えます。DVDで予習をし
ていたといえ、聞きしに勝る大きさと精密さに思わず時の経つのも忘れてしまいます。



船尾の様子。この模型が製作された時点ではまだ角型の船尾ブルワークという考証がなく、丸型のブルワークに
仕上げられていますが、タラップや手摺など、乗員の移動方法などもしっかりとした考証で仕上げられています。
河井先生はこの模型を作るに際して、実際に大和の乗組員の方への聞き取り調査なども詳細に行われたそうです。
 スクリューと舵はスケールそのままの大きさで、走航試験の際にもこのスケールどおりのスクリューと舵で実物と同
じ動きをしたといいます。



航空作業甲板。セメントコーティングの考証に基づいたつくりで、継ぎ目の再現や、浮かせた状態のレールの再現な
ど、大型モデルならではの立体感溢れる仕上がりになっています。



水上偵察機のみがプラモデルを組み立てたものだそうですが、そのほかの部分は全てパーツのひとつひとつが手づ
くりのオリジナル品です。保存会のパーツは市販もされているのでHIGH-GEARedもたまに使用することがありますが
どれひとつをとっても、保存会の誇りにかけた精密かつ確かな考証で作られたもので、保存会のデータの多さ、確かさ
を実感するものです。



後部第三主砲塔。砲身はアルミ材で作られているそうで、プラモデルなどでは省略されがちな砲塔の側面の複雑な
多面体が力強く再現されています。この主砲も走航試験の際には旋回装置が組み込まれ、ラジオコントロールで制
御できたそうです。現在でも左右旋回および仰角をつけることが可能で、1/50戦艦大和DVDには特別に主砲を旋回
仰角をつけた映像も収録されています。



外とう砲操作台も再現されていました。尾道で見た実物大にも負けない仕上がりです。1/50というスケールは
、実物を正確に再現する際の限界のスケールと言われているそうで、これより小さくなると基本的に省略がや
むなくなるため、採用されたスケールだそうです。



第二主砲塔と第一副砲塔。「竣工時には、この副砲が左右についていたんだよ」と奥さんに説明するおじさんがい
たのですが、あまり相手にされていないようでした。(笑) 大和がお好きなようでしたのでいろいろとお話をさせて
いただいたのですが、なんと福岡から来られたということで、奈良からきた自分よりも更に上がいることに驚かされ
ました。 



第二主砲から艦首を見た図です。この画像にも大きい模型ならではの距離感が出ていると思います。大和坂と呼ば
れる傾斜のついた前甲板、独特のひらべったい形の錨鎖甲板の様子も興味深いです。模型の木甲板部分はインテ
ル材という本物の木材を実物にならって敷き詰めたもので、本物の素材ならではの独特の風合いを見せてくれます。



艦橋を上から見ていきます。模型の艦橋の高さはHIGH-GEARedの身長よりはるかに高いところにあるので、三脚
を使って手をいっぱいまで上げて見下ろす形で撮影しました。観測室、21号電波単探信儀、防空指揮所の双眼鏡
なども細かく再現してあることがわかります。



各種電探が装備された艦の頭脳ともいえる艦橋部分です。羅針艦橋も内部までが再現され、この画像ではわかりに
くいですが内部の双眼鏡なども確認できます。遮風柵も立体的に再現され、実物の構造を立体的に確かめること
ができます。



司令塔および艦橋基部。沖縄作戦時の兵員待機所の形状などは当時最新の考証だったと思われます。高角砲射
界制限枠なども実感的に作られ、構造物の複雑な面と曲面が組み合わさった機能美を立体的に教えてくれます。
いくらCG技術が進歩した現代でも、模型が伝えてくれる立体感はCGとはまた違った魅力があり、いつの時代も人
々を魅了するのだと思います。



艦橋背面の様子。長いタラップが見えますが、このタラップの配置は大和と武蔵で違うものでした。この模型では手
摺の様子など、立体的かつ理屈に沿った形状で再現されていました。



レイテ沖海戦から沖縄作戦時にかけて増設された機銃のシールドは装備時期によって2種類あるのですが、ちゃ
んとその2種類の違いも再現されています。画像の右側の機銃シールドと比べて、左側のシールドは肩の部分が角
ばっているのが分かります。戦時急造タイプのシールドで、もじどおり丸みを出す処理を省略した装備ですが、こうし
たシールドの種類の違いを知るようになったのも、河合さんのご作品の写真がきっかけでした。(プラモデルの世界
では現在でもこのシールドの違いを再現したキットは誕生していません)



25mm3連装機銃ひとつにしても、この作りこみです。機銃の旋回、仰角を調整するハンドルはもちろん、機銃手の
照準機まで装備されています。



後ろからみた25mm3連装機銃の様子。これだけの作りこみの機銃がこの模型には無数に装備されています。ブル
ワークの補強材も実感を出すのに効果をあげています。右横に映っているレールを見れば、このレールが床面か
らどれくらいの高さにあったものかもよくわかります。



12、7cm連装高角砲。1/50スケールでこの作りこみだったら単体でも模型としてとても見栄えのするもので、これも実
物の詳細な取材の末に作られたものであるということは明白です。日本海軍艦艇の多くに装備された高角砲として、
艦艇装備の代表的なもののひとつと言えます。



船首フェアリーダー、錨見台周りを上から捉えました。錨見台に立つ水兵の姿が見えるようです。



リールのケーブルはこのように固定されていたのか。と、これまた参考になる画像です。ケーブルを固定する金具
なども再現され、主砲の爆風対策が施された吸気口の形状などと供に参考になります。ちなみにこの吸気口は最
近では波除板にかぶさる形になっていたという研究資料もだされています。



縮尺1/50をあらわすネームプレート。模型が大きすぎてプレートの存在感がおされぎみです。



簡素に説明した文面が博物館的ではじめて見る人に大和の魅力を語りかけます。寄贈者として保存会と河井登
喜夫先生のお名前も記載されています。 河井先生はもちろん模型製作の中心的存在ですが、この模型は保存会
のスタッフも合わせて合計6人の手で製作されたものだということです。 たった6人で作れるものなのか??? そ
れだけでも驚きですが、企画から構想、完成までおよそ5年の歳月がかかったということですし、文字通り河合さん
の人生をかけたプロジェクトであったことが理解できます。 こうした素晴らしい作品を誰でも見ることが出来る
この博物館に寄贈して頂いたことに、心から感謝したいです。


1/20戦艦大和の謎



さて、ここで館外での疑問を晴らすべく、大和の模型のコーナーにおられた係員さんを捕まえ、館外にあった1/20大
和(全長13メートルの特撮用模型)がどうして今存在しないのか? どこにいってしまったのかをたずねてみました。 

そこで聞いたお話はHIGH-GEARedを実に無念な気持ちにさせるものでした。 なんと、館外に雨ざらしに放置され
ていたため、台風の際に船体が大破し、修復不能のため解体されてしまったということでした。

4年前にここを訪れたとき、館内に入ることはできなかったのですが、1/20スケールの巨大な大和を見ることができた
だけでも良い思い出になったものでした。 そのときから、雨ざらしの展示はもったいないと思い、より良い環境で保管
していただけるよう、祈ったものですが、それが叶わず、それがために貴重な模型が失われてしまったのは実に悲し
いことと思いました。



せっかくですので、4年前に撮影した在りし日の1/20戦艦大和を
掲載しておきます。



つくり的には大味なものでしたが、この大きさだけでもとても価値
の高いものだったと思います。大和ミュージアムに1/10モデルが
登場したとはいえ、現存すればこの大和は2番目の大きさを誇っ
ているハズでしたからね。

ちなみにこの時お聞きした係員さんは壮年の方でしたがやはり大和がお好きという方で、大和ミュージアムは先
月訪れ、尾道の実物大大和は10月に訪れる予定とお話されていました。 同じく大和好きのHIGH-GEARedと
良く話があい、大和の元乗組員の方がこの模型をご覧になり来られた時にお聞きしたお話などを聞かせて頂き
ました。

最期に「若い人にも大和ファンがいて心強い」と、こちらの耳にも実に心地よいお言葉をかけてくださいました。 


再び館内の話題




反対側には同スケールの戦艦敷島の模型も展示されていました。上構が金属で作られていることを証明するかのよ
うに、塗装されず金属の地を出した仕上げとしてあります。戦艦敷島は日露戦争時代に活躍した戦艦三笠と同型艦
でもある敷島型戦艦のネームシップで、旅順攻略作戦、日本海海戦などに参加し、昭和20年に除籍されるまで45年
にわたって活躍を続けました。また、艦名の「敷島」とは日本国の別名でもあり、この戦艦にかける当時の日本の期待
の大きさが伺えるネーミングです。この模型は敷島を建造した英国テムズ社より実艦の建造当時に製作されたものです。



敷島の同型艦で、今回の旅の訪問目的のメインにもすえている戦艦三笠の同スケール模型もありました。戦艦三笠
は1902年に英国ヴィッカース車で建造された当時、同型艦敷島等との建造時期、鋼材の違いなどもあって世界最大
最新鋭の戦艦でした。日本海海戦での大活躍のあとは、幾度も沈没、解体の危機に遭うも、大正の保存、昭和の
復元などを経て、現在も神奈川県横須賀市に保存されています。



こちらの模型も金属地を出した模型映えも考えた仕上がりのものです。細部にわたって実に精密に作られていて、
向かいにある戦艦大和との大きさ比較ができる点でも興味深いものです。艦橋周りは三笠の美しさをよくとらえて
います。こうした部分の実感も大型モデルならではといえるでしょう。現在記念艦となっている三笠の上部構造物
は太平洋戦争後に復元されたものですが、この模型は現役時代の姿を模型化してあるため、主砲塔の形状や内
火艇デッキ、ラッパ型通風塔などに現在の記念艦との仕様との違いをみつけることができます。



全体をとらえきれていませんが、この船尾は同スケールの戦艦陸奥の模型です。こちらも金属で作られているようで
複雑な構造物の仕組みも相まってとても力強く重厚に見えます。戦艦陸奥は1921年に世界で初めて40cm砲等搭
載艦として建造された長門型戦艦の2番艦として竣工し、1934から1936年大改装によって攻撃力、防御力ともに強
化されました。しかし、1943年に柱島沖に停泊中、原因不明の大爆発事故を起こし、活躍することなく沈没しました。
 こうした最期も太平洋戦争の悲劇のひとつとして伝えられています。



長門型の特長でもある城郭のような艦橋構造物です。金剛型戦艦や伊勢型戦艦、扶桑型戦艦などと同じ三脚にフロ
アを載せた構造のものですが、長門型戦艦の艦橋はそのなかでもどっしりと重厚で味わい深い構造美を見せてく
れます。この複雑な艦橋を全て金属で模型化するにはさぞ大変な努力があったこととおもいます。 金属地の表面
は少々風化してきていますが、それもかえって老練な雰囲気を漂わせ、この魅力的な艦を更に魅力的に見せてい
ると思います。



1等駆逐艦睦月。この模型は1/100スケールで作られています。睦月型は峯風型、神風型と発達してきた1等駆逐
艦第一世代の最終型と呼べるものです。 艦形をより大型として強力な61cm魚雷を初装備し、昭和2年までに計画
された12隻が次々と竣工しました。



艦橋は内部の再現され、乗組員の人形も配置されて実戦の緊張感が伝わってきます。睦月型駆逐艦のネームシッ
プであるこの睦月は、竣工当時は第19号駆逐艦と呼ばれていましたが、昭和3年に固有の艦名が付くことになり、睦
月と改名されました。



HIGH-GEARed HOBBY WORKS!!でもおなじみの1/700ウォーターラインシリーズを中心とした1/700キットをベ
ースに組み立てられた連合艦隊艦艇です。 ウォーターラインシリーズだけでなく、ピットロードのプラキットやPTの
レジンキットなど、いろいろなものがベースに選ばれており、どの模型も大変丁寧に組まれています。 たとえば扶桑
山城などはウォーターラインシリーズのキットをそのまま組むと、木甲板部分の割り振りやエレベーター、艦尾航空
作業甲板の考証に誤りがありますが、ここに展示されていたものは、ちゃんと足りない木甲板モールドは彫りなおし
てあり、航空作業甲板のリノリウム再現も自作モールドで仕上げられていました。また、赤城のように最初から木甲板
モールドの入ってない艦は彫りなおし、最上のタミヤ旧キットにみられた航空作業甲板の形状などもちゃんと修正さ
れていました。 専門的な知識のある方がちゃんと仕上げられたようで、モデラーの目で見ても納得の仕上がりで楽
しく拝見させて頂くことができました。



こちらは自衛艦と海上保安庁のコーナーにあったイージス護衛艦こんごうの模型です。こんごうは日本ではじめて
イージス装置を装備した所謂イージス艦の一番艦です。イージス装置とは、高性能レーダーとコンピューターによ
り、同時の多数の目標を探索、探知から情報処理、攻撃まで自動処理する対空ミサイルシステムのことです。



海のF-1とも言われるパワーボート。高速で大変危険なため、よく民間放送の番組改変の時期の特番などでこの競
技の事故の様子などが報道されます。このタンデムパワーボートはマリンスポーツ財団が各種イベントで試乗用に
使用していた2人乗りのレーシングボートです。 フォーミュラレースでも、ドライバー以外の人にレーシングカーのス
ピードとGを体験してもらうためのツーシーターマシンまたはスリーシーターマシンなどがありますが、おなじ趣旨のも
のといえそうです。



ペリー提督の黒船来航を再現した模型。中央の大型艦は旗艦サククハナ(サスケハナ)号です。蒸気機関を装備
した外輪船で、当時鎖国政策をとっていた幕府を脅かす存在でしたが、国民の反応は驚くというよりむしろ興味津
々といった具合で黒船の版画やグッズなども良く売れ、手こぎの舟で黒船に近づいて米海軍水兵と交流を交わす
人も多かったといいます。



黒船といえば、蒸気船ばかりと思われがちですが、実は従来よりの木造帆船も艦隊に組み込まれていました。当時
の日本人からみると驚異的な艦隊ですが、指揮官のペリー提督が心細くなるくらい、当時の列強の海軍勢力と比
べると貧弱な艦隊ともいえたそうです。ちなみに当時の蒸気船はまだまだ出力も弱く、燃費もよくなかったので普段
の航行は基本的には帆走のみで行い、港湾内での移動やよほど風のない場合、または戦闘など、蒸気機関を使
用する場面は比較的限られていたそうです。



実は1/50大和を見終わったあたりから、予定していたスケジュールが押し始め、その後はかけあしでの観覧となり
ました。しかし、出来の良い帆船模型を見るとついついカメラを動かしてしまいます。 特に上のフロアにいけばいく
ほど木造船や帆船関連の展示が多くなり、確実に作戦ミスを痛感することとなりました。船の科学館は観覧時間が
順路どおりでおよそ2時間半程度と聞いていたので真に受けてしまっていたのですが、それはあくまで一般的な観
覧時間であって、船や模型が好きなHIGH-GEARedはとてもそんな時間で足りるわけがないことに気付かされました。



上の写真と同じ、このスターンの飾り付けが美しい戦列艦は1719年にイギリスのポーツマスで建造されたロイアル・
ウィリアムです。長さ53メートル、750人の乗組員と100門の大砲を積んで、1783年まで改装を重ね、1813年に解体
されるまで活躍した非常に寿命の長かった船です。海軍少佐サー・チャールズ・ハーディの旗艦でもありました。



結局、ロイアル・ウィリアムを見た後はすぐに館内をあとにしなくてはならなくなりました。これも分単位のスケジュ
ールを組んであった手前、仕方ありません。ここで計画を変更すれば、午後からのスケジュールに支障をきたし
ます。せっかく全館共通のチケットを購入したのですが、この南極観測船宗谷も見ることなく、現地を立ち去るこ
とになりました。



予定を早めに切り上げたとはいえ、ミュージアムショップに立ち寄る時間は取り、ご覧の帆船の置物を購入しま
した。 左から、プリンス(英)、ソブリン・オブ・ザ・シーズ(英)、ソレイユ・ロワイアル(仏)です。 木製帆船模型
界でも有名な艦ばかりで、ガレオン船の黄金時代を築いた絢爛豪華な巨大戦艦です。 模型は細部まで着色
済みで船体はレジン、リギングは糸で作られており、表現と省略のセンスが良くて、帆船模型ファンのHIGH-G
EARedも納得の仕上がりです。 価格はけして安くはなかったですが、迷わず全種類購入してしまいました。 
最近ではスカイトレックスから全金属製でほぼ同じ大きさの帆船キットがリリースされていて気になっていたので
すが、ここでセンスの良い完成品を手に出来たのは幸せでした。


プリンスは実艦が建造された時に作られたといわれ、現存する有名な模型がプロトタイプのようで、ソブリンはHIGH
-GEARed HOBBY WORKS!!の模型ギャラリーでもエアフィックスの(しょぼい)作例を紹介しているお気に入りの
帆船です。 ソレイユ・ロワイアルは英国のソブリンに対する仏国の象徴と言える艦で、その大きさと装備もさること
ながら、豪華な装飾も模型映えする船です。エレールから完成度の高い大型インジェクションキットがリリースされ
ていることでも有名です。



ロワイヤルのスターン。この大きさの大量生産完成品(全長10cm程度)としては驚異的な程精密に塗り分けられ
ています。



ピンボケが激しいですが、プリンスのスターンの様子。↓のプロトタイプ写真と比べるとつくりの良さが良く分かります。



プリンスの置物のプロトタイプになったと思われる現存する当時物の模型写真です。うまく特長をとらえて模型化
してあることがわかります。



ソブリンの船首の様子。プロトタイプとなったと思われるグリニッジに現存するソブリンの模型写真とのツーショット。
こうして見比べると船首の飾りつけの割り振りを上手く調整し、フィギュアヘッドを大きめに作って存在感を出すな
ど、実にセンスの良い省略が行われているのがわかります。 無理に完全スケール化するよりセンスの良い省略が
かえって実感を出すという良い見本と言えると思います。(ガイ・R・ウイリアムズ著「模型の船/この魅力の世界」よ
り写真抜粋) リギングもこのスケールとしては実に精密かつ実感的に仕上げられています。


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