木製帆船模型
サン・ファン・バウチスタ
製作中の船体
初めての木製帆船模型製作
***デアゴスティーニのセーリングシップについて***
デアゴスティーニの このシリーズは、親切丁寧な和文解説書付きとはいえ、パーツや組み立て方法は
は本格的な帆船模型となんら変わることなく、プラモデルのように形の出来上がったパーツを組み立て
ていく方法ではなくて、材料をひとつひとつ加工して仕上げていくという内容のものです。
内容的には、いわゆる初心者向けの帆船模型キットより数段複雑で、一般のファンに多いであろう
「最初から大物を仕上げたい」という欲求を満たしてくれるものではあるのですが、難易度はこうした
入門者向けシリーズからイメージするほど低いものではなく、ある程度工作に慣れていることと、
数百時間じっくりと取り組むという根気、そして何より必要なのは「帆船が好きで帆船模型を作り
たい!」という情熱であって、「誰にでもできる」という売り文句はかなり誇張さ
れているように思えます。(笑) 実際、全国の書店で大々的に売り出された割には、ネットでの
完成例の数も、それほど多くないという気もします。
さて、このマガジンに付属するキットのプロトタイプですが、サン・ファン・バウチスタ号という16世紀の
スペインのガレオン船だそうです。 帆船全盛時代の中期の船で、スペインの無敵艦隊「アルマダ」
に所属し、後には「海の橋」とも呼ばれた新太平洋航路などでも活躍したそうです。
この大きさの船にしては、大砲が多めに塔載されていますが、これはアルマダに編入されて軍艦として
使用された際に増設されたと思われます。
一度軍艦として使用された船は、その後の商船として使用される際にも、大砲は残されていたケース
が多いようです。特に15世紀から18世紀にかけては、太平洋を航行する貿易船を狙う海賊が横行した
時代ですので、これらの武装はそれら海賊からの自衛の手段という意味合いもあったのでしょう。
宮城県石巻市には、このバウチスタ号(サン・ファン・バウティスタ)の復元船があるのですが、資料
的なものは残っていないのか?また同名の別の船なのか?同時代のガレオン船ではあるものの、大きさ、
形状ともにかなり違います。
バウチスタ号について調べてみると、面白いことにアルマダのネタや、宮城の復元船(慶長使節ネタ)
や、あのメディチ家のネタなど、いろいろ出てきて、この船の由来はいまいちはっきりしません。
しかし、こういう謎めいた船だからこそ、いろいろと想像を膨らませて楽しむこともできます。ようするに
16世紀の少し大型のガレオン船だと思えばいいわけです。(笑)

↑数年前に長崎オランダ村で撮影したガレオン船「プリンス・ウィレム号」。当時世界最大の
ガレオン船でした。(この船はオランダの造船所で作られたレプリカです)
この画像を撮影したとき、オランダ村は既に閉園していたため、見学は諦めていたのですが、
九州のSW乗り、ももちゃさんの口聞きで、特別に見せて頂きました。 その後、オランダ村は
再開のメドが立たず、この船もその後にオランダに返還されてしまったそうですので国内では
二度と見ることができず、今思えばこの時の貸切状態での見学は本当に貴重なものになりました。
***セーリングシップに使用されているキットついて***
このシリーズの巻頭には、ご丁寧にも製作の進め方を映像で解説したVHSビデオテープが付属して
きました。 細部を見ると、実際のこのシリーズの製作内容とはいささか違う部分もあったのですが、
価格の割に参考になるもので、 ありがたく拝見させてもらいました。
このビデオの最後に、「Altaya」のロゴがあったので、早速AltayaのHPを調べてみたのですが、現在で
は大型戦列艦「サン・フェリーペ」などもリリースしているようで、キットの出所は、どうやらAltayaで間違い
ないようです。 Altayaと言えば、1/43精密ミニカーなどでお馴染み(日本には代理店がないみたい
ですが)でしたが、帆船模型も作っているとは知りませんでした。
キットは、片舷がカットモデルになっていて、内部構造が見れる興味深いもので、国内に輸入されて
いる帆船模型キットでは例がなく、全体像とカットモデルの両方が作りたいと考えていたHIGH-GEARed
には、大変魅力的なものでした。
内部構造を再現するため、船体はもちろん竜骨作り、外板は2重張りで、マスト、ヤードも丸棒から自
分で削り出すものです。 こうした技術は今後、本格的な帆船模型キットを組み立てる際にも役立つ
ことばかりですので、帆船模型製作の第一弾としてはうってつけでした。
***船体の組み立て***
船体は竜骨作りとなっていて、キール(竜骨)にフレーム(肋材)を一枚一枚組み込んでいくところか
ら、製作はスタートします。
キールやフレームはレーザーカットされた木材が付くため、これらを一枚一枚切り出す手間はありま
せんでした。 これらのフレーム類は、片舷カットモデルの性質上、完成したあとにも見えてくるところ
なので、一枚一枚丁寧にサンドペーパーで磨き、天気の良い乾燥した日を選んで、薄めたニスを
塗っては乾かし、磨き、また塗っては・・・を繰り返して、表面を保護して仕上げました。

↑キールにフレームを組み込んでいく様子です。キールはニス塗装後で、
フレームはまだ塗装していません。材料はシナベニヤというのでしょうか?
側面から見た木目は綺麗ですが、断面はいかにもベニヤという雰囲気で、
積層構造が丸見えになっています。

↑甲板も一枚一枚、板を張って仕上げます。これはベースとなる甲板パーツ。
このパーツもベニヤのレーザーカット品です。複数組み合わせて、各デッキを
覆っていく仕組みです。

↑板を正確に張るために基準線をケガいた様子です。

↑甲板材の板を張っていく様子。解説書では、一本の板を長く渡すように指定されていま
したが、実感をだすため、板の側面にシーリング材をイメージしてエンピツで黒い色を塗って
から、均等な長さに切って互い違いに張っていきました。 しかし今思えば、この継ぎ方は間
違いで、実際の船の継ぎ方はもう少し複雑あると。専門書に掲載されていました。次からは気を
つけようと思います。

↑フレームと甲板材が8割がた揃い、試しに組み合わせてみた様子。 このシリーズはマガジン
形式を取っているため、書籍のサイズに合わせる必要があり、その結果、キール、甲板とも
に縦に3分割されているのが欠点です。 市販の帆船模型キットの場合は、キールは一枚
のベニヤで仕上がっているので、キールが曲がる心配も少なく、しっかりとした構造になるの
ですが、この場合は書店での取り扱いを前提した設計のデメリットが出てしまっています。
向かって左側が船首、右側が船尾です。
解説書のとおりに甲板一枚ごとに板を張っていくと、ご覧のように、各甲板に隙間ができてし
まいました。 あとになって思えば、全ての甲板が揃ってから張り始めるべきであったと後悔
することになり、早くもひとつの失敗が生じてしまいました。

↑船尾側は4階建ての構造になっていて、内部の各デッキも再現したモデルだけに
実物の船を建造しているようで、面白い仕上がりです。 当初は多少チープに思えた
フレームも、塗装することでベニヤ臭さがいくらか誤魔化せてきました。

ここから、割り箸と同じようなサイズの外板をフレーム一枚一枚張っていき、
徐々に船体の形を出していきます。このキットでは、片舷カットモデルという
性質上、完成後も外板の下地板が内部から見えてしまうので、貼り付け作業
の前に、このように板を一枚一枚オイルステインで塗装してから始めました。
オイルステインは浸透性の木材塗料で、そのままですと色あせが起こりやすい
ので、乾燥後につや消し透明ニスでコーティングしました。

↑オランダ村で見学したプリンス・ウィレム号の船内。フレームと外板の色調や組み合わせが
良く分かる画像で、製作の参考になりました。

↑カットモデルになっている右舷側の外板の下地板を半分貼り終えた様子。板張りを始める前
には、ヤスリを使って各フレームのフチを船体カーブに合わせた曲面に削る、ベベルという作業
が必要です。砲口のある外板は、カット済みのパーツが用意さえていたので、船体に合うように
曲げて取り付ければ、穴あけ場所を間違うこともありません。

↑内部デッキとフレームの様子。実物の帆船のフレームは、もちろんこのようなベニヤ
ではなく、曲げた木の板を何枚も重ねて曲線を出していくものなので、若干のニュア
ンスの違いはあるのですが、それでも模型としてはなかなか良い雰囲気に仕上がっ
てきました。

↑船首はバルサブロックを削ってカーブ成型します。ドレッサーと金ヤスリ、スポ
ンジペーパー、サンドペーパーと、あらゆる工具を使って3次元曲線を成型して
いきました。

↑右舷側外板の下地板の貼り付けが完了した直後の画像です。張り付ける前の下地板の
内側を着色した跡が、外側にも若干見えています。

↑こちらは左舷側。カットモデルになっている右舷側とは異なり、左舷側はすっぽりとフタをして本物
の船と同じように仕立てていきます。親指に絆創膏を貼っていますが、この作業の際には、現物あわ
せで、切ったり削ったりの加工が多かったため、常に生傷が耐えませんでした。(苦笑)
外板の下地板の張り付けは、一本一本現物合わせで板材を加工し、木工用ボンドと小釘でフレームに
固定していく気の遠くなるような作業です。 なお、下地板を固定している釘の頭は、この後張り付ける
外板の上張り材を貼り付ける際にジャマになるので、全てニッパーで落としておきました。

↑この後、船体に張り付けていく外板材と、携帯電話との大きさ比較です。右側の色の
濃い薄板が外板の上張り材、左側の明るい色の板はデッキに敷き詰めた甲板材です。

↑そして突然、上張り材を張り終えた画像まで飛びます。(笑) 簡単にやっているように見えますが、
この作業には随分長い期間を必要としました。 薄いチーク板を1枚1枚曲げて張り付けていかねば
ならず、また仕上がりに影響するため、釘も使用できないので苦労の連続でした。(特に船首の曲が
りの大きい部分は難しいです) 砲口や排水口の開口は、現物あわせの作業です。

↑船尾よりの様子。スターン下部の外板は、解説書の張り方がV字形状の間違った指定になっていた
ので、、資料に従ってA字型に修正しました。舵取り室後ろの士官室の仕切りは買ってきた木材で自
作し、中の机や椅子も全て自作して生活感を演出してみました。 今回は、これ以外にもブルワーク
内側に板材を張るなど、解説書どおりの素組みよりいくらか工夫を凝らして、若干のディティールアッ
プを行ってみました。

↑船尾のアップ。イメージしたとおり100点とはいきませんが、初めてにしては、隙間や段差も少な
めに仕上がって満足しています。下地板と同様に、上張り材も接着前に一枚一枚オイルスティンを
薄めたもの(メイプル)を吸わせて軽い着色仕上げとしました。また、甲板の時と同じように、シーリン
グに見立てた板側面のエンピツ塗装も一枚一枚作業しました。

↑外板の上張り板の張り付け終了後に、再び薄めたオイルスティンを吸わせて着色した様子です。
サンディングした際の削り粉が取れ、板目にエンピツ塗装で再現したシーリングの様子が見て取
れます。板と板の階層に黒い色がついてメリハリが付いている様子に、地味な作業を続けてきた
成果が見れて、感無量でした。(笑)

↑上張り材の上に、更に飾り板を張り付けます。この飾り板は硬い材質(クルミ材?)で厚みもある
ため、材料に水を吸わせて柔らかくし、半田ごてで温めながらカーブを付け、また水につけて半田
ごてを当て・・・という作業を繰り返して角度を付けて行きました。 なお、実物の帆船は、上張り材
の上に板を張っているのではなく、下地材の上に分厚い板を張りつけ、上張り材はその周りを覆う
仕組みで作られているようです。

↑解説書には指定されていなかったのですが、今回はより実物の船のイメージに近づけるため、
船底を塗装してみました。 はけ塗りの方が、実船の塗装の雰囲気がでると思ったのですが、塗料の
染み込みによる喫水線のボケが心配だったので、エアブラシで塗装することにしました。このように
マスキングして、まずはラッカーサーフェーサーを薄めに吹きます。

↑カットモデルの右舷側は、マスキングも複雑です。帆船模型界では、木目はパテとサフで完全に
消してから塗装するのが普通のようですが、せっかく作った木目が消えてしまうのは寂しいので、
薄めのサフ仕上げになりました。(結果的には少し中途半端になった気がします)

↑本塗装はGSIクレオスMrカラー「セールカラー」にフラットベースを混ぜたものを使用しました。
予想に反して、塗装する事によって、板目は逆に目だってしまったような気がします。特にバウな
どは、完全に継ぎ目がはっきりしてしまったので、ここは側面に板を張って板目を作るなど、より
自然に見える処置をしておけばよかったと、少し後悔しています。

↑そんなこんなで今回はいろいろ失敗談もできましたが、結果的には自分好みの雰囲気が出せました。

↑左舷側。まだマスキングテープは全部剥がしきっていない時の画像ですが、喫水線は少し深め
に取った方が見た目のバランスが良い様に思えたので、このあたりも自分好みの修正を入れました。
また、喫水線の位置を自分好みとするために、バランスを考えて飾り板の位置も実は少し調整して
あります。

全体の色バランス。解説書では、白木色のまま仕上げる部分が多く指定され
てましたが、HIGH-GEARedの作例では全てのパーツを塗装し、未塗装部分
はありません。例えば画像の奥に見える梯子も、実際は白木指定でしたが、
ウォールナット色のステインで着色しました。
今回の塗装には、船底以外は全て木材用塗料を使用しました。オイルステイン、水性ステイン、ウレタンニス、オイルフィニッ
シュなど、様々な種類の木部用塗料を試しました。全体的な色調は少し暗い目で、引き締まった印象を目指しています。

なお、塗装の際に、水平の喫水線を正確に引くために、このような
即席自作工具を使用しました。
材料はエンピツ、マスキングテープ、土台はスプレー缶(タミヤ呉海
軍工廠色)とMDです。(笑)