1/500スケール 航空母艦 瑞鶴 南太平洋海戦時
NICHIMO製インジェクションキット













ニチモ 1/500

今回のギャラリーは当サイトでも比較的製作例の多い航空母艦瑞鶴で、2004年
9月に製作したものです。

年代はキットの設定年代であるエンガノ沖海戦時ではなく、長い戦歴の中でも
実に華々しい活躍を見せた南太平洋海戦時を設定し、第二次攻撃隊の発艦
準備中のシーンを想定した艦上機の配置としました。

瑞鶴の作例は開戦時やエンガノ沖海戦時が多いので、南太平洋海戦時の作例
は比較的珍しいのではないかと思いますので、ニチモやタミヤのキットを使用
して、当時の瑞鶴に改造する時などのお役に立てば幸いです。

南太平洋海戦時の瑞鶴の特徴として、艦橋前後と船首船尾の機銃増備、当時
の飛行甲板標示の塗装再現などを施しました。

***実艦について***

航空母艦は瑞鶴は姉妹艦の翔鶴が大戦中、常に被害担任艦であったことに反
して、日本海軍屈指の武運艦として有名で、数々の大海戦に参加するも、ほとん
ど損傷を被ることがなかったことでよく知られています。

航空母艦瑞鶴は翔鶴型空母の2番艦として計画され、これまでに建造された大
型空母赤城、加賀、中型空母の蒼龍、飛龍、小型空母の鳳翔や龍驤によって空
母設計の技術的問題を解決していた日本海軍は、総力をあげてこの瑞鶴建造に
着手し、昭和14年11月27日に進水し、16年9月25日に待望の正規空母として竣工
しました。

開戦時、瑞鶴は真珠湾攻撃部隊の主力艦の1艦として作戦に参加し、58機の攻
撃隊をハワイに向けて出撃させました。 その際、瑞鶴飛行隊は未帰還機ゼロとい
うすばらしい活躍をし、栄光の初陣を飾りました。

その後はラバウル攻略戦を支援し、機動部隊と合同でインド洋作戦に参加。史上
初の空母対空母の激戦となった珊瑚海海戦では姉妹艦翔鶴が米攻撃隊の攻撃
によって大損害を被るも、瑞鶴はスコールに隠れて巧みに敵機の攻撃を避け、米
空母レキシントンを撃沈、ヨークタウンを大破させる戦果をあげました。

ミッドウェーでの機動部隊の敗戦の後は、南東方面に進出して第二次ソロモン海戦
そして南太平洋海戦に参加して翔鶴、隼鷹と協同で米空母ホーネットを撃沈して東
京空襲の仇をうち、エンタープライズを大破させる戦果をあげました。 

(今回の瑞鶴はこの南太平洋海戦時を資料に従いモデル化してあります)

瑞鶴はこの海戦においても被害を受けず、その後に呉で電探追加などの改装
を行ったあと、トラック島に進出しました。この時、瑞鶴飛行隊は「い号作戦」「ろ号作戦」
に参加しました。

昭和19年のマリアナ沖海戦においては空母大鳳の沈没の後、機動部隊旗艦の
任を引き継ぎ、6月20日には艦橋後方に一発の命中弾を受けたものの戦闘航海
に支障はなく、無事に内地に帰港します。

10月17日、捷一号作戦の命令が下り、在泊中の機動部隊はレイテに向かって出
航しました。この艦隊はハルゼー提督率いるレイテ湾のアメリカ機動部隊を北方に
誘致し、栗田提督が率いる戦艦大和、武蔵を中心戦力とした戦艦部隊をレイテ湾
に突入させるための囮艦隊で、瑞鶴以外に瑞鳳、千歳、千代田の4空母、伊勢、日向
の2航空戦艦を中心とするまさに生還を期さない決死の部隊といえるものでした。

10月25日早朝、瑞鶴はゼロ戦以外の爆装戦闘機5機、天山艦上攻撃機4機、彗星
艦上爆撃機1機の残存航空兵力をクラーク基地に移動し、残った直衛戦闘機のみで
米攻撃隊を迎撃しました。

第一波の攻撃では右舷後部に魚雷を受け、操舵不能に陥り第二派攻撃では通
信施設が破壊されて旗艦を軽巡大淀に移し、第三派の攻撃では3本の魚雷を両
舷に受け、2時24分3年にわたって歴戦を重ねてきた武運艦瑞鶴も遂に力尽き、
フィリピン沖にて最期を遂げました。 

この戦いの様子は艦船ファンにはおなじみの映画『連合艦隊』でも描かれている
ので、同艦の活躍をご存知の方も多いと思います。

***キット、組みたて、ディティールアップについて***

今回は洋上モデルではなく、Nichimoのフルハルキットをベースに船底までを
モデリングした状態で完成させました。

Nichimoの1/500空母瑞鶴のキットは同シリーズの翔鶴のキットと同じく、翔鶴型のプラキ
ットとしては現在最大のもので、飛行甲板には伸縮継手はもちろん、飛行機係
止用眼環までがモールドされたシャープな仕上がりのもので、舷外通路の各ス
ポンソン支柱も個別のパーツとして再現されていて実感的に作られています。


全長はおよそ50cm程のサイズのもので、このキットをベースに、船体の構造を実感
的に見せるために鋼板の重なりモールドや艦橋遮風柵や転落防止ネットなどのパ
ーツを自作にて追加再現したほか、ゴールドメダルモデルズの稀少な1/500空母用
エッチングパーツや小西製作所の1/500艦船模型用精密真鍮製鋳造パーツ、真
鍮線による空中線支柱の自作、他キットインジェクションパーツの流用やテグスに
よる空中線再現など、手間と予算と時間をかけ、じっくりディティールアップしました。

キット状態の設定年代はエンガノ沖海戦時になりますが、上記のとおり、南太平洋
海戦時の状態に改造して製作しました。



側面のディティール1 右舷前部


側面のディティール2 右舷後部 


側面のディティール3 左舷前部


側面のディティール4 左舷後部 


***船体まわりの各部ディティールアップ***

まず、バリとパーティングラインの目立つ船体をサンディングしたあと軽くサフを吹
いて表面を整え、鋼板継ぎ目の再現のために等間隔に切り出したマスキングテー
プを貼り付けたあとにもう一度サフを吹き、マスキング面とのサフの段差を作りました。


↑少し分かりにくいですが、左舷前方の舷側鋼板継ぎ目の様子です。

今回も横方向の鋼板継ぎ目だけでなく、縦の継ぎ目も追加するため作業を複
数回にわたって繰り返しました。


製作中のカット。サフの階層で鋼板継ぎ目を作っていく様子です。

続いて側面の舷窓をすべてピンバイスでさらいなおしてモールドのめりはりを強調し
て船体の下地を完成させました。



煙突は開口し、真鍮線で出口フィンを自作しました。

船首のディティールアップですが、省略されている船首ムアリングパイプを開口し、ハ
トメを打ち込んで再現しました。 側面の吃水ゲージはデカールによる再現で、船首錨
甲板上の錨鎖にも精密チェーンを使用し、立体的に再現しました。


船首ムアリングパイプや吃水ゲージなどの様子(クリックで画像表示)

船尾はスクリュープロペラに金属パーツを使用しました。もちろん、右用と左用を4軸使
い分けてあります。


金属パーツ化したスクリュープロペラ

手摺、タラップなどの精密パーツ類はゴールドメダルモデルスの1/500日本空母用
のパーツを中心として、小西製作所のエッチングパーツなどを使用し、舷側の乗員
が歩く部分に取り付けました。

船体は攻撃隊発艦準備中の姿を想定した設定ですが、カッターは模型映えを考え
て舷側に出した状態としました。 カッター艤装は真鍮線とタラップ用のエッチングパ
ーツを使用した自作のもので、クライプバンドも自作してとりつけました。


左舷舷側のディティール、手摺タラップやカッターなどの様子


***発動機調整所試運転甲板***

発動機調整所試運転甲板には、試運転に備えるプロペラ付きのエンジンを配置しました。

星型シリンダーのエンジンは1/700スケールのカウリングを流用しもので、整備中のエ
ンジンを想定して2基並べてみました。


↑発動機調整所試運転甲板の様子。整備中のエンジンを2基
配置してみました。上部の飛行甲板脇には着艦指導灯も再現し
ました。


***対空兵装のディティールアップ***

瑞鶴のこの時代の対空兵装は主に高角砲と機銃の2種類ですが、すべての高角砲
スポンソンには射界制限枠を真鍮線を使って自作して追加しました

また、シールドなしの高角砲は、小西製作所製の精密真鍮鋳造パーツを使用しまし
た。 このパーツは観測室シャッターや背面の出入り口も再現された精密なもので、
キットに付属のものより実感的です。

機銃は全てピットロード製を流用しました。1/700の若干オーバースケールですので
1/500でちょうどいい大きさになりました。


右舷前方、1郡高角砲1番と3番の様子


左舷前方、2郡高角砲2番と4番の様子


右舷後方、3郡高角砲煤煙除覆付5番と7番の様子


左舷後方、4郡高角砲6番と8番の様子


***艦橋、マストなどのディティールアップ***

艦橋は南太平洋海戦時に装着されていたと思われる遮風板をプラ材で自作し、艦橋窓の
上下に取り付けました。 艦橋頂部は当時施されていたと思われる白塗装を施しました。

方位測定器や信号探照灯はWLシリーズのリニューアルパーツから流用してあります。

また。窓枠を開口し、ジョーワールドの窓枠エッチングパーツで窓枠を再現しました。その他、
無線アンテナと空中線支柱は真鍮線で自作しました。 側面の黒板もプラ材で自作したも
のです。


艦橋を右上から見た様子


艦橋を右後から見た様子

艦橋後ろのマストも省略されている背面トラスも真鍮線で追加しました。

起倒式マストはトラス部分のみにゴールドエダルモデルズの1/500空母用エッチングパー
ツを使用し、起倒機構はキットのパーツを切り取って使用しました。


***飛行甲板のディティールアップ***

今回は今回はエレベーターにもサフの階層を利用して鋼板継ぎ目モールドを付け足しました。

着艦標示や白線などは発色と耐久性を考慮してデカールは使わず、すべてマスキングして
エアブラシ塗装で再現しました。 艦名標示や風向き標示、伸縮継ぎ手やワイヤー以外に
高角砲の指向注意標示なども書き入れました。

また、着艦標識周りや煙突上部にある赤と緑の灯火も書き入れました。


飛行甲板中央部および艦上機の様子

遮風柵は汎用メッシュエッチングパーツを使用し、立てた状態を再現し、支柱は真鍮線で自
作しました。 


立てた状態で再現した遮風柵の様子。高角砲指向注意表示なども


***救助ネットの自作***

船首と船尾の人員救助網および船体中央部の飛行機救助網は2種類の大きさの客船用の
フェンスエッチングパーツと真鍮線を使って自作したものを取り付けました。 実感をだすた
めに網を少し弛ませた状態で資料を参考に場所を選んで取り付けました。


船首飛行甲板。人員救助網および艦名標示等の様子


↑飛行甲板中央部。飛行機救助網および着艦標示。エレ
ベーター上に施した鋼板継ぎ目モールドなどの様子。


***着艦指導灯の再現***

キットで省略されている船尾付近にある着艦指導灯は、ジョーワールドのエッチングパーツ
を流用し、塗装して取り付けました。


左舷側船尾着艦指導灯の様子


***空中線について***

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0、128mm)を着色して使用しまし
た。取りつけは全て瞬間接着剤によるものです。空中線支柱は一部真鍮線で
自作しました。


***塗装について***

塗装はスケール性を考慮した上で船体やパーツの本塗装の前には塗装後の塗
膜の発色を良くするために、船体外舷色部分にはホワイトサーフェーサーで下地
を作り、船体加工のところで前述させていただきましたように鋼板継ぎ目のモールドを追加。

木甲板部分には白下地のあとに黄燈色の下地を吹いて黄下地を作って使い分けました。

船体色の再現にはエアブラシを使い、白下地の上からGSIクレオスの32番を吹き
つけました。

木甲板色の再現には黄下地の上に、今回はタミヤスプレーの甲板色を
ベースに吹き付けた後、クリアーイエローをコートして更に甲板色、さらに再びクリア
ーイエローと、薄く塗り重ねていくことで色調を立体的に表現しました。

飛行甲板の表示は艦名標示、風向き表示、船尾着艦標示も含めて全てマスキン
グによる吹きつけ塗装で仕上げました。デカール再現と異なり、耐久性なども心配
ございません。


***艦上機について***

艦上機は南太平洋海戦での第二次攻撃隊発艦準備中の情景を再現しました。

戦闘機は重見飛曹長指揮の制空隊の零式艦上戦闘機4機と二次瑞鶴隊指揮官
今宿大尉の率いる九七式艦上攻撃機16機のうち、12機が飛行甲板上に上げられ、
準備をしているという情景です。 発艦準備中ということで、後部エレベーターは
少し落とし込んだ状態としました。

艦攻の機数の再現は13機ですが、残り3機を並べるスペースを空けたレイアウトで
す。キットに付属の艦攻は6機なので、艦上機のバラ売りのないニチモのキットで
13機もの艦攻を搭載した完成品は珍しいかもしれません。


飛行甲板上の零式艦上戦闘機


飛行甲板上の九七艦攻

零戦、艦攻ともに、日の丸表記などの再現にはデカールは一切使わず塗装で再
現し、ゴールドメダルのエッチングパーツでプロペラを再現しました。 また、瑞鶴
飛行隊所属機を示す2本の白いラインを書き入れました。

艦攻の塗装は暗緑色のものと茶色を混ぜた迷彩色のものと2種類を用意しました。

最後尾の艦攻は垂直尾翼を赤く塗装し、隊長機のカラーとしました。前方の6機
には魚雷を装備させてあります。零戦は全機背面に増槽を取り付けました。


***台座について***

台座はキットのプラ製のものは使わずに、今回はタイコびきのえんじゅ材を加工し
て自作しました。

全体をサンディングしたあとにニスを吹き付け、乾燥しては磨き、乾燥しては磨きの
作業をくりかえして最後には艶を消し、表面を滑らかに仕上げられたと思います。

また、船体を固定する台座は小西製作所のブラス製のもので、ネジ固定で安定
させてあります。




**総括**

今回はキットでのリリースがされていない瑞鶴南太平洋海戦時の姿を再現するために
必要な小改造を紹介しました。 これで開戦時から最終時までの武運溢れる瑞鶴の姿
のほとんどを1/500で再現したことになりますが、このニチモの1/500キットは基本設計
がとてもよく、若干の組みにくさはあるものの、ディティールや考証を考えながら仕上げ
るには、1/700以上に向いているところがあると思います。

1/500瑞鶴はこのあとにも2004年中にもう一度手がけてますが、その後の近い将来に再
びこの1/500瑞鶴にまた取り組みたいと考えています。

1/500航空母艦は面倒な部分も多いですが、完成したさいの達成感は他のどのスケール
キットにも負けない魅力的なものですのでぜひ多くの方に挑戦して頂きたいです。





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