1/700スケール 重巡洋艦 三隈
TAMIYA製インジェクションキット













田宮模型 1/700

最近、巡洋艦が増えたギャラリーになってきましたが、今回は航空巡
洋艦最上に引き続いて、姉妹艦で航空巡洋艦に改装される前に最期を
遂げてしまった、最上型重巡洋艦の三隈です。


重巡洋艦三隈(みくま)は4艦が建造された最上型巡洋艦のなかで、ネ
ームシップの最上の次にあたる昭和10年8月に15、5cm3連装方5基を
備える軽巡洋艦として竣工、後に主砲を20、3cm連装砲に換装し、重巡
洋艦として生まれ変わりました。

艦容ではフレアーのついた艦首や独特な誘導煙突など最上型特有のス
タイルを備えながら、最上とは艦橋構造物や後部マストなど細部で微
妙な違いがみられました。

重巡洋艦として太平洋戦争開戦を迎えた三隈は、姉妹艦3隻と第七戦隊
を編成し、マレー上陸戦やバタビア沖海戦などの緒戦で活躍しました。

しかし昭和17年6月のミッドウェー海戦において、米潜水艦の攻撃を避
けるための夜間一斉回頭中に後続する姉妹艦最上と衝突し、損害を受
けたところに米艦載機の波状攻撃によって大破炎上し、最後を遂げまし
た。



ベースにしたキットは最上と同様にTAMIYAから昨年の下旬にリリースさ
れたばかりのもので、静岡の有名模型会社3社協同開発の国内艦船模型の
最大のブランド、ウォーターラインシリーズの最新作のひとつです。

ウォーターラインシリーズの中でもトップの技術を持つタミヤが開発を
担当しただけあって、この三隈(最上型)のキットは船体を左右分割方
式にすることで舷側のディティールが一体成形式の船体より詳細に再現
され、船体側面内部にある魚雷発射管の形状も実物どおり、立体的に再
現され、完成するとほとんど見えなくなる予備の発射管まで再現されて
います。今回はこの特徴を利用して、この魚雷発射管を半分減速からは
みだす形で固定し、魚雷装備の存在感をアピールしました。


↑舷側に向けて多少オフセットした魚雷発射管とカタパルト。

上甲板は航巡時代をモデル化している最上のキットとは区別され、リノ
リウムを残した状態とし(最上もボイラーの熱対策のために最後まで残
してあったという説もありますが)、艦橋内部にもちゃんとグレーチン
グのモールドが施されていたり、第一、第二砲塔の仰角を微妙に変えて
あるなどの模型映えを意識した心憎い配慮がなされています。


↑WAVEのアクリルディスプレイケースに納めた図。モデルの大きさは
全長約27cm、ケースの長さは36cmです。

今回はこのキットをベースに、ジョーワールド、トムズモデルワークス、
ゴールドメダルモデルズなどのエッチングパーツとピットロードの日本
艦船装備セットのディティールアップ用インジェクションパーツ、空中
線用に0、6号の精密テグスと旗竿支柱を自作するための真鍮線、そして
舷外消磁電路と汚水捨管を再現するためのエバーグリーン製プラ材など
を使って徹底的にディティールアップを施しました。

船体の舷窓を全てピンバイスで開口してモールドのメリハリを強調し、
舷側の省略されているディティールを作りなおしました。

まず、舷外消磁電路ですが、これはボックスアートをもとにエバーグリ
ーン製の太さ0、5ミリのプラ材を貼り付けて表現しました。艦の中央部
手前で一旦下に下がる形で向きを変えている電路も再現しています。

汚水捨管もパッケージを元に、同じくエバーグリーン製の0、75ミリの
角材を貼りつけました。電路と交わるところは一旦切断して繋げてあ
ります。


↑モールドを追加して再現した舷外消磁電路と汚水捨管の様子。舷側の
舷窓も全て開口し、艦橋窓はエッチングパーツで窓枠を再現しています。

船首のアンカーチェーンはいつもどおりアイコムのホビーチェーンを黒
染液剤でブルーイングしたものをとりつけて本物の鎖をつかった質感を
だしました。


↑艦橋から前甲板を望む。主砲と錨鎖などの様子です。

また、舷窓だけでなく構造物周りの省略された窓もピンバイス加工によ
って多数再現しています。

今回は構造物やギ装品のディティールアップも積極的に行いました。船
体甲板にモールドされているパラベーンは全て削りとり、ピットロード
の日本艦船装備セットに含まれるディティールアップ用パーツにすべて
置き換え、半円柱状にモールドされたホーサーリールも実感にかけるた
め、同様にモールドを削り取った上でピットロードのディティールアッ
プパーツに交換しました。

艦橋周りは移動用タラップを多数再現し、艦橋窓のモールドは切削成形
した上で、ジョーワールドのエッチングパーツ『製密窓枠』から大きさ
のあうSUSステンレス製のエッチングパーツを選んで貼りつけ、艦橋の
窓枠を再現しています。艦橋周りはミッドウェー海戦前ということで、
遮風柵のない時代をモデリングしています。

艦橋や煙突周りに装備される25mm連装機銃はピットロードの日本艦船
装備セットから2ps構造のディティールアップパーツを使用し、立体感
のある仕上がりとしました。大戦前期ということですので、今回は考証
にしたがって防盾等は取りつけていません。


↑艦橋周りのディティールアップ。探照灯トラスやマストにかけられた
梯子などもエッチグパーツで再現しました。また、画像では分かりにく
いですが、探照灯トラスの奥に円材置き場があります。最初の3枚目の画
像を見れば分かりやすいでしょう。煙突は開口されています。


↑中央構造物を間横から見た様子。

カタパルトとデリッククレーンはジョーワールドの最上、三隈用エッチ
ングパーツを組み立ててトラス構造とし、立体感のある仕上がりとしま
した。同じく探照灯トラス、キットでは再現されていないトラス横の円
材置き場もジョーワールドのエッチングで極めて精密に再現してあります。


↑航空作業甲板。零式観測機は迷彩塗装、プロペラはエッチ
ングパーツ使用による再現です。

ちなみにデリッククレーンは最上用と三隈用が区別されているので、も
ちろん三隈専用のものを選んで取りつけています。

手摺のパーツは、ジョーワールドのものには付属していないため、主に
トムズモデルワークスの2段手摺エッチングパーツを使用しています。

そして甲板どうしや甲板と艦橋を繋ぐタラップはゴールドメダルモデル
ズのパーツを使用しました。特に艦橋や煙突周りは乗組員がそれを使用
して移動したであろう場所を想定してその多くを再現しています。

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0,128mm)を着色して使用
しました。取りつけは全て瞬間接着剤によるものです。

この空中線は着色してはいますが、もともとは極細のテグスですので糸
のようにメンテナンスの心配がいりません。縦に走っている空中線の一
部に白く見える部分がありますが、これはガイシを塗装によって再現し
ているものです。


後部主砲群。

塗装は外舷色にGSIクレオスMrカラーの32番をエアブラシで吹きつけま
した。

甲板のリノリウム色の再現にはピットロード艦船カラーの『11リノリウ
ム』を使用し、こちらも専用色として実艦のイメージそのままに塗装
しました。船底はGSIクレオスMr.Colorの『29艦底色』で、外舷色、甲
板色、船底色などはすべてエアブラシによる重ね塗りを3回施してあり
ます。

また、船体やパーツの本塗装の前には塗装後の塗膜の発色を良くするた
めに、ホワイトサーフェーサーで下地を作った白たちあげにて塗装して
います。

上記のように、ほとんどの塗装に塗膜の丈夫なラッカー系塗料を使用
しましたが、菊花紋章やライトレンズ、機銃の銃身などは金属色の表
現に適したタミヤのエナメル塗料を使用しています。

また、主砲の測距窓や高角砲、機銃シールドなどはスミ入れをしてモー
ルドのメリハリを強調し、最期の仕上げに船体全体に艶消しコートを
施して質感を統一してまとめました。



**総括**

航空巡洋艦最上を製作した時、キットの仕上がりの素晴らしさに感動
しましたが、今回はその素材の良さを生かして更にディティールアッ
プを進めようと、舷側のディティールを前回以上に作りこんでみまし
た。船体のパーツが左右分割にされているため、電路を船首と船尾で
綺麗に揃えるのに苦労するかと思いましたが、意外にこれはズムーズ
に行きました。

前回の最上は汎用エッチングパーツや他艦種用のパーツを流用したデ
ィティールアップを行ったのですが、今回はジョーワールドの専用品
を使用して、手摺以外のエッチング使用ディティールはほとんど完全
なカタチで再現されたと思います。

同じ構成のキットでも、2回以上組み立てて見るといろんな部分が見
えてきました。この最上型のキットははじめて製作したときも感動の
嵐でしたが、今回もう一度製作してみて何より感じたのは、パーツ構
成の素晴らしさです。

繊細なモールドや完璧な精度はもはやタミヤスタンダードという基準
では常識になっていますが、魚雷発射管甲板の再現や、完成したら見
えなくなってしまう誘導煙突基部や艦橋内部の表現など、タミヤは模
型を作ることによって、製作者に実艦の仕組みや構造についても教え
てくれるメーカーなんだとつくづく実感しました。

これは、ただ実物の外観だけをを縮小したパズルではなく、実際の艦
の仕組みを知る研究材料とまで言っても過言ではないかもしれませんね。

近日中に同じく最上型重巡の鈴谷がリリース予定ですが、こちらの製
作も近々検討したいです。





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