1/700スケール 二等戦艦 鎮遠
モデルクラック製レジンキット













Modelkrak レジンキット 1/700

自身の30歳の誕生日を境にはじめた1/700日本海軍主力艦コレクション、三景艦に続
いての主力艦として、今回は二等戦艦「鎮遠(ちんえん)」を製作しました。


***実艦について***

艦船に詳しくない方でも、名前を見ればなんとなく想像がつくかもしれませんが、
鎮遠は生まれながらの日本海軍艦艇ではありません。

もともとは中国最後の統一王朝でもある、清国の北洋水師(艦隊)の主力艦として、
ドイツのフルカン造船所にて起工、1885年に清国所有の鋼鉄砲塔艦として完成しま
した。

常備排水量7220トン、射角の広い30.5cm砲連装主砲塔2基搭載というスペックは、当
時の東洋各国の海軍の中ではずば抜けており、日清戦争前の1886年に長崎を表敬訪
問した際に、この艦を見た日本海軍関係者は、当時の主力艦、扶桑(初代)をはじ
めとした日本海軍の艦隊では、この鎮遠および同型艦の定遠にはとても太刀打ちで
きないと考えたそうです。

(その結果、「松島」「橋立」「厳島」の三景艦建造に着手することになりました)

日清戦争において、鎮遠は黄海海戦にて三景艦からなる日本海軍連合艦隊と対戦、
その際には実に220発もの砲弾を受けますが、致命傷には至らず、評判どおりの頑
健さを見せ付けました。

その後、1894年に威海衛沖にて水雷部隊の夜襲を受けて座礁、司令官の丁汝昌提督
は鎮遠艦内で服毒自殺を遂げ、北洋水師は降伏しました。

その後、鎮遠は1895年に捕獲され、修復の後に日本海軍に編入、富士型戦艦などが
登場するまでの短い期間ではありましたが、日本海軍最強の戦艦として君臨するこ
とになりました。


「鎮遠」(1885年竣工 ドイツ フルカン造船所 1895年連合艦隊へ編入)

常備排水量:7336トン 兵装:クルップ式30、5cm20口径連装砲 2基4門他


***キットと製作について***

キットは、ポーランドのガレージキットメーカー、モデルクラック社の製品です。

モデルクラックは、日本海軍の明治期艦艇を多くモデル化しており、シールズモデル
とともに、明治艦のコレクションには欠かせないメーカーです。


↑箱の中身は、ざっとこんな感じです。クリーム色のキャスト
パーツばかりのフルレジンキットです。


↑鎮遠の説明書。ポーランド語のため読解不能です(笑)。
イラスト付きの組み立て解説もあるのですが、参考程度にしか
なりません。

船体パーツはそれなりに精密にできていてなかなか印象がいいのですが、船底の吃水
線下に大きなレジンの湯口が残っているのが問題です。


↑モデルクラックの製品には喫水線下にこのような分厚いレジン
の湯口が存在するため、製作前に切削しておく必要があります。

今回の製作にあたっては、職場のベルトサンダーを使ってこの湯口を除去したので
すが、ペーパーを使った手作業でこの湯口を取るとなると、なかなかに大変な作業
になりそうです。

以前、WWSの片面取りレジンキット(ドイツ海軍H級戦艦)を製作したことがあるので
すが、その時は設備を使うことができなかったので同じような湯口を処理するのに泣
きそうになりました。(笑)

また、このキットはフライングデッキなどの主要パーツも、大きなゲートに埋まって
いるので、注意深く切り離す必要があります。


↑ゲートに埋まったフライングデッキ。裏側を削って薄く整える
必要があります。

船体舷側には舷梯がモールドされていますが、1隻だけこれが付いていると、コレク
ションのバランスが悪くなるので切除し、舷窓を0、6ミリのピンバイスで開口し
ました。

レジンのパーツには生産工程で離型材がたっぷり付着しているので、それらをノル
マルヘキサン(ブレーキクリーナーと同成分の業務用揮発油)で除去し、レジンプラ
イマーで下処理をしてから、塗装に入ります。


↑ゲート処理と舷窓再現を済ませ、プライマー処理が完了した状態。


↑鎮遠の特徴的な主砲塔は、砲身を真鍮パイプに交換しました。

艤装パーツはすべてゲートに埋まっていて使用が難しいうえ、精度もよくないので、
シールズモデルの「日英海軍艦艇装備セット」を流用し、副砲、速射砲、通風筒、
探照灯などを流用しました。 

短艇類は、当時の主力艦が水雷艇を搭載していたという資料があるため搭載を検討
したのですが、日露戦争時には二等戦艦に類別されていたため、ランチのみの搭載
としました。(三景艦も含めて、今回のコレクションの明治艦は日露戦争時をプロ
トタイプとしています)


↑ランチはキットの指定どおりに取り付けようとすると、
速射砲の上になってしまうので、プラ棒で架台を自作し
ました。


マストは1Φの真鍮線と0、5Φの真鍮線を組み合わせ、帆走も可能な設計だった太め
のマストを再現しました。


↑マストパーツはキットに含まれないので、図面を見ながらの
自作です。 

また、マストに三箇所設けられた見張り台のうち、二箇所は5ΦのABSの丸棒を旋盤
加工して自作したのですが、キットパーツの見張り台と比較して若干アンバランスに
なってしまった気がします。


↑旋盤で見張り台を作る際、中刳りはドリル歯でやると床面が
テーパー状になってしまうので、エンドミルを使って水平の床
にしてやると実感的です。

手すりは、ドイツ製の艦ということで、ライオンロアのドイツ艦用手すりエッチン
グパーツを使用しました。

レジン船体は完成後も事後変形が起こるので、せっかく丁寧に貼り付けた手すりが
ゆがんでくることがあるのが悩みです。(苦笑)

空中線は、油性マジックで色付けしたテグスで再現しました。正確な空中線配置は
分からないので、キットの図面と北洋水師時代の写真を参考に省略を加えつつ張り
ました。 

これで、二等戦艦「鎮遠」の完成です。


↑右後方から。後部左右取り付けられた副砲は、日本海軍編入後に増備された
ものです。アンカークレーンの位置がはっきりしないため、今回は取り付けを
見送っています。


↑右側面からの様子。北洋水師時代に撮影された側面の写真があるのですが、
写真のイメージにわりと近い出来になったと思います。鹵獲艦であり、日露
戦争時には二等戦艦に類別されたため、菊花紋章が取り付けられた時期がある
かどうかは分かりません(絵葉書写真では確認できません)が、「主力艦
コレクション」である意味合いも込めて、今回は取り付けることにしました。


↑主砲と艦橋の距離が近すぎるような気がしますが、「宮崎駿の雑想ノート」
によると、黄海海戦の際、鎮遠の同型間「定遠」で指揮を執った丁汝昌(てい
じょしょう)提督と英国人顧問が、距離5800mでの初弾発射の際に、爆風で吹
き飛ばされたそうです。 この時代の船はまだまだ試行錯誤が多く、実際作っ
て使ってみて初めてわかってくる問題が多かったようですね。


↑先日完成したばかりの三景艦とのフォーショットです。日露戦争においては、
日清戦争時代のライバル同士で第三艦隊第五戦隊を編成し、日本海海戦にも
参加しました。



**総括**

鎮遠は、以前からぜひ製作したいと考えていた艦でした。写真やイラスト、CG資料
などで、その艦容はよく知っていましたが、手元で立体化することではじめて見え
てくる魅力も多く、ますますこの艦が好きになりました。

モデルクラックのキットも今回が初挑戦でしたが、戦艦敷島、戦艦初瀬のキットを
すでに購入してあるため、明治艦後半戦に再び登場することになると思います。
(敷島型戦艦が上手く完成したら、日本海海戦で重要な役割を果たした装甲巡洋艦
「日進」「春日」の製作もあるかもしれません)

歴代主力艦のコレクションの中に、鹵獲艦であり、輸入フルレジンキットでもある
鎮遠が加わってしまったことで、今後のコレクションの方向性も考えていかねばな
らなくなりました。

すなわち、これからのコレクションの中に鹵獲艦とフルレジンキットをどの程度加
えていくかという問題です。

日露戦争においては、多くのロシア戦艦が鹵獲され、戦艦「壱岐」に関しては、
「ニコライ1世」、戦艦「丹後」は「ペトロパブロフスク」、「肥前」は「レトウィ
ザン」、「石見」には「アリヨール」、「相模」「周防」には「ペレスウェート」
などのコンブリック製レジンキットが使用できます。

しかし、ここまでやると数が増えすぎるのと同時に、時間と予算がかかりすぎる問
題があり、どうしたものかと思案しています。

また、大正艦艇についても悩んでいます。工房飛竜からレジンキットが多数リリー
スされておりますが、入手性が不安定で、なおかつ非常に製作難易度が高そうな様
子が、某ショップのパーツ写真からも伝わってきます。(笑)

しかし、大正艦艇を入れることなく、三笠の次がいきなり金剛になるのでは、歴代
コレクションを考えるにはあまりに突然変異になりかねないので、何隻かは大正艦
艇にも挑戦してみようと思います。

まぁ今はそれ以前に、明治艦のコンプリートを目指さなくてはいけませんね。(笑)

次回は戦艦「富士」を予定しています。 

六六艦隊の朝日以外の戦艦と、インジェクションで出ている装甲巡洋艦のキットは
すでに購入済みですので、あせらずじっくりと仕上げていきたいと思います。







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