木製帆船模型
サン・ファン・バウチスタ
帆船模型には、帆を再現するフルセールのものと、帆を取り付けないアンカードモデルが
ありますが、バウチスタ号はフルセール状態ですので、リギング(ロープ)が複雑で、一本一本
絡まないように仕上げていく過程では、目がおかしくなりそうになりながらの作業でした。(笑)
完成画像
今回のバウチスタ号製作記では、製作記とは言いつつも、紹介したのはごく一部の工程に限られて
しまい、全てをご紹介することができませんでしたが、それら紹介できなかった部分は、たくさん掲載
された完成画像をご覧ください。
同じシリーズに挑戦された方は、「ここは自分とは違う仕上げになっているな」と思う部分や、「ここは
HIGH-GEARedのほうがヘタクソだなぁ」と思われる部分もあることでしょう。(笑)
また、木製帆船未挑戦で、これから挑戦予定の方には、「初めての人でも根気さえあれば、時間は
かかっても何とか完成させることができる」ということが分かっていただけるはずです。
***船体概観***

↑左舷前方からの全体像。細かいリギングが壁に溶け込んで見えないのが少し寂しいです。

↑左舷全景。舷側を目の高さにした様子。船首船尾の緑塗装や、船底塗装など、独自の
センスで塗装しているので、マガジンに付属の完成例の写真とはかなり違った印象です。
ガレオン船は、真横から見ると3本のマストの角度が垂直よりはわずかに扇形に広がっているの
が正解のようで、そうした角度を綺麗に付けていくのに苦労しました。
マストを組み立てる立てる時点でもかなり気を使っていたのですが、ロープを張っていく時点
で各マストやヤードが引っ張られて角度がついてしまいますので、各ロープのテンションを
上手く調整するのは気の遠い作業でした。

↑なお、指定どおりの色合いで仕上げた場合は、このような色調になります。全体的に赤み
が強く、高級インテリア的なニュアンスは、こちらのほうがあるかもしれません。 しかし今回は
自分なりのセンスとオリジナリティを優先させてみました。

↑上部から。船首のアンカー(錨)および、船尾のランタンなど、一部の艤装にはコーレ
ル社の社外品を使用しました。

↑カットモデルとなった右舷の様子。大砲がむき出しです。社外品の購入の際には、関西圏
では結構有名な、「なんば高島屋帆船模型帆船模型ショップ」に通いました。その際には、
店の店員さんと仲良くなって、製作方法やキット選び、展示会情報など、様々な有益情報
を教えて頂きました。この店員さんは一見、普通のデパートの女性店員なのですが、本人が
製作したという店頭ディスプレイの作例を見るに、かなりの腕前の持ち主です。

↑カットモデル内部の様子。メインデッキには大砲の他に、階段、アンカーホース、キャプス
タンなどが再現されています。 船倉の船荷も良い味を出してますね。 樽は全てオイルフィ
ニッシュで着色し、付属のパーツ以外に、上記ショップで購入した社外品も含まれています。

↑こうして船の内壁をみると、外板の下地板の内側を塗装した効果がよく出ています。1本1本
オイルステインで着色し、つや消し透明ニスでコートしていった甲斐がありました。

↑船尾の士官室は解説書には載っておらず、自作しました。操舵室と仕切りを作り、内部に机と
椅子を自作して配置しました。 机の中央部には、ミズンマスト(後部マスト)が入ってくるため、
机の真ん中には穴をあけた帆船専用品を作りました。(笑)

↑本来なら製作中の場面で掲載すべきなのですが、これが士官室
内部に置いた机です。ホームセンターで購入したチーク材で作りま
した。

裏面は意味も無く補強が入りまくってます。(笑)(考証には全く拘ってません)
こうした小物の自作で生活感を演出できるのも、カットモデルならではです。

↑舷側のアップ。この角度で見ると、シアーラインがとても美しいです。外板は、初心者にして
は比較的隙間も少なめに仕上がったのではないかと考えています。

↑豪華な船尾の様子。金属製のオーナメントは想像していたより重厚で、高級感がありました。
タツノオトシゴのオーナメントは、舷側のラインに合わせて手曲げしてカーブを作り、エポキシ
接着剤で貼り付けました。技術のあるひとは、窓枠を抜いて内部が見えるように加工するそうです。

↑外板が斜めに張られたカットオフスターンは解説書の指定とは逆向きに仕上げました。数々の
資料や先人の完成例を見るに、この角度で間違いないようです。舵の取り付け金具は真鍮製でし
たので、これも大砲同様にブルーイングして黒く染め上げました。

↑船尾側面の飾り板。艤装のコーナーでも記載したことですが、この部分は解説書では、舷側上に直接
白木色のまま張りつけて仕上げるように指定してあったのですが、ここは自分の好みで「焦げ茶&緑」の
塗装仕上げにしました。
地味すぎず、また華美でもないという、自身の好みの中間点を見つけるのが難しく、たくさん考えていた
プランからこの色の組み合わせに落ち着くまで、1年近く考え込んでしまいました。(笑)
なお、実際のガレオン船は、赤や黄色のまだら模様に派手に塗り分けられていたそうですので、この塗装
は考証面からはかなり外れた色合いと言えるでしょう。

↑船尾よりのハーフデッキおよびクォーターデッキの様子。中二階のような、窓がよっつあるでっぱり
は、操舵窓で、内部には操舵桿がちゃんと再現され、実物どおりの構造で舵が連動して動くように
設計されています。

↑メインマスト付近から、船尾側を見た図。乗り組み員の視線に近い写真で、キャプスタン、ポンプ、
ベルなどが見えます。

↑船首のフォクスルデッキ。各ピンに巻きつけられたリギングの様子。奥にはカマドの煙突も見えます。
風を後ろから受けて進む帆船の場合、火を使う場所は風下にできるだけ近づけるのが習わしのようです。
それにしても糸ケバが酷いですね。 これでも木工用ボンド水溶液である程度ケバは寝かしたのですが、
このシリーズは糸に質に限ってはよくなかった気がします。社外品のナイロンロープを使った方が良かった
かも?

↑グレーチングハッチとボートの様子。ボートはデッキ部分のみ木製ですが、実は船体は金属製(アンチ
モン製?)でした。社外品の使用も検討したのですが、それらに頼りすぎるのもよくないと考え、できるだけ
金属っぽさを残さないような塗装を心がけました。この部分は船べり材のみがレーザーカットパーツで、
腰掛や床材は棒材および板材から切り出して作りました。

↑アッパーデッキからみた船首楼の様子。この中は炊事場になっています。ドアを開けて、少し
ジオラマ仕立てにしてみました。ちなみにドアノブは釘の頭を差し込んだだけの簡易表現です。

↑ここからは、マスト類の紹介です。製作記ではあまり紹介できませんでしたが、本当に手が
かかったのはマストの製作からでした。数え切れないほどの滑車やロープを結びつけていく
のですが、この作業の際には、実物の帆船がどのようにして操作されるのか、その仕組みがとて
も良く理解できました。

↑ロープの大半は、黒い頭のピンに巻きつけられるのですが、この巻き付け方はとてもよく工夫されていて、
ピンを上に向かって引き抜くことで、簡単にロープが解ける仕組みになっています。どのピンがどのロープ
に繋がっているかなど、大変効率的に整理され、当時の船乗りや技師の工夫の数々には感心させられる
ことばかりです。
なお、ロープを固定するピン(ビレイピン)は、ホワイトメタルパーツだったため、1本1本着色し、ピンレール
の取り付け穴もピンバイスでひとつひとつ開口していきました。

↑船首のバウスプリット上に取り付けられたバウスプリットトップスルの様子。この位置のマストは、
この時代の後、帆船の進化の過程で消えていきました。

↑フォアマスト(一番マスト)を後ろから見た様子。マストの角度調整や、帆のテンションや張り具合
が微調整できるよう、たくさんのロープが張られています。 模型では、せっかく作りこんだデッキの
様子が隠れてしまうのがもったいなかったので、中央部を少したくし上げた状態で帆をセットしました。

↑フォアマストのフォアトップスル。奥には船首のバウスプリットトップスルも見えます。たくさんのロープ
が立体的に交錯していますが、それらを絡ませないようにピンに持っていくのに苦労が絶えませんでした。

↑帆はでんぷん糊を水に溶いたものを塗って、風をはらんだような状態に近づけました。

↑メインマスト(真ん中のマスト)のトップマスト(下から二段目のマスト)とメイントップスル(同場所の帆)の
様子。ここはたくし上げずに、素直に張りました。いかにも帆船らしい帆の形です。

↑メインマストのトップ周りの様子。ヤードをマストに固定するパレルの様子も見えます。この部分は、実際に
ビーズのようなパレルトラックを糸にとおして固定していく実船に近い工程が必要でした。ヤードへの帆のかが
りつけ方法は、あとで専門書を読んだ際に、間違っていたことが判明したので、次の船に帆を張ることがあれ
ば、修正したいです。

↑下から2番目の帆はトップスルと呼びますが、トップスルより更に上にもう一枚帆が張られて
おり、これはトゲルンスル(トガンスル)と呼びます。この画像は、メインマストのトゲルンスルです
ので、メイントゲルンスルという呼び名になります。 ちなみに、この上に4枚目の帆が張られている
船もあり、その帆はロイヤルスルと呼ばれます。

斜めに張られたラティンセールは、この時代独特のものです。こうした縦帆は後にスパンカー
へと進化していきました。 模型でも、他のマストと比べて変化のある部分で面白いです。