1/700スケール 航空戦艦 伊勢 十八改装後
HASEGAWA製インジェクションキット













ハセガワ 1/700

2002年に十八改装前の純戦艦時代の伊勢を製作し、このギャラリーにも
掲載したのですが、今回はリリースされてまもない航空戦艦改装後の伊
勢のキットを入手、各種考証に合わせたディティールアップと供に掲載
しました。 まずは十八改装前のギャラリーと被る部分がありますが、
実艦の説明です。

戦艦伊勢は大正時代、当時世界最大最強戦艦を目指して
建造が進められていた扶桑型戦艦の3番艦として着工の
予定でしたが、財政事情などから着工が遅れ、そのため
に主砲などの搭載位置を改めて扶桑型の欠点を改善した
形で完成し、大正7年に主力艦として、第一艦隊に編入し
ました。

太平洋戦争前には呉海軍工廠で大幅な近代化の大改装が
行われ、性能外容ともに一新し、同戦時中には日本海軍
初の電波探信儀(レーダー)を装備してテストが実施さ
れ、ミッドウェー海戦等に参加しました。

その後、同型艦日向と供に失われた航空戦力を補充する
目的で第五第六砲塔を撤去し、その上に格納庫と飛行甲
板を備えた世界に例を見ない航空戦艦として生まれ変わ
りました。

航空戦艦というジャンルの戦艦は世界に類を見ない日本
海軍独自の構想によるもので、伊勢は姉妹艦の日向とと
もに、世界で唯一の非常に個性豊かな艦容となりました。

航空戦艦に改装後は、捷1号作戦に参加、その後は呉に繋
留され、昭和20年7月の大空襲にて大破着底するまで本土
の防空任務につきました。

その際、この戦艦伊勢は日本戦艦最後の主砲発射をした
艦としても知られています。



キットは純戦艦時代の伊勢に引き続いて2002年の下旬にハ
セガワからリリースされたもので、現在1/700ウォーター
ラインシリーズにて最新キットの戦艦であり、もちろん最
新の考証に基づいて製作され、リニューアル前一体成形の
船体と異なり、航空作業甲板も含め、大きく分けて実に10
分割された船体パーツで複雑な艦容と一体成形では行えな
い細かな彫刻を再現したキットです。



まず、船体の舷窓は全てピンバイスで開口し、成形の都合
で省略されている副砲跡周りの舷窓もピンバイス加工で多数
再現しました。

また、船体の分割構造の際にどうしても発生してしまう
船首のパーティングラインはパテ埋めにて消してあります。


艦橋窓などはスミ入れでモールドのメリハリを表現しています。

ディティールアップには別売りのハセガワ純正エッチング
パーツからカタパルト、昇降タラップ、階段などを使用し、
手摺や梯子はゴールドメダルモデルズとトムズモデルワーク
スのエッチングパーツを使い分け、機銃や細かな艤装には
ピットロード日本艦船装備装備セットのディティールアップ
用インジェクションパーツ、そして錨鎖にはアイコムの精密
チェーンを使用、マストの一部は真鍮線による自作です。





タラップ、手摺、カタパルト、ジブクレーンなどエッチング
パーツを使用したディティールアップの様子です。

航空戦艦に生まれ変わった際に強化された31機の25mm三連装
機銃のパーツはすべてピットロード日本艦船装備セットの2ピ
ース構造のディティールアップパーツに置き換えて立体的に表
現しました。


艦橋背面、集中した機銃と電探の様子。

艦橋防衛用の密集した機銃の様子。艦橋頂部の2号1型電波探信
義もエッチングパーツによる再現です。

航空作業甲板上および側面の機銃にはジョーワールドの25mm
三連装機銃用防盾のエッチングパーツを使用して、インジェ
クションパーツでは再現できない大戦後期独特の機銃の姿を
再現しています。


防盾付きの機銃。縦横高さがおよそ3m程度のものです。

また、パーツ構成の問題でキットでは2種類のパーツに分け
られてしまっている12、7cm高角砲は静岡模型協同組合のリニ
ューアルパーツの1種類だけにに統一してあります。

航空作業甲板上に設置された25mm単装機銃はピットロードの
艦船装備セットにあるディティールアップ用のもので、移動
式と思われるため、推定した場所に8機セットしました。

船尾の応急舵はジョーワールドのエッチングパーツです。


航空作業甲板の様子。船尾には応急舵を装備しました。

艦載機は水上偵察機 瑞雲および艦上爆撃機 彗星を合計16機
搭載しています。艦載機のプロペラはエッチングパーツで再
現し、エレベーターは下がった状態を再現しています。


艦首の錨鎖はアイコムの精密なホビーチェーンを使用し、本
物の鎖ならではの立体感を再現しました。銅製のこのチェ
ーンを専用の黒染液剤でブルーイングしてあります。


艦首の錨鎖は本物の精密チェーンです。

砲身はKEBEROコーポレーションのディティールアップ用真鍮
製砲身を使用して、プラにはできない新円に近いフォルムと
正確な砲口を再現しました。

砲塔はキット状態で2箇所モールドされている側面のハシゴの
モールドの片側を削り取ってハシゴの場所の違いを再現する
ものです。砲身は真鍮のものを使用しました。


真鍮砲身を使用してディティールアップした主砲

塗装は95パーセントにエアブラシを使用しています。木甲
板色と外舷色に関してはほぼ100パーセントで、甲板上の
細かい構造物などは筆で色刺ししてあります。

また、リノリウム部分および煙突上部、マストの一部の色刺
しなども筆塗りです。

船体は下地処理、白立ち上げの後に船体色を吹き付けて
あります。下地に白を使うことでスケール性に合わせた少
々発色の良い色調に調整してあります。



甲板の塗装は、白立ち上げの後、Mrカラーのタンにサンデ
ィブラウンを少量混ぜたものを全体に吹きつけ、その後ウ
ッドブラウンを溶いたものを薄くコーティング、さらにそ
の後、黄燈色を溶いたものをコーティングし、色を立体的
に現した上で最後に艶消しのクリアーでコーティングして
色調を落ちつかせてあります。

航空作業甲板は、戦後に撮影された写真にある大破口の破
壊の具合からセメント張りの説とし、船体色に灰色9号を混
色した若干明るいグレーで塗装しました。

リノリウム甲板の再現に使用した塗料はは、考証どおりに
調色されたピットロードシップスカラーのリノリウム色です

主に航空作業甲板の下に隠れた純戦艦時代の航空作業甲板
や艦橋の一部に使用しました。

今回の塗装もエアブラシがメインのため、ほとんどの部分
に塗膜の強いラッカー系塗料を使用したのですが、機銃や
菊花紋章など、金属色の再現が求められる部分には、金属
色の再現に適したTAMIYAエナメルカラーを使用しました。

機銃はガンメタル、菊花紋章はチタンゴールドです。 一
部ライトレンズ部分にもエナメルシルバーを使用しています。

塗装の最終仕上には、船体、甲板ともに艶消しクリアコー
ティングを施して質感を統一してあります。 機銃、高角
砲シールドや射撃指揮所の窓はすべてスミ入れを行ってあ
ります。


艦橋側面から



**総括**

今回航空戦艦時代の伊勢のリニューアルキットを製作し
たのですが、これはそれ以前にリリースされた戦艦伊勢
のキットとは全くの別物でした。

と言うのも、リニューアル前の伊勢型戦艦から航空戦艦
への航空作業甲板の追加がわずかばかりのパーツと、それ
を組みつけるだけでボルトオン感覚で簡単に完成したのに
対し、今回の航空戦艦伊勢は、複雑な分割構造とした航
空作業甲板のとりつけの難しさに加え、船体の分割構造
さらには航空作業甲板とりつけのための船体の下地処理
などが必要で(エレベーターを取りつけるために最後尾
砲塔以降の甲板のモールドをすべて削りとったり、甲板
支柱のとりつけの為に船体に穴開け加工を施すなど)、
一般的なモデラーにとっては非常に組みたて難度の高い
キットになったと思います。

キットの組みたてにはニッパーと接着剤と塗料の他に、
各種大きさや形状の異なるヤスリやノミ、ピンバイスな
どが必要となるので、キットを組みたてる以前にたくさ
んの工具の購入が必要となります。

自分が幼少のころは文字通り、ニッパーと接着剤と塗料
と筆だけでキットを組みたてたものですが、今このキット
を見て、当時の工作力ではとても完成させることができる
とは思えませんでした。

ウォーターラインシリーズが値上りしてからというもの、
子供達の艦船模型離れは進みましたが、キット自体が高額
な上、さらに高額な工具を揃えないと組みたてることがで
きないキットの登場で、ますます若い世代の艦船模型離れ
が進んでしまわないかと少々心配になることも多い製作
となりました。

ましてやガンプラ等の台頭で誰でも簡単に美しく完成でき
るキットが市場の大半をしめる中、手間と時間と労力と高額
な制作費がかかる艦船模型の将来が最近とても心配です。

と、話題は横道にそれましたが、それだけの難易度を持つ
だけあって、完成度はウォーターラインシリーズの戦艦郡
の中でもトップクラスの物です。HASEGAWAはこのキットを
リリース前に『怒涛の艦橋彫刻表現』と繰り返し雑誌や資料
で繰り返してきましたが、その通り、特に艦橋の彫刻表現
は素晴らしく、このカタチのまま1/350くらいのスケールの
ものとしてリリースされても違和感のないレベルです。

HASEGAWAのWL2代目以降のリニューアルキットは部品が多く
て組み上げるのに時間がかかりますが、行き届いた考証や
パーツ構成にはメーカーの思いいれの強さを思い知らされ
ます。

今回の製作は十八改装前の戦艦伊勢とほぼ同じ手順で組み
あげましたが、木甲板の塗装はかなり上手く行ったと思い
ます。木の甲板は毎回重ね塗りを施すため、全ての作品が
同じ色にはならないのですが、今回のこの伊勢はイメージ
にある色にもっとも近づきました。今後の参考にしたいです。





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