1/700スケール 航空母艦 龍驤 
FUJIMI製インジェクションキット













フジミ 1/700

航空母艦龍驤は日本海軍の小型空母の完成された姿を求めるべく、運営
上の幾多の教訓から幾多もの改装をうけ、結果的に他のどの航空母艦とも
似つかない非常に個性的な艦容を持った航空母艦となりました。

キットは前々回に掲載の世界初の本格的航空母艦鳳翔をリリースしたフジミ
によるものなのですが、同社の標準的な完成度と比較するとほとんど唯一ま
ともな完成度といえる航空母艦キットで、設計当時の平均レベルを思えばま
ずまずの完成度で部品数も適度に抑えられていて比較的組み立て安いもの
です。

フジミがこのキットをリリースしたのはフジミがまだ静岡模型協同組合の一員
だったときのことで、脱退後も1/700龍驤のキットは同シリーズのどのメーカー
からもまだリリースされていないので、1/700を含め、龍驤のキットではほとんど
唯一といえるものです。

それでは、実艦についての説明です。

***実艦について***

航空母艦龍驤は大正14年、老朽化していた水上機母艦『若宮』の代艦と
して建造が認められた水上機母艦をその原型としています。

ワシントン条約下では1万トン以下の航空母艦の建造は自由とされていた
ため、龍驤は水上機母艦として建造される予算案が成立した後に
小型航空母艦に設計変更して建造するように海軍側省に要求され、その
結果、公試排水量9800トン、搭載機数24機の要目で設計案がまとめられ
ました。

しかし、建造途中にロンドン軍縮会議の見通しとして1万トン以下の航空母
艦も制限枠に組み込まれることが濃厚となったために、搭載機数を36機に
増大されるよう要求され、格納庫を一層増設し、低い乾舷の割に異様に大
きな格納庫を備えた航空母艦となり、重心位置が上がったことによる復元性
不足の対策として喫水線に巨大なバルジを備えた特徴的な艦容を持つ航
空母艦として完成しました。

しかし、竣工直後に友鶴事件(昭和9年、波浪により過剰装備の水雷艇友
鶴が転覆沈没し、日本海軍艦艇の復元性を見直すきっかけとなった事件)
が発生し、龍驤は上部構造物の軽量化とバルジの更なる大型化を図って
対策を施しました。 

しかし、更に事件は続き、龍驤は昭和10年の第4艦隊事件(演習中の艦隊
が岩手沖で暴風雨に巻き込まれ、駆逐艦2隻が船首切断などの大損害を
被った事件)に遭遇し、低い乾舷を越えた波が艦橋を直撃し、大きな損害
を受けたことから、艦橋を修復補強し、船首を1段高めるなどの対策がなさ
れ、ようやく第一線級の性能をもつ航空母艦として完成しました。


↑龍驤全景。真上から

開戦時にはフィリピン作戦に参加し、艦戦、艦攻を24機発艦させてダバオ
空襲を行い、シンガポール陥落の際には敵艦艇、商船合計20隻を撃沈
する大戦果をあげました。

昭和17年6月には竣工したばかりの航空母艦隼鷹と共にアリューシャン作
戦に参加、ダッジハーバー空襲など、作戦は成功をおさめますが、共同
作戦であったミッドウェー海戦に大敗し、内地に帰還。

その後、ガダルカナル戦役において、輸送船4隻を護衛して航行中に米
空母サラトガから発艦した攻撃隊の空襲を受け、10発の爆弾と1本の魚雷
が命中、機関を停止して乗組員は巡洋艦利根に移乗させた後、龍驤は転
覆、ソロモン海にその生涯を閉じました。



模型の全長は約25cm、ケースの全長は36cmです。


***キット、組みたて、ディティールアップについて***

前途していますように、今回は現在1/700ウォーターラインシリーズとは
別の企画として存在するフジミの1/700洋上モデルブランド、シーウェイシリ
ーズの航空母艦龍驤をベースに製作しました。

このキットはフジミがウォーターラインシリーズに加入していた時代に企画
設計されたものですが、現在でも龍驤が抜けた穴を埋める同シリーズのキ
ットがリリースされていないため、1/700では唯一のインジェクションキットに
なります。

今回は、このキットをベースにゴールドメダルモデルズの空母用エッチン
グパーツと、トムズモデルワークスの空母用パーツ、ハセガワのエッチング
パーツと静岡模型教材協同組合のリニューアルパーツや艦上機、精
密チェーン、ナイロンテグスによる空中線再現などを使用してディティール
アップを施しました。

艦上機はキットに付属のものを使わずに静岡模型協同組合の日本艦載
機前期セットを複数購入して統一し、模型映えするよう多めに搭載しました。


まず、舷窓のモールドをピンバイスでさらいなおしてモールドのめりはりを
強調し、船体の合わせ目のバリなどを消し、短艇および高角砲などの艤装を
静岡模型教材協同組合のものに交換しました。

また、機銃は3連装、連装、単装全てをピットロードの2ピース構造のものに
交換し、立体感のある仕上げとしました。

錨鎖はフラグシップの精密チェーンに置き換え、立体感を強調しました。


↑右舷船首側通路などの側面ディティールと立てた状態の遮風柵の様子。

手摺レールはゴールドメダルモデルズのエッチングパーツによるもので、
防護ネットも同パーツから使用、タラップなども同パーツのもので、船首甲
板やスポンソンから飛行甲板に繋がる部分や通路どおしを結ぶタラップの
ディティールを追加しました。また、舷側通路を縦に繋ぐ形で取り付けられ
ているトラス支柱は専用エッチングパーツに置き換えました。船首右側の
トラス状の空中線支柱の基部もエッチング製です。

飛行甲板のディティールアップには、ハセガワのエッチングパーツから滑走
制止索を使用し、遮風柵はトムズモデルワークスのエッチングパーツから使
用して使いわけ、ディティールを追加しました。


↑左側面船尾側の通路等のディティールの様子。


***艦上機について***

艦上機はキットのものを使わず、静岡模型教材協同組合の日本空母艦載機
前期セットから、零式艦上戦闘機二一型と九七式艦上攻撃機を使用しました。

零戦は12機、艦攻は8機を搭載、プロペラを全てエッチングパーツにて再現
しました。昭和16年度以降の搭載機案に艦戦と艦攻以外は搭載されていない
という資料に従って艦爆は搭載していません。


↑飛行甲板上の零式艦上戦闘機二一型および制止索、防護ネットなど。



飛行甲板上の九七艦上攻撃機。


艦上機のマーキングは全て塗装による再現です。


***空中線について***

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0、128mm)を着色して使用
しました。取りつけは全て瞬間接着剤によるものです。

全体を黒に塗装し、空中線基部には白塗装でガイシを表現しました。


***塗装について***

塗装はスケール性を考慮した上で船体やパーツの本塗装の前には塗装後
の塗膜の発色を良くするために、ホワイトサーフェーサーで下地を作った白
たちあげにて塗装しています。

飛行甲板鋼板貼り部分とエレベーターはアクセントとして多少トーンを明るめに
塗装し、木甲板部分はタンをベースに吹き、マホガニーとクリアーイエローをコ
ートして木の色調を再現しました。

飛行甲板上の着艦標識は全て塗装によるもので、こちらも資料にしたがって
若干修正しました。

仕上げには艶消しのクリアーをオーバーコートして質感を落ち着かせました。
塗装後の乾燥にはマイナスイオンドライブースを使用しているので塗膜のカブ
りなどは一切ありません。


***台座について***

海面のベースはタミヤモデラーズギャラリー特別販売のウェーブボードを使用
し、クリアーブルーを吹き付けることで透明感のある海面を再現しました。アクリ
ルケースのベース部分はネイビーブルーのまだら塗装で仕上げて深みを出し
てみました。

船体とベースの固定は船底にナットを埋め込み、ボルトを底面から通すことで
行いました。





**総括**

これまでWL歴7〜8年にして数々の1/700航空母艦キットを組んできましたが、実
は龍驤の製作というのははじめてでした。

フジミの空母自体の印象が現在シーウェイモデルシリーズとして展開されている
(以前はWL)翔鶴型空母をはじめとして、前回製作の鳳翔もしかり、あまり良くな
かったこともあって、全く期待していなかったのですが、箱を開けて部品の状態を
見ると思ったよりシャープで好印象でした。

武装はいつもどおりピットロードと静岡模型協同組合のリニューアルパーツを使
用するので、そのあたりの艤装も精密に整えればなかなか良い雰囲気になりました。

航空母艦龍驤は写真などの資料も豊富なので、艦橋側面を開放したり、3本足の
スポンソン支柱を作り直すなど、考証面も追求すれば更にいいものとなることでし
ょう。 改装前の状態とするのは大改造が必要ですが、さまざまな楽しみ方ができ
ると思います。





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