木製帆船模型
サン・ファン・バウチスタ
舵は舵取棒を介して船内に再現された操舵桿と連動するという実物と同じ構造で再現されています。舵
の取り付け金具は大砲の砲身などと一緒にブルーイング作業で黒染仕上げにしました。
艤装の組み立て
「艤装」というと、船の装備品をひとまとめにした言葉で、具体性がないのですが、船体の製作以外の点
についての製作の様子を掲載していきます。
しかしながら、船体を製作している時にはたくさんの写真を撮影していたものの、艤装品の製作の際に
はあまり写真撮影をしていなかったため、一部のみとなります。
帆船の艤装には、目立つものには大砲やマスト、帆などがありますが、まずは船体や甲板に取り付ける
ものから紹介します。

↑船首と船尾に取り付けられた、三角形の飾り板を取り付けます。 解説書では着色せずに取り付ける
ように指定されていましたが、自身のセンスと好みで着色仕上げにしてみました。

↑このような太さのある木の板に、自分で飾り板の寸法を測定し、ケガいて切り取りガイドにしました。
寸法は、この時点で張り終わっている飾り板の横ラインの高さを場所ごとにスケールで計って出します。

↑これは下の列の飾り板です。解説書では、白木色のまま貼り付
けるよう指定されてましたが、船底を塗装したことでバランスとメリハ
リを考えて、ベースを緑に塗装し、飾り板を黒(薄めたステインで木
目を残しました)に塗装てから一枚一枚接着していきました。

↑テラスやデッキの一部に使用する手摺支柱は、このような成型済みの木製パーツを使用する
のですが、これもキットの白木指定より若干豪華さを演出するため、ゴールドに塗装してから接着
していきました。

↑船首と船尾に飾り板を張りつけ、支柱を取り付けていく様子。スターンギャラリーも、デッキ同様に
表裏に板を張って仕上げます。砲門は金属パーツです。

↑なお、キットの指定どおりの色調だと、このように仕上がります。この場合、外板の上張り材およ
び飾り板も、透明ニスだけの無着色仕上げです。どちらが好みかは意見の別れるところでしょう。
なお、ランタンも金属製の無垢パーツだったので、より細工の細かい社外品に交換しました。

↑これは船首楼内部に入れるかまどです。角材と棒材の輪切りで作りました。

↑上のかまどの画像で、かまどの下に映っている格子状のグレーチング天窓は右側のカット済みのパーツを
組み合わせ、左側のような格子の形に組み立てました。写真では、組み立て終わってから塗装したように見え
ますが、実際には組み立て前にパーツをオイルステインに漬け込んでムラなく着色してから組み立てて
います。 少し色が鮮やかになりすぎたでしょうか?

↑アッパーデッキ上のこのキャプスタンは、板材と棒材、真鍮棒から完全に自作する
ように指定されていました。カットモデルの性質上、メインデッキのものと構造上繋が
っていなければならず、解説書の接着指示に逆らって可動するように仕上げたため、
少々難しいポイントでした。

↑金色に輝く美しい真鍮製の砲身。しかし、今回はこの大砲を全てブルーイング作業で本物の
鉄製の大砲同様に、黒く染めました。 ブルーイングとは、モデルガンの処理に使う特殊な薬剤
を使用して、金属表面に人工的な黒錆膜を作る方法で、塗装よりムラがなく、丈夫に仕上がるの
で、シルバーアクセサリーなどの加工にも使用されているものです。

↑砲台は、このような木製のレーザーカットパーツを使用します。

↑アップで見ると、砲台のパーツはこのようになっています。パーツを板から外し、表面が荒れている
ため、1個1個サンディングして表面を整えてから組み立てていきます。 このキットでは、メインデッキ
が再現されている関係で、砲身だけのダミーではなく、砲台も含めた大砲のフルキットを24個仕上げる
必要がありました。

↑表面処理を終えた砲台パーツ郡。

↑塗装前のパーツを組み合わせたものと、完成後の大砲の比較です。砲台の車軸と砲
身を固定するピンは、真鍮線で作りました。砲身はブルーイングでムラなく実銃のように
染まりました。作業には脱脂、黒染、コーティングと、3種類の薬剤を使用し、砲台の塗装
はオイルフィニッシュにて仕上げました。 なお、砲身の大きさおよび長さはメインデッキ
とアッパーデッキのもので異なり、2種類あります。

↑この模型では、船底にある船倉には、船荷を積んで船の重心を下げてある様子を再現するよう
に指定されているのですが、実際の船には石のオモリを積んであったと資料で知り、この帆船にも
細かい石をたくさん積んでみることにしました。 石は適当に拾ってくる方法でもよかったのですが、
均等な大きさや色の石を見つけるのが難しかったので、鉄道模型のジオラマ用に市販されている
ものを使用しました。

↑船底に敷き詰められたオモリの石。実船では、入港の度に石を取り替えることで、衛生面の配慮も
行っていたそうです。 模型での石の固定は、鉄道模型のレールのバラストを固定する方法にならっ
て、木工用ボンド水溶液を垂らして固定する方法を用いました。ベースが木なだけに、接着性は良好
です。

↑マストを固定するシュラウド(支え索)を張るためのチェーンプレートは真鍮線(黄銅線?)
を指定の長さに切って、デッドアイに巻きつけてひとつひとつ組み立てていきました。

↑これを、チャンネルに差し込み・・・。

↑船体に刺した釘の頭に巻きつけて仕上がりです。ヤットコを使って丁寧
に仕上げていかねばならず、工作慣れしていない人には厳しい作業という
気がします。

↑滑車などの細かい部品は、ちゃんと整理しておかないと、製作中に紛失してしまう可能性が高いので、
\100ショップのダイ○ーで購入したこのようなネジ入れを使用してパーツを分類しておきました。

↑そして突然マストが全部立ったところまで飛びます。(笑) 作業に夢中で写真を撮ることを
忘れていたのですが、マスト、ヤードともに、一本一本丸棒から削りだしました。 ヤード、マストは
まっすぐな棒のように思われがちですが、実はパルテノン神殿の柱のように、先に細くなるテーパ
ーがつけられており、このテーパーを再現するため、小刀でエンピツを削るように、一本一本デザ
インナイフとサンドペーパーで成型していく必要がありました。
マスト、ヤードの塗装は英国ワトコ社製のオイルフィニッシュを使用し、巻き綱および滑車の取り
付けには、糸を巻いて木工用ボンド水溶液を吸わせることで、固定しました。 画像には映って
いませんが、マストトップの床面は、ベニヤ成型そのままで味気なかったのでデッキ材を張り付
けて実物のイメージに近づけました。

↑船尾からみたマストの取り付け状態。キャップの取り付け位置しだいで、マストが前方や後方
に傾斜しないか?パレルに糸を通してマストに固定するヤードは、水平に取り付けられているか?
気を使う部分がかなり多かったです。 しかし苦労の甲斐あって、ようやく帆船らしく見えてきた
という気がします

↑ロアマスト(一番下のマスト)とメインマスト(下から2段目のマスト)を繋ぐキャップの取り付け位置
が解説書の指定どおりだと、ロアマストに対してメインマストが前傾してしまうため、若干調整が必
要でした。キャップの取り付け部は、自分で削りだす必要があるため、失敗すれば一巻の終わり
です。細心の注意が必要でした。
今回、帆船模型に初挑戦するに当たって、デアゴのセーリングシップを購読することにした理由は、
丁寧な和文解説書がついていること以外に、「パーツ不足の多い輸入キットよりしっかり管理されて
いるはずだから」と、以前に記載したのですが、この考え方はここにきて、必ずしも正解ではないと
いうことを思い知らされました。
なんと、マストとマストを繋ぐキャップのパーツに問題があったです。 本来、大きいキャップが2個、
小さいキャップが5個付属してくるはずの巻で、大きいキャップが3個、小さいキャップが4個付いて
くるという間違いがありました。
アフターフォローのある期間内ならクレームを付けることもできたのですが、あまりにゆっくり作業を
進めていたこの段階では既にアフターフォローも締め切られ、結局心ならずもパーツ欠品に対する
対処法まで練習することになりました。(笑)

↑左側が純正パーツの小型キャップ(金属製)、右側が自作で削りだした木製(ホ
ームセンターで買ってきた檜材より)キャップ。まだ穴あけ前の状態ですが、これに
穴をあけて仕上げました。

手前が純正、奥が自作品です。こうして並べて見比べれば違いが
分かってしまいますが、実際に船に組み込んでみると意外とわかりません(笑)。
自作したキャップはフラッグスタッフに使用しました。

↑ここまできたら、あとは気の遠くなるようなロープワークを丹念に根気強く行っていくのみです。かなり
単調かつ、手狭な作業となるので、時間を見つけては、帆船の映画やドラマを見たり、音楽を聴いたり
して気を紛らわせながら進めていきました。写真はデッドアイに糸を通していく様子です。引っ張ったとき
にねじれないように、テンションの掛け方に苦労しました。

↑これはシュラウドにラットライン(縄梯子)を編みこんでいく様子です。ラットラインの結び目だけでも、
数えてみると合計750箇所程度におよびました。各滑車類やロープ、帆の結び目を考えると、合計
1000箇所越えは間違いありません。
残念ながら、サン・ファン・バウチスタ号の写真つき製作記はこれで終了です。
この後はまた製作に夢中になりすぎて(笑)、撮影を忘れてしまっていたのですが、ここから先の作業
は毎日のように続けても、4〜5ヶ月程度かかりました。
最後の方になってくるとロープも増え、帆も張ってどんどんピンセットの入るところがなくなっていき、
糸をピンレールに巻きつけるのにも一苦労で、1時間かけて糸を2箇所程度しか結んでいけないような
毎日が続き、その糸もケバを止めるために、一本一本木工用ボンドでコーティングしていきながら
作業したため、「これってホントに完成できるの?」と疑問に思うことも少なくなかったのですが、
2006年の5月27日、あしかけ3年7ヶ月を経て、ようやく念願の木製帆船模型第一弾が出来上がり
ました。
(メインの艦船模型製作活動の合間を縫って作業を進めたため、デアゴスティーニの刊行終了から
2年近くの月日が流れてました・・・)
いろいろ失敗もありましたが、1作目としてはなかなか豪華な仕上がりで、1作目からこうした立派な
模型を完成できるように設定してくれたデアゴスティーニには、改めて感謝する思いです。
また、帆船模型は作り手の個性が出やすいと良く聞いていましたが、今回の製作においても、自分
なりに工夫したところや、解説書の指定とは変えてみたところも多く、自分だけの船が仕上がったことに、
大きな満足感を覚えています。
例えば、10年後に完成した船を見れば、「10年前にはここに苦労していたなぁ」とか「これを作っている
時にはこんなことがあったなぁ」という具合に当時を思い出す良い素材にもなると思います。
膨大な時間と労力をかけて作るからこそ、完成したときの喜びも大きいし、帆船模型は作っているときも
楽しいけれど、完成させることがいかに素晴らしいか、初めての木製帆船模型を完成させて改めてその
醍醐味に気づかされました。
HIGH-GEARed HOBBY WORKS!!での模型作例は、その製作スピードと数の多さから、「この人は
作っていることのみに喜びを感じて、できた模型には執着しないタイプなのか?」と思われがちのようですが、
HIGH-GEARed自身の性格は、むしろその全く逆で、完成した模型を眺めながら楽しむときが、最も
模型作りの醍醐味を味わえる時と思っています。
できた模型が手元を離れるのは寂しいですし、できることなら手元に置いておきたいと思う毎日ですが、
立場上でそうも言っていられません。
そしてもちろん、人に譲る模型だからといって手を抜くことはないですし、手元に置いておく喜びを知る
からこそ、手元に置いてくださる方の気持ちを忘れないようにいつも心がけています。
模型は、作ること、作った模型を眺めること、いろいろな楽しみ方があるのだと思いますが、その両面に
おいて、木製帆船模型はこれまで挑戦してきたどのジャンルの模型よりも、重く、味わい深いものを
自分の中に残してくれました。また、辛抱強く地道な作業を続けていけば、最後には必ず満足のいく
ものが完成できるという喜びも教わりました。
バウチスタ号を製作してきた中で、模型人としての自身の成長も大きく実感することができ、実に有意
義な3年7ヶ月になりました。
次は、キットものに挑戦してみるつもりで、作りたい船ももう決まっています。(ポーツマスはどうした?!)
次の木製帆船は、またサイトをご覧の皆様が忘れた頃辺りに製作記などをまとめてアップする予定です。(笑)
それでは、前置きが長くなりましたが、次はいよいよ完成画像の公開です。

↑最後の仕上げに船体舷側には油性のつや消し透明ニスを薄めたものを何重にも
重ね塗りました。ニス塗装は帆船界ではあまり評判が良くありませんが、ピカピカし
ない落ち着いた艶が気に入っています。