1/700スケール 客船 新田丸 日本郵船
AOSHIMA製インジェクションキット













アオシマ 1/700

HIGH-GEARed HOBBY WORKS!!史上初めての客船作例となった、ハセガワの1/700貨客船
氷川丸のアップから1ヶ月あまり。 今回の作品は、同じく1/700ウォーターラインシリ
ーズにおいて、氷川丸と対をなす形で製品化されている、アオシマの新田丸です。

製作のきっかけは氷川丸と同じく、2006年10月に行った東京〜横浜の旅の影響で、東
京お台場の『船の科学館』に展示されていた、籾山艦船模型製作所によって製作され
た精密模型を見て感銘を受けたことがきっかけでした。(初めて見たのは2005年の旅
の時でしたが、じっくりと見ることができたのは、より時間に余裕のあった2006年の
旅においてでした)

船の科学館を訪ねた旅の様子はここをクリック


***実船について***

新田丸は、欧州航路用の客船として、昭和15年3月23日、当時日本最高の技術と贅が
尽くされ竣工した、豪華客船の中の1隻です。

姉妹船は、八幡丸と春日丸で、三隻の船名が日本郵船の頭文字『N・Y・K』から取ら
れていることからも、同社を代表する豪華客船として建造されていることが理解でき
ます。

新田丸においては室内装飾をそれまでの定例であった西洋クラシック様式から脱却し、
日本古来の美術や伝統技術を生かした「日本様式」と言えるような独自のデザインを
採用し、機関も三菱製の蒸気タービンを使用するなど、純国産に拘った設計がなされ、
一等客室全てに冷房を完備するなど、当時の世界水準に肩を並べる国内最優秀船と
呼ばれました。

しかし、新田丸は第二次世界大戦の勃発により、当初予定していた欧州航路に就くこ
とはなく、日米を結ぶ太平洋航路に就役。 

太平洋戦争の開戦の直前には海軍に徴用、のちに買収されて昭和17年11月、航空母艦
に改造され、空母冲鷹(ちゅうよう)として輸送任務に従事しました。昭和18年には
潜水艦からの雷撃によって沈没しています。

戦前において、国産の最優秀客船だった新田丸ですが、客船としての活躍は実に短い
ものでした。


***製作について***

製作のベースにしたのは、上述したように、アオシマからリリースされているウォー
ターラインシリーズの1/700洋上模型キットで、箱換えにて姉妹船の八幡丸、春日丸
(未成船)もリリースされています。

ハセガワの氷川丸のキットが非常に優秀なキットだったため、過剰に期待しすぎたの
かもしれませんが、アオシマの新田丸のキットの製作は、これまで100隻あまりを製
作してきた1/700洋上模型にあって、最も困難と言えるものでした。

独特のデッキ構成の影響もあってか?パーツの分割方法が非常に特殊で、船体を箱に
組んでからでは塗装できない部分が多いため、組み立て前に大方の塗装を行う必要が
あるのですが、、パーツの合いが最悪なため、塗装して組み立てると、隙間だらけ、
穴だらけになってしまい、修正をかけなくてはいけない部分が多いため、塗装と修正
作業は二度手間となってしまいます。

また、実船の写真や籾山作品と比べると、各層の構成も違っているようで、遠めに見
て不自然に見えないような修正は行ったのですが、どうにも修正が不可能な部分に関
しては妥協することも多く、ディティールよりもイメージを重視した完成品になりま
した。


↑船体を仮組みした様子。実はこの状態に持っていくまで、丸一日かかり
ました。(笑)ボートデッキの幅は、船体パーツと比べて幅が広すぎるので、
左右のバランスを見つつ。1ミリ以上削りこみました。 

また、プロムナードデッキ後端部分が角ばりすぎて違和感があるので、、尻すぼまり
になるように削り、船体のラインに側壁パーツが合うように成型しなおす必要があり
ます。

また、舷側パーツも厚みがありすぎるため、サンドペーパーで地道に削ってブリッ
ジ前面とツライチになるまで調整しないと上手く箱に組めません。


↑そして、ここからようやく修正作業に入るのですが、実船の
イメージに近づけるための修正箇所は、この図のとおりです。

アオシマの新田丸は、年少者を意識してか?手摺の多くがブルワークとして再現
されているため、エッチングパーツに交換する目的で、目立つ部分を中心に切除
しました。

船橋前面のデッキに開いている穴は、本来ボートデッキに通じているものですが、
このキットでは、船橋前面とボートデッキを繋ぐ部分が再現されていないため、
このまま組むと、この穴からカラッポの船内が丸見えになってしまいます。

穴を残したまま、デッキを自作する方法もあるのですが、床面が段付きになって
しまうため、完璧を期すには船橋前面をスクラッチする必要があり、今回は
簡易的にプラバンで塞ぎ、黒塗装で奥行き感を演出する方法を採りました。同様に、
船橋裏側も未再現デッキ部分を黒塗装することで絵的に誤魔化す方法で仕上げました。


↑そして、船橋側面のこの継ぎ目もまた酷い!

この継ぎ目を修正しないことには、せっかくの新田丸の船橋周りの曲面美が台無しです。

このままでは新田丸が新田丸には見えなくなってしまいますので、組み立て後に丹
念にパテ埋め&成型を行いました。


↑継ぎ目消しに使用したパテは、ワークのポリパテ『スベスベ』です。
塗装に合わせて白いパテを使用する必要がありました。

なお、修正部分以外の下地は一度グレーサフを吹き付けて白い成型色を一度殺して
から白塗装を行いました。成型色が白いままで直接白塗装をすると、発色が軽くな
ってしまうので、それを防止する為の対策です。



↑乾燥後に研磨し、ホワイトサフをタッチアップし、再び研磨…
という作業を複数回繰り返して継ぎ目を完全に消しました。操舵室
の側面窓は、パーツにはモールドされていないのであとから書き
込みました。ここまでやれば、ようやく新田丸のキットが新田丸
らしく仕上がってきた気がします。



↑その他では地味な部分ですが、
天上部分だけが再現された天幕支
柱に支えの部分を追加します。


↑方法は、プラバンを切って挟み込む
だけです。この画像では少しズレて
ますが、後に修正しました。天井部
分も含めて、真鍮線で作り直せばよ
り精密感のあるものになるでしょう。


↑ディティールアップパーツには、今回は氷川丸の時の失敗
を踏まえ、ゴールドメダルの商船用エッチングパーツを使用
しました。手摺だけでも、このように数種類が用意され、
シュラウドやクレーンのパーツも含まれた豪華なものです。



↑空中線は、デリッククレーンのケーブルも含めて、氷川丸の時
より多めに表現しました。太さ的にはオーバースケールですが、
それでも模型映え的には良い物です。キットではデリックは荷役
時の状態に設定されていたので、一旦ニッパーで切り離して倒した
状態に固定しました。エッチングのシュラウドもいい味出しています。


***完成画像***


こうして、なんとか新田丸に見える船が完成しました。細かい部分を見ると、いろ
いろと不自然な部分も見えてきますが、雰囲気は悪くないと思います。舷側の日の丸
表示と煙突の二引き線は、デカールによる再現です。



実船の新田丸の航空写真を見ると、船橋の天蓋甲板にも日の丸が表示されている
のですが、デカールには用意されておらず、塗装で再現することも可能ですが
模型映え的にアレな感じなので再現していません。(笑)



後部から。船尾の三等プロムナードは色指ししてあるだけです。開口して中身を
作りこめば、より見栄えがすることがでしょう。



側面からの様子。氷川丸のクラシカルな船容と比較すると、新田丸は随分近代的な姿
をしています。現代でも通用しそうな雰囲気ですね。氷川丸などを比べて背が高くな
った理由は、煙突基部に空調機室を設けたことが理由だそうです。

キットパーツには、ボートデッキより上の層の船室側面に全くモールドが施されていな
かったので、ピンバイスでひとつひとつ舷窓を開口していきました。 実際には角窓や扉も
多数配置されていたと思われますので、ピンバイスによる穴あけ作業はあくまでイメ
ージ重視の加工といったレベルのものです。



船首のデリッククレーンと貨物ハッチ。新田丸は分類上では「客船」の様ですが、
厳密には「貨客船」が正しい様です。デリッククレーンの塗装は黄色の船もあるよ
うですが。実船の写真を見る限りでは、かなり濃いブラウンに見えます。結局、
籾山模型の作品やキットのボックスアートを参考に、氷川丸製作の際に調色して
あった明るいブラウンを塗装しました。



水泳場は、なぜが塞がれていたので、キャンバス張りを想定して
グリーンに塗装しました。今思えば、ここは開口して裏側からプ
ラバンを貼り、樹脂かボンドを流し込んで水が張られた様子を再
現してみれば面白かったかな?と思ってます。煙突付近の塗り分
けは、キットの解説書は全くアテにならないので、籾山作品と写
真による推定で塗装しました。(ラッタルが歪んでますね。要修正です)



後部デッキはエッチングパーツによる手摺、タラップ、シュラウドの取り付け甲斐の
ある部分です。船橋天蓋のデッキと同じく、ブルワーク状にモールドされている手摺
類を削り取って追加した部分もあります。後部デリックも、前部のものと同様にキッ
トパーツを加工して倒した状態を再現しました。



船尾をローアングルで見た様子。軍艦にはない商船独特の立体感というか、奥行き感
が気に入りました。



前回製作の氷川丸とのツーショット。海面の走航波は、今回は実船の航空
写真を参考に作ったので、実船のイメージにかなり近く仕上がったと思っ
ています。WLシリーズの客船キットは数が少なく、新田丸、氷川丸のクラス
だけですが、今後もスケールを問わず、いろいろな商船にも挑戦していきた
いと思います。


***総括***

前回の氷川丸のギャラリーで予告したとおり、今度は新田丸を製作しました。

しかし、何度も記載しているように、アオシマのこのキットの手強さは予想
以上のもので、それらしく箱に組むだけでも随分苦労させられ、実船の雰囲気
を出せるまでには それなりに手を加える必要があり、製作に費やした労力は
氷川丸の×3倍という具合でした。

しかし、完成した雰囲気を見れば、「結果的にはそれらしく仕上がる」という
初期のアオシマキットの性質が見えるようで、シルエット自体は悪くないこ
とが理解できます。

氷川丸同様、新田丸も思い入れを持って作った船ですので、自身のコレクショ
ンとして大切にしていきたいと思います。

そして、また新しい商船を作る機会を楽しみにしたいです。バンモデリング
の青函連絡船なども面白そうですね。

1/350タイタニックも、いつか挑戦してみたい素材です。






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