1/700スケール 航空母艦 鳳翔 
FUJIMI製インジェクションキット













フジミ 1/700

1/700ウォーターラインシリーズの新しいファンの中にはひょっとしたら
ご存じない方もおられるかもしれませんが、このシリーズ発足時は現在
のような静岡の模型メーカー3社による協同製作にフジミ模型株式会社
を加えた4社による協同開発がなされていました。

その後、フジミがシリーズを脱退したために、シリーズの穴を埋めるべく
残りの3社がフジミの担当であった艦艇模型を次々と優れた技術で設計
しなおし、その完成度がフジミのそれまでの商品レベルとは比べ物になら
ない高品質なものとなり、それが結果的に現在の艦船模型熱再発に繋
がっているのはなんとも皮肉なことです。

そんな中、この鳳翔のキットはフジミのウォーターラインシリーズ脱退後
に設計されたもので、独自の路線を進むことを決めたフジミが放つ期待
作として注目を集めたのですが、残念ながらその期待は裏切られたと
いわざるをえない内容のものとなりました。

部品をあわせる凹凸のモールドがほとんどなく、舷窓まで一切再現され
ていない金型技術はシリーズ発足時のものと比べて全くといっていいほど
進化しておらず、大して工夫のあともない完成度から、モデラーにはほと
んど相手にされない可愛そうなキットになってしまいました。

航空母艦鳳翔は日本海軍が世界に先駆けて完成させた初の本格的
航空母艦であるにも関わらず、こうした問題で模型としての作例もネット
や雑誌を含めてほとんど紹介されていません。

しかし、こうした可愛そうなキットであるからこそ、アオシマの扶桑型に
引き続いて大改造を加えることなく、他メーカーのキットに見劣りしない
雰囲気作りを目指して製作をしてみることにしました。

(キット化してくれた意欲はとてもありがたいものと思ってます)

では、まずはキットの内容と不釣合いになってしまった輝かしい実艦の
解説です。


旧日本海軍が太平洋戦時において、世界最大の戦艦大和を建造した
ことや、世界最強の零戦を開発したこと、世界最大空母の信濃の建造や
世界最高の機動部隊を有していたことは有名ですが、機動部隊の母体
となる航空母艦の研究開発にも世界ではじめて成功したことを知る人
は意外に少ないようです。

当時、日本海軍に航空母艦が必要とされた背景にはワシントン会議に
おける加藤中将の言葉があり、「日本は海岸線が長く、港湾や日本家
屋の構造を考えるに、空中爆弾による攻撃を受けやすく、所々に適当
な航空機を配備する必要があるが、経済上の問題で不可能である」と
いう内容のもので、空軍力の劣る日本は防衛上の移動航空基地として
の航空母艦の使用を最初に考えたのが理由です。

1920年に入り、各国では戦艦などを改造して建造された航空母艦が実用
化に向けて実験を続けていた頃、最初から純粋な航空母艦として設計さ
れていた艦は、この鳳翔と英国海軍のハーミーズのみで、鳳翔がライバル
艦のハーミーズに先駆けて1922年に竣工したことから、当初より空母として
設計されて完成した世界初の航空母艦としてのタイトルを手中に収めました。

航空母艦鳳翔は飛行甲板の右側にアイランド型を艦橋を備え、その
直後に3本に分かれた起倒式煙突を備えた近代的な艦形で、エレベ
ーターは前後に2基装備していました。

航空母艦鳳翔が完成すると、浦賀水道付近で早速艦上機の着艦実験
が行われました。その際三菱一〇式艦上戦闘機のテストパイロットをつと
 めていた英国のジョルダン大尉が志願し、軍部が要求した条件での9回
の着艦に成功して報奨金15000円を受け取りました。 その後、吉良大尉
による日本人パイロット初の着艦実験が行われ、転落事故を起こしたも
のの、大尉は無事に生還し、試験を続けました。



その後、1932年の上海事変の際に鳳翔は初めての出撃を経験しました
が、当初より実験艦的な色彩が強く主に艦隊訓練用に使用され、1935
年に台風による船首破損の後には煙突を固定式とし、1942年には甲板
長を延長し、当時の艦上機の離発着を可能にするよう改装が行われま
した。

大戦時にはミッドウェー海戦に攻略部隊の一員として参加、機動部隊の
敗戦の報を聞き、鳳翔から発艦した九六式艦上攻撃機が大破して漂流
する航空母艦飛龍の写真を撮影したことで有名です。

その後は訓練のみに使用され、敗戦後も無傷で残存し、1947年に解体
されるまで、南方各地からの兵員などの引き揚げ船として活躍しました。

大正時代に世界初の本格空母として完成して数々の実験に成功し、戦
時は訓練艦として働くほかに作戦にも参加し、戦後までを無事生き抜い
たドラマに溢れた艦といえます。



模型の全長は23、5cm、ケースの全長は36cmです。


今回は上記しているように、現在1/700ウォーターラインシリーズとは別の
企画として存在するフジミの1/700洋上モデルブランド、シーウェイモデル
シリーズの航空母艦鳳翔をベースに製作しました。

このキットはフジミがウォーターラインシリーズを脱退した後に企画設計さ
れたもので、改装前の起倒式煙突を備えた鳳翔の初期の姿を再現して
あります。

今回は、このキットをベースにゴールドメダルモデルズの空母用エッチン
グパーツとジョーワールドの防護ネット、静岡模型教材協同組合のリニュ
ーアルパーツや艦上機、精密チェーン、探照灯のクリアーパーツ、ナイ
ロンテグスによる空中線再現などを使用し、当時の実艦の写真を参考に
してデティールアップを施しました。

まず、船体にはなぜか舷窓のモールドが一切なかったので全てピンバイ
スによる掘り込みでディティールを追加、船体の合わせ目のバリなどを消
して短艇および錨を全て静岡模型教材協同組合のものに交換しました。

フェアリーダーはピンバイスとヤスリで再現し、錨鎖をフラグシップの精密
チェーンに置き換え、立体感を強調しました。

飛行甲板下の手摺レールはゴールドメダルモデルズのエッチングパーツ
によるもので、防護ネットも同パーツから使用、中央部にあるものはジョーワ
ールドの防護ネットのエッチングパーツを使い分けました。


↑艦橋および飛行甲板下のディティール

艦橋は窓枠のモールドがなかったのでジョーワールドの窓枠エッチングパ
ーツから合う物を選んで貼り付けました。艦橋内の床面はグレーチングの
再現として黄系色を塗装しました。

探照灯はファインモールドのクリアーパーツを使用し、レンズ部分を残して
塗装することで透明のレンズを再現しました。反射鏡部分はシルバーで下
塗りしてあるのでリアリティのある仕上がりになってます。


艦橋別角度から。


左舷、飛行甲板下のディティールの様子。


艦上機はキットに付属の一〇式艦上戦闘機5機だけでは寂しかったので、
昭和初期の艦上機になりますが、静岡模型教材共同組合の96式日本航
空母艦搭載機セットから九六式艦上爆撃機と九六式艦上攻撃機を2機ずつ
の合計9機搭載しました。 

九六トリオの九六式艦戦は改装後も飛行甲板の長さが合わず搭載できな
かったということなので搭載していません。

塗装は銀色全面塗装では模型栄えしないので昭和初期の保安塗装とし
ました。

プロペラはエッチングパーツで再現し、すべてのマーキングは塗装で再現
しました。


飛行甲板上の一〇式艦上戦闘機。


飛行甲板上の九六式艦上攻撃機および九六式艦上爆撃機。

翼面には、鳳翔飛行隊を識別するカタカナの『ロ』ではじまる機体番号を書
き入れました。数字も戦闘機、爆撃機、攻撃機の番台に合わせた数字に合
わせた表記です。

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0、128mm)を着色して使用
しました。取りつけは全て瞬間接着剤によるものです。


塗装はスケール性を考慮した上で船体やパーツの本塗装の前には塗装後
の塗膜の発色を良くするために、ホワイトサーフェーサーで下地を作った白
たちあげにて塗装しています。

飛行甲板中央部とエレベーターはアクセントとして多少トーンを明るめに塗
装し、木甲板部分は大正12年に東京湾にて横空が撮影した実艦の写真を
参考にエレベーター後の白線より少し後ろから塗りわけました。タンをベース
に吹き、マホガニーとクリアーイエローをコートして木の色調を再現しました。

仕上げには艶消しのクリアーをオーバーコートして質感を落ち着かせました。
塗装後の乾燥にはマイナスイオンドライブースを使用して塗膜のカブりをお
さえました。


全体の色調。真上から


↑船首からの全体像。


海面のベースはタミヤモデラーズギャラリー特別販売のウェーブボードを使用
し、クリアーブルーを吹き付けることで透明感のある海面を再現しました。アクリ
ルケースのベース部分はネイビーブルーのまだ塗装で仕上げて深みを出し
てみました。

船体とベースの固定は船底にナットを埋め込み、ボルトを底面から通すことで
行いました。




**総括**

パーツの合いも悪く、舷窓のモールドすらなし。およそ現在の水準ではとても
通用しないキットですが、全体の雰囲気は実艦をよく再現してあるので、アイ
ランド艦橋の高さにさえ気をつければ(キットでは少し高すぎに作られてます)
写真も豊富な鳳翔のシルエットを忠実に再現することが可能です。

しかし、いくらシルエットが良くても空母としてはもちろん、それ以前に船を構成
する装備品のほとんどは後から追加せざるをえないので、説明書どおりに淡々
と組むだけではなかなか満足のいく完成度にはなりません。

中でも舷窓がモールドされていないのは致命的で、ピンバイスを持っていな
い方や、持っていても水平に開ける技術や経験がない方には非常に厳しい
内容と言えるでしょう。

舷外通路もまったくモールドされていないので、エバーグリーンのプラ材などで
通路を追加し、マストの形状などを工夫していけば、最終的には最新キットにも
見劣りのしない完成度になることと思います。 

ですので良く表現としてありがちな、『フルスクラッチしたほうがラク』とまではい
かず、あくまでこれをベースにディティールを追加していく方法で完成させると
いうのがこのキットの存在価値であるのではないか?と個人的には感じています。





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