戦艦 大和
タミヤ 1/350 徹底ディティールアップ決定版






↑大艦巨砲主義の象徴とも言える大和で皮肉にも最も活躍した機銃について。今回はシールドなしのものを紹介します。


1/350戦艦大和 九六式 25mm三連装機銃 シールドなし

天一号作戦に向かう戦艦大和に多数装備された、九六式25mm三連装機銃。前回は
シールドについて紹介しましたが、今回は機銃本体について紹介していきます。

この機銃(その口径から、正式には機関砲と呼ばれますが、ここでは一般的な呼称の
機銃と表記します)は、フランスのホッチキス社製の連装機銃の製造権を買い取り、
1935年より横須賀造兵部にてライセンス生産を開始しました。

それまで使用されていたイギリスのヴィッカース社製の機銃と比べて故障が少なく、三連
装や単装などの各バリエーションが、日本海軍艦艇に数多く装備されました。 

最大射程距離は意外に(?)長く、仰角50度にて7500mとなってますが、有効射程とな
ると、3500m付近。発射速度は初速が毎秒900mにて、毎分220発程度発射できました。

15発の銃弾を納めることができる弾倉は4秒ほどで撃ち終わってしまうため、映画「男
たち大和」でも描かれていた様に、1基20kgほどもある弾倉を持ち、次々と弾倉を交換
する装填手が三連装機銃の場合は3名必要で、給薬手3名、旋回手1名、俯仰手1名、
砲台長1名と、合わせて9名の兵員(非管制の場合)で操作しました。

武蔵で射手を務められた渡辺清氏の著作に、機銃による対空戦闘の様子が詳細に
描かれているのですが、露天の機銃を使用しての対空戦闘は誠に過酷なもので、
「男たちの大和」でも非常に生々しい戦闘シーンが描かれてはいましたが、実際の
対空戦闘の凄惨さは、映画の表現とは比べ物にもなりません。 

また、大和から生還された、高本広登氏によれば、実際に弾を撃つ射手よりも、自分で
はどうすることもできない装填手の方が、恐ろしい思いをしていたと語っておられました。


話はメカニカルな部分に戻りまずが、天一号作戦時、大和に塔載された25mm機銃は、
単装のものと三連装のものを含め、合計162門が装備されました。

竣工時の機銃は全てが管制式で、先に紹介した管制機から送られた情報を介して、
旋回、俯仰をモーター駆動で行い、自動的に照準を定めるものでしたが、最終時には
人力で操作を行う非管制式の機銃が増え、また管制式の機銃も数多い敵機に対応
するために、非管制で使用されることが多かったようです。


今回の決定版大和に使用したのは、ライオンロア製の「真実の大和」セットに含まれる
エッチングパーツを組み合わせて作る機銃です。

精密感においては、過去最高のパーツと言えるものですが、板状のエッチングパーツ
を組み立てて形にしていくものだけに、銃身が角ばった表現になってしまうところが欠点
といえば、欠点です。 また、シールド付き機銃の銃身とのディティール差が出てしまう
デメリットもあります。

ですので、今回はその他に、キットの機銃に取り付けてディティールアップする、ホワイ
トエンサインのパーツの使用も検討していたのですが、1個試作してみた結果、プラ部と
エッチング部とのディティールの差が激しすぎ、特に側面から見た精密感と、前後から
見た時の大味な雰囲気が好みにあわず、結局使用を見送り、ライオンロア機銃による
再現となりました。


↑1個試作してみた、ホワイトエンサインパーツとキットパーツのコラボ機銃です。前面
ディティールと側面ディティールの差が大きすぎる他、強度も不足しているため、今回
の使用は見送りました。

こうしてライオンロアパーツを使用することに決定したわけですが、オールエッチングパ
ーツのライオンロアの機銃を使うことになったからには、できるかぎり板っぽく見せない
ような作り方をすることがカギです。 

実感的に見せる方法をいろいろ検討した結果、今回は銃鞍および基部を、考証どおり
の船体色として、ガンメタリックの銃身とのメリハリを付けることにしました。 

これまでの作例では、模型映えを優先して基部は銃身より少し明るいメタリック系の色で
塗装(基部が埋まった塊状のパーツの場合は、船体色にするとコントラストが強すぎる
ため)していましたが、ここまで実物に近い形状の機銃なら、実物どおりの塗りわけの方
が実感的に見えると判断し、初めてこの塗りわけを採用しました。


↑まだライオンロア製の機銃を使用したことがない方で、このパーツに興味を盛ってお
られる方も多いのではないかと考え、今回は製作過程を細かく紹介していきます。これ
は製作の過程を描いた説明書のイラストで、このイラストにあるように、合計4枚のエッチ
ングパーツを折り曲げ、組み立てていくことで、機銃の形を作っていきます。 文章な
しに、イラストだけで組み立て過程を説明するのは、ライオンロアパーツの特徴です。


↑まずは機銃身。左側が右砲と左砲を再現するためのパーツで、右側が中砲のパー
ツになります。これらのパーツは、エッチング板から切り出す前に、既に塗装を済ませ
ました。機銃身に使用した塗料はGSIクレオス スーパーメタリクカラーの「スーパーア
イアン」です。この塗料は高価ですが、金属粒子をふんだんに含んでおり、従来のメタ
リックカラー以上にリアルな金属光沢を再現可能で、数ある有名メタリックカラーの中でも
特にオススメのものです。(C62蒸気機関車のロッドを塗装した時以来、気に入って愛用
しています)


↑そしてこちらが銃鞍および基部のパーツです。ペーパークラフトの様に、折り曲げて
立体化していくことで、板パーツから立派な機銃に変身します。


↑まずは中砲の組み立て、左側が切り出した直後の中砲パーツ。これを真ん中で
折り曲げて重なった部分を接着。 厚さが2倍になるので、これで板っぽさを多少ご
まかそうという仕組みのようです。 後部には弾倉が再現され、銃身には、ガスパイプ
をはじめ、ちゃんとヒダ状の放熱板や、ラッパ状の消炎器までもが再現されています。


↑そして、右砲と左砲のパーツを組み立てます。このパーツは、銃架にあたる部分も付属
し、中砲と同じように左右の銃身を折り曲げて重ねて接着し、重ねたパーツを最後に
90度起き上がらせることで、弾倉を起こします。


↑出来上がった中砲を左砲と右砲の中央部分の銃架に接着すれば、銃身の完成
です。このとき、できる限り中心を正確に出し、まだ前後の位置に注意しなくてはい
けないことは、言うまでもありません。


↑これも例によって、数を揃えるのが大変です。 今回の機銃は、1基につき30工程
以上を必要とするため(パーツ切り出しを含めると40工程近く)、朝から晩まで 丸一日
作業しても、必要な数を揃えることができませんでした。


↑続いて、銃鞍の製作にかかります。ここでは5工程必要になりますので、2枚の画像に
わけて紹介します。まず、環型照準器の付いた側面部分を起こし、続いて前後部分も
起こして箱型に組みます。


↑次に、環型照準器を水平に倒して、先ほど作った銃身を取り付けます。

九六式25mm三連装機銃の環型照準器は、銃身に対して垂直にセットしたくなるところ
なのですが、実際の照準器には真円形のものと、楕円形のものがあり、楕円形のものは
銃身に対して垂直に取り付けられていましたが、真円形のものは、俯仰角に関係なく、
水平に保たれる仕組みで作られていました。 

ですので、仰角をつけた時には この照準器は射手の視点からみて楕円形に見えるよ
うに作られており、敵機の速度や距離などのデータを、この楕円形の照準器の中に当
てはめて修正し、攻撃する仕組みになっていたようです。 

模型映えを考えると、照準器は映画のセットでみるような、射角に対して垂直にセット
したくなりますが、今回は塗装も含めて、ライオンロアのパーツをベースに、できる限り
考証面を優先させました。


↑もちろん、これもひとつひとつ丁寧に作業していきます。銃身を差
し込む銃鞍の穴が細いので、銃身を組み立てる作業がいいかげん
だと、このとき非常に苦労することになります。


↑そして、最後が基部の組み立てです。これはパーツを切り出した
状態ですが、俯仰手および旋回手の腰掛をこの段階で先に塗装して
おきました。腰掛の材質は実際には いろんなものがあったかもしれ
ませんが、ここでは木製と考えてブラウンに塗装しています。


↑基部の組み立て過程、その一。これも例によって箱型に組んでいくことからはじめ、
側板と天板を再現します。前面には薬莢受け板を意識したスリットまで再現されて
います。このような繊細な部分は、キットパーツ使用が前提のホワイトエンサインパー
ツでは再現不可能なもので、今回のライオンロア機銃を採用する大きな決め手とな
りました。


↑基部の組み立て過程、その二。ここではペダル、ハンドル、腰掛を折り曲げて再現
していきます。ハンドルはシルエットだけのものですが、このサイズでは充分すぎるほど
の存在感を見せてくれています。


↑こうして出来上がった九六式25mm三連装機銃座の基部。先に塗装しておいた腰掛
のブラウンも、いいアクセントになりました。


↑あとは、このように機銃身と銃鞍を取り付け、無事に機銃完成です。銃鞍と基部は、
耳軸部分を良く合わせて接着。照準器は機銃の仰角に合わせて、改めて基部と水平
になるよう、調子しなおしました。 


↑エッチングパーツの切り出しや、折り曲げの際には多少塗料が剥がれて真鍮の金色
が出てきてしまっているので、これは船体に取り付けるまでに、タッチアップ修正を施し
ておく予定です。こうしてみると、実物同様の塗りわけでもさして違和感がなく、むしろ
実感的に仕上がった機銃に、満足感が沸いてきました。 

次回は、この機銃を載せる機銃座について、一部のものを紹介します。



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