1/700スケール 戦艦 大和 菊水作戦時時 2回目
(および矢矧 冬月)
TAMIYA製インジェクションキット














田宮模型 1/700

大和の1/700田宮社製のモデルは以前にも製作したのですが
それから半年、自分の技術の向上を確かめてみるべく、2002
年現在の自分の表現力と根気と技術の限界に挑戦してみるこ
とにしました。

よって以前のものより、建造費と時間を比べものにならない
くらいかけて製作しています。


ベースはもちろんインジェクションキットの中で大和では
最新作にあたるニューキットです。これをいつものように
エッチングパーツ、ホワイトメタルパーツ、精密鎖、真鍮
砲身、真鍮線による自作パーツ、空中線、ピンバイス加工
やバリ&パーティングライン取りなどでディティールアッ
プしていますが、上記のように今回はさらにテディティー
ルアップパーツの使用を増やし、バーペット補強板や電路
の再現、空中線の材質変更など、各部に工夫を凝らしました。




ディティールアップの中心として使用したエッチングパ
ーツは大和用のものだけで『ゴールドメダルモデル』
『ピットロード』『エデュアルド』の3種類を使用し、
場所によって最適なものを使い分けました。これらは同じ
大和用でもそれぞれの部品のディティールが異なり、また
ゴールドメダルにかけてるものがエデュアルドには含ま
れていたり、またその逆もあったりするので贅沢な方法
になり工数も増えますが、その分見栄えのするものにな
ります。

他にはファインモールドの『応急舵(ボート用オール)』
『25ミリ機銃用盾』のエッチングパーツ、機銃のベース
やパラベーン、リールなどにピットロードの艦船装備セ
ットのディティールアップパーツを使用しています。

大和のニューキットは他キットに比べ、艦橋基部や艦尾
形状など、既に最新の考証に近づいた設計になっていま
すが、その後資料や生存者の証言、または写真解析によ
って新たに発見された事実に基づいた完成品とするため
に、エディオックのホワイトメタルパーツを使用しまし
た。

このエディオックのパーツは以前の製作で使用したピッ
トロードのレジンパーツとはまた違った考証で作られて
いるもので、キット状態とパーツ使用による考証の違い
については各部のクローズアップでこの下で順次解説します。

エディオックのパーツについて興味のある方は、HIGH-GEARed's
HOBBY WORKS!!と相互リンクさせて頂いておりますので、
参考になさってみてください。



製作の前の下準備として、いつもどおり船体のパーティングラ
インの除去、舷窓のさらい直しなどの基本工作を終わらせたあと
は各部を詳細にディティールアップしました。




まずは艦首から見ていきましょう。船体はバリを落とし
たあと、舷窓をピンバイスでさらい直してモールドのメ
リハリを強調しています。



艦首の菊花紋章はエデュアルドのエッチングパーツを使
用し、三脚状の空中線支柱は真鍮線を組み合わせた自作
です。錨鎖はアイコムのホビーチェーンを使って本物の
立体感を出してみました。メリハリがあって非常に見栄
えがします。

第一主砲塔前の波避け柵周りのリールはキット純正のモ
ールドを削りとって、ピットロード日本艦船装備セット
のリールを取り付けました。




次に第一、第二砲塔および機銃ブルワークとその周辺で
す。甲板の周りの手摺はエデュアルドのエッチングパー
ツで再現し、手摺と一緒に並んでいる天幕支柱は真鍮線
を切って2本組み合わせ、自作したものです。瞬間接着剤で
76本の真鍮線を1本1本固定してあり、これは艦首飛行甲板
点前までずらりと並ばせてあります。

なかなか地道な作業ですが、これが再現されてみると完
成したときの見栄えはかなり壮観なものになりました。

46cm主砲の砲身はKEBUROコーポレーションのディティー
ルアップ用真鍮製砲身を加工して植え付けてあります。
真鍮の砲身はバリもなく、正確なモールドとスケール
感、開口された砲口などが出来映えをシャープにしてく
れるのでもう手放せません。



主砲上の手摺は甲板周りとは異なり、ゴールドメダル製
のもので大和型戦艦の46cm砲専用のものです。前後左右
に四本とりつけられたはしごと防水布ガード(防水布の
下にとりつけられメッシュ状のパーツ)背面の砲室出入
り口はエデュアルドのエッチングパーツ使用による再現です。


また、主砲だけでなく、第二主砲バーペット(砲座)も
プラ板で補強板のディティールを追加してあります。

第二主砲塔および第三主砲塔の砲塔上の増設機銃座は
エディオックのホワイトメタルパーツを使用して角型
ブルワークなしの新たな考証で再現しています。砲塔
天蓋の電路は真鍮線による自作です。



↑塗装前の状態です。電路や真鍮砲身、手摺、防水布ガ
ード、梯子、出入り口、メタル製機銃座などの各種デ
ィティールアップの様子。


また、砲塔を囲うように搭載されている25mm三連装機
銃はピットロード日本艦船装備セットの2ピース構造
機銃パーツに更にファインモールドの25mm三連装機銃
用防盾のエッチングパーツをセットして3ピース構造
にしてあります。(一部場所の都合でTAMIYA機銃に坊
盾の組み合わせもあり)


また、機銃座はキットのプラパーツは浅くて実感に
かけるため、エディオックのブルワークが薄くて高い
ホワイトメタルパーツに交換してあります。



また、第一、第二主砲の間に設置されている土嚢で
組み上げられたブルワーク(?)のエディオック製
のものです。写真解析による形状で作られているもの
で、ピットロードの「○型」のものではなく、「コの字状」
に改められてます。

次は副砲です。こちらも複雑な形状の手摺をゴールドメ
ダルのエッチングで再現し、四方の梯子と資料写真に基
づいた後端の引き戸式の出入り口を再現しています。



また、防水布ガードはピットロードのエッチングパーツ
でバーペッドも後端の出入り口の再現をはじめとして、
補強板の再現もエデュアルドのエッチングおよびプラバ
ンでおこなってます。空中線支柱はゴールドメダルのパ
ーツという具合に、各社のエッチングパーツが混在しています。



副砲の両サイドのパラベーンはピットロード日本艦船装
備セットのパーツを使用し、ハッチはエデュアルドのエ
ッチングで半開きの状態を再現しています。


次に艦橋のディティールです。ここはエッチングパーツを中
心にディティールアップを行っています。前部、後部と
もにプラパーツの左右の合わせ目はラッカーパテで消しま
した。



艦橋窓は第一艦橋、第二艦橋とも窓モールドを削りとって
開口し、エッチングパーツで窓枠を再現しています。伝令
室、作戦室の窓モールドはピンバイスでさらいなおし、さ
らに海図室の窓をピンバイスで追加しています。



艦橋背面のタラップは今までの梯子からピットロードの
専用パーツを使うことで手摺なども再現することができ
より詳細なディティールを盛りこむことができました。



観測室はキャットウォークとその手摺や主砲射撃所頂部
の手摺を再現、そして伝令所と旗甲板はエディオックの
(拡大改装後を再現した)ホワイトメタルパーツを使用
して新しい考証に基づいた最終状態に変更しています。

また、その下にある兵員待機所や、メインマストの後下
にある後部電探室には窓モールドおよびエッチングによる
出入り口を追加して設備としての存在感を出してみました。

煙突は開口し、フィンをピットロードのエッチングで再
現しています。このフィンはゴールドメダルのエッチン
グパーツの中にも含まれますが、ピットロードのものは
より立体的で16個の細かいフィンを組みたてる精密な
構造になっています。



艦橋から煙突に伝わる通路と煙突頂部に上る梯子はピッ
トロードとエデュアルドのものを通路を隔てて繋げて
使用しています。探照灯のカバーはエデュアルドのエッ
チングパーツを貼りつけました。


中央構造物は高角砲甲板と高角砲を含めたほぼ全体に
手摺を張り巡らし、滑り止め甲板の表現はエデュアルド
のエッチングパーツです。


構造物にはもちろん無数の出入り口と缶室吸気口のグ
リルをデュアルドのエッチングパーツで再現し、梯
子はトムズモデルの戦艦用のパーツを使用しています。







12,7cm連装高角砲周りも積極的にディティールアップ
を施しました。シールド付きのものは前述のように手摺を
装備し、シールドなしのものは観測室部分の足を削って実感
的に仕上げています。

また、大和の高角砲の周りに設けられた射界制限枠のフ
レームは真鍮線で自作したのものです。


↑塗装前のフレームの様子です。

25mm三連装機銃はシールドなしのものが前述のようにファ
インモールドの防盾のエッチングパーツでディティールア
ップを施し、シールドつきのものは第一時大改装時に装備
された丸型のもの(タミヤ純正パーツ)と最終時に装備さ
れた戦時急造型の角型のもの(エディオックのホワイトメ
タルパーツ)とを区別しています。


↑画面中央、横並びのシールド付き25mm三連装機銃の左側
が丸型の旧タイプ、右側が角型の後期型です。


後部副砲周り、後部艦橋や副砲バーペッドで缶室吸気口の
クリルの状態がおわかりになると思います。右舷の機銃
ブルワークの後にあるのは装填演習砲です。これもエディ
オックのパーツを使用しました。





船体後部、角型八角形の機銃座は丸型のキットのパーツと
交換して、水中調査で明らかになった形状にあらためて
います。



ジブクレーンは石川島播磨重工のクレーンを再現したゴー
ルドメダルモデルのもので、カタパルトもおそろいでゴー
ルドメダル製です。


ターンテーブルにエデュアルドのエッチングパーツを使用
し、エレベーター下の艦載機格納庫の観音開きの扉はプラ
板を使って閉まった状態で再現しました。

船尾の応急舵はエディオックのものにしようか迷ったので
すが、薄さを重視してファインモールドのエッチングパーツ
で仕上げました。


続いて塗装ですが、これはまずはいつもどおり白立ち上げか
らはじめてます。パーツを洗浄したあと全てのパーツに足つ
けをし、金属パーツなどはプライマーをかけたあと、ベース
ホワイトで下地を作っています。



船体の外舷色はピットロード艦船カラーの呉海軍工廠標準
色です。

木甲板もいつもどおりの方法で、GSIクレオスMrカラーのタ
ンを下地に塗装し→ウッドブラウン→黄燈色と重ねぬって木
の色合いをだしました。

もちろん、どちらもエアブラシでの塗装です。


防空指揮所をはじめとしたリノリウム部分にはピットロード
艦船カラーのリノリウム色を筆で色さししました。


上記のように、ほとんどの塗装に塗膜の丈夫なラッカー系
塗料を使用しましたが、菊花紋章やライトレンズ、機銃の銃
身などは金属色の表現に適したエナメル塗料を使用しています。


↑カッターの塗り分けとエッチングのオール。

また、主砲や副砲、艦橋の測距儀や高角砲、機銃シールド、射
撃指揮所の窓などはスミ入れをしてモールドのメリハリを強調
し、最期の仕上げに船体全体に艶消しコートを施して質感を
統一してまとめました。



空中線は前回の長門のギャラリーの追記に書いたことを踏まえ、
今回から以前のフラグシップ製模型用テグスをやめ、さらに1/2以
下の細さの0,6号釣り糸(太さ0,128mm)を着色して使用
しました。

これで以前よりスケール感が増したと思います。再現した空中
線の数も今までで最多になります。線が細いぶん、やりがいが
でてきてこれからはより細かい空中線が再現できることでしょう。





ちなみに、今回は大和最期の出撃となる菊水作戦時に大和に同伴
して出撃し、主に防空護衛の任務にあたった軽巡洋艦 矢矧と駆
逐艦 冬月も一緒に製作したので、一緒に掲載しておきます。





実艦について説明しますと・・・。

矢矧は排水量7,710トンの軽巡洋艦、阿賀野型の3番艦
にあたり、対空対潜護衛任務を行う第十戦隊旗艦に就役し
ました。その後、マリアナ沖海戦に参加、レイテ沖海戦に
おいて最初に大和と任務を供にします。


この絶望的な戦いを生きぬいた矢矧は戦艦大和最期の出撃と
なった菊水作戦において、唯一の巡洋艦として大和とともに
出撃し、護衛の任務にあたりましたが20年4月7日、米軍
艦載機の攻撃により、大和と供に壮絶な最期を遂げました。


キットはWLシリーズの初期の名作と言われ、モデラーの間で
『タミヤスタンダード』という表現を不動のものとしたこと
で有名なタミヤ製の名キットです。

シャープなモールドと当時としてはかなり行き届いたリサー
チで完成されているこのキットをベースに、ギ装パーツを
静模協のリニューアルパーツおよびピットロードの艦船装備
セットのものにおきかえ、ディティールの中心となるカタパ
ルトや手摺や電探など、エッチングパーツでディティールア
ップし(手摺はゴールドメダルモデルズ、カタパルトはエデ
ュアルドのものです)、空中線は大和と同じ0,6号テグス
を使って空中線を再現してあります。(空中線の支柱は真鍮
で作りなおしたものです。)


塗装は大和と同じく白立ち上げの下地処理を行ったあと、
佐世保で竣工した矢矧の外舷色に合わせて、ピットロード
艦船カラーの佐世保工廠色を使用しました。

ブルーがかかった呉海軍工廠色と比べてかなり濃い目のグ
レーになっていて重量感があります。、

甲板色はリノリウムの再現ということで同じくピットロード
艦船カラーのリノリウム色です。

最期は艶消しのコーティングで質感を統一しての仕上げです。








最後に駆逐艦冬月について掲載しておきます。



冬月は秋月型駆逐艦の6番艦として、舞鶴海軍工廠で建造され、
就役後は主に船団護衛としての任務についており、大戦中に建造
された新鋭空母雲龍の直営として航行中に被雷し、船首を切断
するという大損害を受けましたが、その後修復をおこなって奇跡
的に復活し、戦艦大和最期の出撃となる菊水作戦で大和を護衛
する任務につきます。


話題はそれますが名作アニメ『宇宙戦艦ヤマト』においてもヤマト
自沈の時に乗組員を受け入れた船『ふゆづき』が描かれており、
実艦 大和のファンならずともご存知の方もおられることと思い
ます。

この戦いで、冬月は大和を狙う米軍艦載機に向けて懸命な奮闘
ぶりを見せつけ、その結果雷撃機の集中攻撃を浴びましたが、
見事に全ての魚雷をかいくぐり、無事に戦いを終えました。

しかし、戦闘が終わったときには大和の姿はもうありませんで
した。乗組員達のほとんどは、大和の最期を間近に見たと言われ
ます。

大和から500メートルほどしか離れていなかった冬月はこの
戦闘の後、この大和の生存者を救出するという任務につきました。

その後は米軍艦載機郡の空襲に対する防空戦に参加し、戦後は
復員線としての役割をはたしました。そうして全ての役割を終
えた冬月は北九州の若松港に沈座し、防波堤となりました。現在
は埋没してその姿をみることはできませんが、母なる日本の海
で現在でも眠り続けています。





使用したキットはWLシリーズでも駆逐艦の中では比較的新しい
アオシマのニューキットで、以前のフジミのものと比べると
複雑なマスト形状や船体のフォルムがシャープの整えられ、
ギ装にリニューアルパーツを多用したことで小艦艇モデラーか
ら絶賛されたものです。


時代考証として、単層機銃などを増設した最後期型として製作
しました。単層機銃はピットロードの日本艦船装備セットから
で、爆雷投射器もつけたしてます。また、戦時中にとりけされ
た船腹の艦名表記もしていません。


ディティールアップは手摺とボートダビット、空中線と二十一
号電波探信義をエッチングパーツで追加しています。手摺が
ゴールドメダルモデルズのもので、二十一号電探はファイン
モールドの正方形のものです。追加工作として、艦橋には丸窓
をモールドしました。


空中線も上記2隻と同じで極細に仕上げました。支柱を真鍮の
ものにするなど、同様の方法でディティールアップを施して
ます。


塗装は舞鶴海軍工廠出身の冬月に合わせて、GSIクレオスのMr
カラー 32軍艦色2にニュートラルーグレーと灰色9号を混色
して色調を整えた自作調合のもので、これを上記の2隻と同じ
く白立ち上げの吹きつけ塗装をしてあります。リノリウム甲板
も、矢矧とおなじくリノリウム専用色で、甲板上のリールなど
もこまかく彩色してあり、隅々にスミ入れをしてディティール
のメリハリをつけてます。



↑ずらり並んだ3隻。こうして並べてみるとより各艦の迫力が増
すのはもちろんですが、外舷色の違いなども興味深いところです。


総括

2002年度の総決算ということで現在の自分の水準の限界にかなり
近い出来になったと思います。

特に射界制限枠や天幕支柱、空中線の精密化など、新しく試みて
みた作業の効果は絶大で、まだまだ技術的に向上していける自分
を発見できて楽しい製作となりました。

2002年中にまたギャラリーをアップできるかどうかわかりません
が、これからも艦船はもちろん、あらゆるジャンルの模型に挑戦
していきたいです。








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