1/700スケール 航空巡洋艦 最上 昭和17年
TAMIYA製インジェクションキット













田宮模型 1/700

太平洋戦争中、世界でも類を見ない航空巡洋艦という艦種に
改装され、前部に砲塔を、そして後部に艦載機を搭載すると
いう他では見られない超個性的で美しい艦容を見せていた
巡洋艦が日本海軍の航空巡洋艦最上(もがみ)です。

最上は15、5cm3連装砲塔5基を備える大型軽巡洋艦、最上型の
1番艦として、昭和10年7月に竣工し、昭和14年から15年にか
けて主砲を20、3cm連装砲塔に換装、軽巡洋艦→重巡洋艦に
生まれ変わりました。

大戦前半にはマレー上陸作戦やバタビア沖海戦で奮戦。そし
て昭和17年6月のミッドウェー海戦で損傷した後、九州佐世保
海軍工廠にて索敵能力を強化した航空巡洋艦に改装されるこ
とになりました。

船体後部に水上機を11機搭載できる航空作業甲板を設け、さ
らに25mm3連装機銃10機などの対空防御力も増強。航空兵装を
充実させた最上はその後、マリアナ沖海戦、そして史上最大
の海戦ともいわれるレイテ沖海戦と、日本軍の主力部隊に随
伴して参加しました。



レイテ沖海戦では戦艦扶桑、山城とともに第一遊撃隊第三部
隊に所属し、24日の空襲の際には敵機を撃墜する戦果をあげ
ます。25日にはオルデンドルフ艦隊の戦艦6隻、巡洋艦8隻か
らなる大艦隊からのレーダー射撃により、扶桑、山城ともに
沈没、最上も命中弾を多数うけ、後続する味方巡洋艦那智
と衝突するなどの大損害となり、その後砲弾や魚雷の誘爆を
引き起こして大火災となりましたが、からくもミンダナオ海
への脱出を成功させました。

しかしその後機関が停止して漂流しているさなか、敵機の空
襲により爆弾2発が艦首付近に命中、再び大火災となりました
がそれだけの大被害になりつつも沈没することなく、最上は
その強靭な耐久性を見せました。

そんな最上もその後、主砲砲弾誘爆の危険性がたかくなった
ため、総員退去の命令が発せられ、13時7分、味方駆逐艦の
魚雷にてミンダナオ海にその姿を消しました。

最上は太平洋戦争開戦以来、日本海軍戦局を左右する重要な
戦闘の多くに参加し、その組織的戦闘の最期となったレイテ
沖海戦まで激戦を戦い抜き、日本海軍の終焉とともに姿を
消した、まさに太平洋戦史の中の日本海軍そのものと言える
でしょう。

今回の作品は、この航空巡洋艦最上の洋上模型です。

ベースにしたキットはTAMIYAから昨年の下旬にリリースさ
れたばかりのもので、静岡の有名模型会社3社協同開発の
国内艦船模型の最大のブランド、ウォーターラインシリー
ズの最新作のひとつです。

キットのレビューになりますが、これはウォーターライン
シリーズの中でもトップの技術を持つタミヤが開発を担当
しただけあって、リリース前まで現役だった初代のキット
と比較すると、船体を左右分割方式にすることで舷側のデ
ィティールがそれまでの一体成形式の船体より詳細に再現
され、船体側面内部にある魚雷発射管の形状も実物どおり
立体的に再現されていて、完成するとほとんど見えなくな
る予備の発射管まで再現されています。

船首甲板や航空作業甲板には精密な滑り止め鋼板がモール
ドされていて、艦橋内部にもちゃんとグレーチングのモー
ルドが施されていたり、第一、第二砲塔の仰角を微妙に変
えてあるなどの模型映えを意識した心憎い配慮がなされて
います。

考証も以前のモデルと比べて非常に忠実で、最上の特色であ
る艦橋窓前面の遮風板や航空作業甲板の側面にある左右非対
称にオフセットした25mm三連装機銃座も再現された素晴らし
いものです。

今回はこのキットをベースに、トムズモデルワークス、ジ
ョーワールド、ゴールドメダルモデルズのエッチングパー
ツとピットロードの日本艦船装備セットのディティールア
ップ用インジェクションパーツ、空中線用に0、6号の精密
テグスと支柱を自作する真鍮線などを使ってディティール
アップを施しました。


↑マストへ上る梯子や艦橋背面の手摺、開口された煙突など

船体の舷窓を全てピンバイスで開口し、モールドのメリハ

リを強調したほか、手摺の再現にはトムズモデルワークス
のエッチングパーツを使用しています。船体の前部には通
常の2段式の手摺パーツを使用し、航空作業甲板は1段式の
ものを使用することで前後で仕組みのことなるギ装の変化
をつけています。

カタパルトとジブクレーンもトムズモデルワークスのエッ
チングパーツを組み立ててトラス構造とし、立体感のある
仕上がりとしました。

電探は前部マストの二十一号電波探信儀、後部マストの十
三号電波探信儀ともに、社外品を使用しています。前部の
二十一号はジョーワールドの電探のパーツから大きさの
合うパーツを使用し、後部マストの十三号はキットでは
再現されていないため、ピットロードの日本艦艇装備セッ
トのパーツを取りつけました。


甲板どうしや甲板と艦橋を繋ぐタラップはゴールドメダル
モデルズのパーツを使用しました。特に艦橋や煙突周り
は乗組員がそれを使用して移動したであろう場所を想定
してその多くを再現しています。

内火艇やカッターの塗り分けは資料に基づいて行い、2基
のカッター(ボート)にはハセガワの純正エッチングパー
ツ戦艦伊勢、日向用から流用したオールも搭載しています。


↑艦橋の背面、無数のタラップが確認できます。また前部主
砲甲板から上に上がる第三砲塔側面にもタラップをつけて
います。

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0,128mm)を着
色して使用しました。取りつけは全て瞬間接着剤によるもの
です。

着色してはいますが、もともとは極細のテグスですので糸のよ
うにメンテナンスの心配はいりません。


↑空中線の様子。一緒にエッチングパーツに置き変えたジブ
クレーン、カタパルト、そして艦載機のプロペラなどもご確
認頂けます。艦載機は零式観測機および零式三座水上偵察
を搭載し、の塗装にはGSIクレオスの三菱系日本軍機の専用色
を塗装しました。

塗装は外舷色が航空巡洋艦への改装が行なわれた佐世保海軍
工廠に合わせて、GSIクレオスの艦艇用塗料から『SC02佐世保
海軍工廠標準色』を使用しています。

甲板のリノリウム色の再現にはピットロード艦船カラーの
『11リノリウム』を使用しました。船底はGSIクレオス
Mr.Colorの『29艦底色』で、外舷色、甲板色、船底色など
はすべてエアブラシによる重ね塗りを3回施してあります。

また、船体やパーツの本塗装の前には塗装後の塗膜の発色
を良くするために、ホワイトサーフェーサーで下地を作っ
た白たちあげにて塗装しています。

ほとんどの塗装に塗膜の丈夫なラッカー系塗料を使用しま
したが、菊花紋章やライトレンズ、機銃の銃身などはいつ
もどおり金属色の表現に適したタミヤのエナメル塗料を
使用しています。

また、主砲の測距窓や高角砲、機銃シールド、艦橋の窓な
どはスミ入れをしてモールドのメリハリを強調し、最期の
仕上げに船体全体に艶消しコートを施して質感を統一してま
とめました。


船首部分のクローズアップ。主砲や手摺、タラップなど、
主砲はポリキャップ使用により左右にスムーズに旋回可能です。


右舷からみた船体中央部。機銃のパーツは全てピットロー
ド日本艦船装備セットの2ピース構造の3連装機銃を使用
して細い銃身と銃座を立体的に表現しています。


航空巡洋艦最上の最大の特徴である航空作業甲板の様子。
艦載機を満載した状態です。機首にはエッチングパーツで
再現したプロペラなども付属します。


**総括**

今回の最上はタミヤの最新キットということで期待してと
りかかったのですが、そのでき映えは想像をはるかにこえ
るものでした。パーツどおしの精度は最近のガンプラにも
まけないハイレベルなもので左右分割船体と甲板の部品が
ほとんどスキマもなくピッタリとはまり、合計で35本もあ
る航空作業甲板の支柱がすべて何の修正もなしに甲板裏面
に接触し、スチロール接着剤だけで実用強度に耐える接着
強度を見せたことは本当に腰を抜かしそうになりました。(笑)

リニューアル前のキットの中で考証面で問題にされていた
部分はほぼ全て解決し、ボックスアートも船体後部から誇
らしげに描かれています。

と、いうのもこのキットのリニューアル前のキットのボッ
クスアートには逸話がありまして、キットがリリースされた
直後は現在のキットとおなじ用に後から描かれた絵が掲載
されていたのですが、キットの考証の不備が指摘され、急
いで艦首から描いたボックスアートに変更されたというも
のです。今回はより正しい航空作業甲板を再現したとあっ
て、タミヤも堂々をこの絵を掲載できたことでしょう。

ちなみにこの最上を製作しおわった時、これまでモデラー
をやっていてはじめて『架空艦』の製作を依頼されました。

平賀造船大佐の設計によって5000トン級→3000トン級に仕
様を改めて完成した巡洋艦の完成以前の5000トン型完成プ
ランを立体化してほしいとのことです。(造船史に詳しい方
ならどの艦のことかお分かりになることでしょう)

そして3000トン型の平賀案の昭和初期状態(おそらくタミ
ヤキット改造になるでしょう)と架空艦とを並べて両プラン
による積載装備の差を比較するという企画です。キットの
年代を変更することは今までもやってきたことですが、架空
艦ははじめてなのでとても楽しみにしています。





SCALE MODELSに戻る


左側にメニューページが表示されない場合はここをクリック

艦船模型製作代行 モデルファクトリー ハイギヤードはこちら

スケールモデル完成品販売ネットショップ CHERRY&ANCHORはこちら

■管理人オススメ!本格海戦ゲームアプリ「蒼焔の艦隊」■


↑Android版のダウンロードはこちら↑

↑iOS版のダウンロードはこちら↑

フル3Dで作成された艦艇で迫力の大海戦を勝ち抜いていくゲーム。無料にて配信中!(一部有料アイテムあり)






inserted by FC2 system