戦艦 大和
タミヤ 1/350 徹底ディティールアップ決定版






副砲は主にエッチングパーツと真鍮砲身でのディティールアップになります。



1/350戦艦大和 副砲塔の組み立てとディティールアップ

大和型戦艦の副砲塔は、「最上型巡洋艦」の軽巡洋艦→重巡洋艦への改装時に取り外された
60口径三年式15、5cm3連装主砲を一部改良し、塔載されたもので、竣工時には煙突左右の
ものも含めて4基が塔載されました。

良く、防御力に欠点があったと言われていますが、艦全体が重装甲で各部を密閉しすぎているた
め、一箇所の被弾による被害を他の部位に拡大させないため、わざと装甲の薄い部分を残した
という説もあります。

竣工時に塔載されていた左右の副砲は、、ミッドウェー海戦の攻略部隊として行動中、左舷の2番
副砲を潜水艦に向けて砲撃(高角砲と共同)した時が実戦での最初の砲撃になりました。

後に左右の副砲塔は撤去されて機銃、高角砲が増備され、これらの副砲に割り当てられていた
弾薬庫は高角砲発令所に、射撃指揮所は予備指揮所に変更されました。


今回製作している大和は、副砲を撤去されて以降の仕様ですので、製作する副砲の数は
前後の2基のみです。


キットの副砲は、各種ラッタルやモンキーラッタルがモールドされ、シルエットだけとはいえ背面扉
まで作られている精密なもので、後付けパーツも少なめで、大和独特の副砲形状を精密に再現
しているものです。

欠点らしき欠点は、上から見ている分には見えないのですが、下からみると意外な欠点が露呈
します。 実は床板がなく、中身が完全にカラッポの状態なんです。


↑これが副砲塔の表と裏。表面のモールドは素晴らしく、79年のキット化とは思えない
シャープさで驚くばかりです。大げさなディティールアップを考えない限りは、これで
充分という精密感を持っています。 しかし、裏面に貼り付ける床板のパーツが用意さ
れていないため、副砲を下から見上げる時(普通の人はそこまでやらないと思います
が・・・)、スキマから砲塔内部が見えてしまうのがなんとも致命的な欠点になります。


↑特殊な金型技術で作られているのか?側板は測距儀に合わせて一部がズレてしまって
います。これは右舷側ですが、こちらは0、5ミリ程度出っ張ってしまっています。


↑そして、左舷側は0、5ミリほどへこんでいます。よって、右舷側は切削して平滑を出し、
左舷側はパテで平滑にならします。


↑そのままではカラッポな砲塔内部が分かってしまう砲塔床面はプラバンとパテで自作しました。
砲身は内側から差し込む仕組みになっていますので、全てを塞ぐわけではなく、基部を取り付け
た状態で、見えるところだけ処理します。


↑これが基部のパーツ。ジャッキステーはライオンロアのエッチングパーツのものを使用しました。
専用設計されているので、寸法は正確なのですが、「のりしろ」にあたる部分が全くないので、位置
決めと接着には慎重に慎重をきす必要がありました。ゼリー状の瞬間接着剤で一部を固定して仮
止めし、流し込みスチロール接着剤で補強、最終的にはサフや塗膜など、全てを補強のために
重ね吹きして安定させました。


↑基部を載せてみたところです。なんとかごまかせました。砲塔前面のパテ埋め
にはパテは使わず、ゼリー状の瞬間接着剤に効果促進剤を吹きかけてパテ代
わりに使用しました。パテのように乾燥を待たなくていいので、作業を急ぐときに
は便利な方法です。


↑続いて、追加ディティールを施す為に、既存のモールドを次々切削していき
ます。これは、背面扉のモールドで、比較的資料に近い形状、大きさに仕上げ
られています。


↑が、このように削り取りました。普段のディティールアップでは、既存のモールド
の上にディティールを追加することも多いのですが、今回は実物に準じた立体感
を重視して、すべてこのような下処理を行いました。


↑前面のラッタルのモールド。モンキーラッタルや、測距儀前面の階段もモールドされるな
ど、タミヤ1/350戦艦大和の副砲パーツの造型は見事なものです。


↑しかし、このモールドにも、立体感重視のために犠牲になってもらいます。モンキーラッタルの
モールドに関しては、そのまま使用するために残しました。1/200ではラッタルパーツを分割して
モンキーラッタルを自作することもあるのですが、1/350ではキットのモールドをそのまま残して
使うようにしました。


↑そしてここで、今回初めて使用するパーツをご紹介します。ホワイトエンサインのエッチン
グパーツの中に含まれているもので、副砲の天蓋のフチにあったことが確認されている放
熱スリットを再現する為のパーツです。大和型戦艦の実物の副砲は、太陽の熱が内部に
伝わりにくいように2重構造になっており、内側は25mmの鋼鉄板で覆われ、外側には薄い
鉄板を貼り付ることで、間にこもった熱をこのスリットから逃がしていました。


↑これまでのディティールアップでは、放熱スリットは書き込むことで再現していたのですが、今
回は初めてこのようなパーツによる再現を試みました。 ホワイトエンサインのパーツの特徴は、
良くも悪くも実物の資料に忠実に作られすぎていることで、古い考証のキットパーツには合わな
いことが多く、修正作業を余儀なくされることも多くなります。ここでも、測距儀後部の形状に違
いがあったため、キットパーツの形状に合うように、一部角度を修正しました。右半分が修正前、
左半分が修正後で、測距儀後部の断面形状の解釈の違いから、このような修正が必要に
なりました。


↑HIGH-GEARed HOBBY WORKS!!の大和作例で、はじめて放熱スリットを立体的に再現
することができました。模型の達人の中には砲塔を掘り込んだり、本当に2重構造で作り直す方も
おられますが、HIGH-GEARedレベルの製作技術の範囲内で、精密な副砲を再現する場合、
こうした精密パーツの供給は非常に有効的です。


↑続いて、背面扉の再現を行うわけですが、各社のエッチングパーツにはここまで大きさ、形状の
違いがあります。左からエデュアルド、ホワイトエンサイン、ライオンロアの、各副砲後部扉パーツ
です。 どれを使うか迷うところですが、昭和16年9月20日の艤装中の写真を見るに、ホワイトエン
サインのものだけが、正確な大きさと形状を再現し、写真にもはっきりと写っている左右対称の筋
交い(?)もモールドしてくれています。艤装中の写真に写っている後部が見える副砲は、左右に
塔載されたものですので、前後に塔載された副砲と前後に塔載された副砲と後部の構造が同じと
は限りませんが、ここでは写真資料に最も近いホワイトエンサインのパーツを使用することに決定しました。


↑これで完璧な後部扉を再現できました。艤装中の写真をお持ちの方は、ぜひ見比べてくださ
い。(笑)実物写真そのものの形状、大きさ、間隔を再現しています。資料に忠実に作りすぎてしま
うホワイトエンサインのこだわりが見え隠れします。(笑) 真ん中に下ろしたラッタルは、CG資料
から採り入れたもので、この考証を採用するにあたり、砲塔上部の手摺形状もアレンジしました。


↑前面にはラッタルを追加。ここまでノリノリで作業を進めてきたのですが、実はここで重大なミスに
気付きました。先にラッタルを取り付けてしまったことで、パテで自作する予定だった、副砲身の
防水キャンバスを取り付けられなくなってしまいました。後付けパーツでもあれば、差し込めば
良いだけなのですが、パテ成型となると、ラッタルがジャマでとてもではないですが、まともな作業
はできません。

艦橋の時には綿密に計画を立てて製作を進めていったにも関わらず、副砲は多少無計画に進
めていたところがあって、ここまで来て初めて失敗といえるまともな失敗が発生してしまいました。

後から考えれば、この時点でやり直すこともできたのですが、この時はなぜか妙に諦めが早く、結局
防水キャンバスを取り付けない「男たちの大和」仕様(笑)で作ることになってしまいました。 

普段、必ず行っている防水キャンバスの表現を、決定版でできないというのは、なんとも寂しいもの
ですが、これはこれでメカニカルな雰囲気がでるかもしれないし、まぁいいか・・・という心境です。


↑気を取り直して手摺の取り付けを行います。これはゴールドメダルのエッチングパーツを、
解説書どおりに折り曲げた状態の画像ですが、今回は後部にラッタルを追加した関係で、
多少の加工を行いました。


↑ラッタルに通じる部分にスキマを作るため、ふたつに分断しました。とはいえ、中心部
には柱が1本しかないため、分断してそのまま使おうとすると、片側のみ柱がない手摺に
なってしまいますので、手摺のパーツは副砲4基分を使用し、柱を残して分断した片側の
みを4セット使用しました。 幸いにも、ゴールドメダルのパーツには、竣工時への改造を行うユ
ーザーを気遣ってか?4基分の副砲用パーツが含まれるので、助かりました。


↑手摺取り付け完了。エッチングパーツを使い始めた頃は、まだこうしたパーツの扱い
に慣れず、特に1/350戦艦大和の副砲上手摺を初めて取り付けた時には、変に曲がり
すぎたりして、本当に苦労したことを思い出します。5年半でここまで使いこなせるように
なった事には、まだ未熟者ながら ある程度の充実感を覚えています。


↑手摺取り付け後。今度は前面からの画像です。側面のラッタルも取り付け、次はジ
ャッキステーの取り付けに備えます。こうしてみると、本当にラッタルの多い砲ですね。


↑そしてジャッキステー取り付け。これはライオンロアのエッチングパーツで、必要な寸法に切
り出して接着しました。取り付け位置は、大和ミュージアムの1/10戦艦大和を参考にしました。


↑続いて、いよいよ砲身の取り付けです。今回の製作記の中で初めて真鍮挽き物製砲身の登場
です。左上からキットパーツ、ライオンロアパーツ、新撰組パーツを比較した画像です。ライオン
ロア、新撰組ともに、砲口付近のテーパーを再現していますが、今回は段付きをメリハリある再
現としている新撰組のパーツを使用しました。


↑新撰組のパーツには、このようなものも含まれています。砲身の仰角の位置決めに便
利な基部のパーツで、穴あけも済ませてあります。 今回は防水キャンバスを再現する
ことができなかったため、心ならずもこの精度の高い砲身基部が露出することになって
しまいました。この基部パーツが「ボクを隠さないで〜」と呪いをかけてきたのかもしれま
せん(笑)。



↑基部に砲身を差し込んだ図。わざわざ撮影する内容でもないのですが、あまりに美しいの
でつい撮影してしまいました。(笑) キットパーツとの比較です。 本当に精度が高く、こうした
基部パーツまで用意している所などを見るに、製作側は真鍮挽き物パーツの製造に相当な
自信があることとお見受けします。主砲身もこの後、新撰組製を使用するのですが、主砲身
では副砲身以上に更なる技術力の高さを思い知らされることになります。


↑今回は上記理由により、砲身に防水キャンバスは取り付けませんが、キャンバ
スガードは取り付けます。 左側がゴールドメダルパーツ、右側がエデュアルドパーツ
で、両パーツの形状はかなり違いがあります。なお、画像には映っていないのですが、
ライオンロアのパーツは、ゴールドメダル形状、ホワイトエンサインのパーツはエデュアル
ドの形状に似ています。今回はゴールドメダル製を使用しました。


↑キャンバスガードの取りつけ完了。こうしてみると、副砲も随分工数が多くなりました。工数だ
けなら、恐らく主砲よりも多いと思います。複雑な形状をしている副砲だけに、ディティールア
ップのやりがいもありますよね。 これまでの製作では、副砲製作は一番最初に始めていた
のですが、今回はいろいろあったとはいえ、ある程度細かい作業に慣れてからで良かったです。


↑そして前部1番副砲塔後部に、ライオンロア製の足場を取り付けて完成です。この足場は、前部
副砲塔にのみ設定されていたと言われているもので、ライオンロアのパーツは大和ミュージアムの
1/10戦艦大和に準じた形状になっています。左右のラッタルは、バーペッドの位置関係を考え、
後にもうすこし短く作り直しました。 

こうして塗装していない姿をみると、金色のパーツが増え、「キンキラキンな副砲」に仕上がりました。
この製作記を見た、ある車仲間の出戻りモデラーが「神輿でも作ってるみたい」と言ってましたが、
なかなか言いえて妙という気がします。(笑)


↑下面からみた副砲。尾道の実物大ロケセットを見学した際、副砲をバーペッドの下から見上
げてみたのですが、まさしくこのような姿でした。 在りし日の副砲の姿を彷彿とさせます。


坊ノ岬沖海戦では、大和の副砲は敵機来襲の際に三式弾を用意したものの、雲が低かったため
射撃できず、先に撃ち出したのは機銃だったそうです。

機銃の砲煙で視界が悪くなると、発令所は目標補足不能となり、その後に各砲塔独自の判断で
射撃する砲測照準射撃となりました。 

前部一番主砲塔に配属されていた三笠逸男氏によると、水平線上に見えた雷撃機を直接狙って
射撃し、信管は発射から4秒後に爆発するようにセットしていたそうです。

1番副砲塔で十斉射30発ほど撃ったところで、「主砲、副砲は射撃中止」の命令が下り、次に射撃
命令が下りたときには傾斜により砲塔を旋回することができず、射撃を行うことは不可能でした。

そして「総員最上甲板」の命令が出て外に飛び出した時には、既に砲塔基部の甲板まで海水がきて
いるという状態でした。

ちなみに大和が建造された時代、戦艦に副砲を塔載すると言う考え方は、当時の日本海軍独特
のものだったらしく、米英では近距離戦の水雷対策は駆逐艦や巡洋艦に任せると割り切っていた
ため、大和が建造された時と同時代の戦艦には副砲は塔載されませんでした。

最初に記載した防御力の面などからみるに、大和の副砲塔載は はたして正解だったのか?とい
う否定的な意見が数多くありますが、単純に見た目の美しさを考えた場合、吸気口を兼ねた高い
バーペッドの上にそびえる前後の副砲は、大和の美しい艦容を構成するのに、なくてはならない
存在という気がします。

しかし、結果的には後部の副砲弾薬庫の火災は大和の致命傷のひとつでもあり、残念ながらこの
副砲防御力の不足は、不沈戦艦といわれた大和が沈没する要因のひとつになってしまいました。


↑組み立てが終わった副砲は、例によってこのように一旦赤茶色に塗装され・・・。


↑呉海軍工廠色に塗装されます。空中線の三脚支柱は、エッチングを使用すると、
板状になってしまいますので、キットパーツをベースに0、5ミリのプラロッドで補強部
分を追加しました。


↑塗装前のバーペッドに仮置きしてみました。ニチモ1/200と異なり、タミヤ1/350ではバーペ
ッドは甲板パーツと一体成型されているため、バーペッドのディティールアップは後ほど別の
頁にて紹介します。




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