1/500スケール 航空母艦 赤城 7回目 真珠湾作戦時
NICHIMO製インジェクションキット













ニチモ 1/500

今回の赤城もこれまでの赤城の作例とほぼ同じ仕上げのものです。6回目との違い
は艦載機の機数で、前回の他キット流用の艦載機増備した仕様と比較して、今回
のものではキットに付属の艦載機のみの仕様で、機数の関係から真珠湾攻撃隊発
艦準備状態の情景としました。


***実艦について***

赤城は当初、日露戦争時代の艦をすべて作りなおす八八艦隊整備計画の一
環として天城型巡洋戦艦4隻のうちの1隻としての建造が進められていたのです
が、ワシントン軍縮条約により、日本海軍の戦艦保有数に制限がかけられ、空
母に改装され、日本海軍では初の空母、鳳翔に次ぐ二隻目の本格的航空母
艦として完成しました。

空母として完成した直後は世界でも他に類を見ない発艦、着艦が同時に行え
るように工夫された三段甲板式航空母艦で兵装も、機銃、高角砲以外に、20
mm砲10門と中型巡洋艦並みの攻撃力を持った珍しいものでした。

しかし、この三段空母は航空機の性能が上がるにつれ、より長い飛行甲板を使
用する必要があるため後に廃止され、長さ250m、幅30mの広大な一枚甲板に変
更する大改装が行われました。改装の後は第一航空艦隊の旗艦に就役し、南
雲忠一提督指揮のもとに、真珠湾奇襲作戦で大勝利をおさめ、世界最強の
空母、機動部隊と世界にその名を知らしめました。

しかし、ミッドウェー海戦において甲板上で兵装転換のさなか、米エンタープラ
イズ機の攻撃により、2発の爆弾が命中。発進準備中の航空機やその爆弾へ
の誘爆をおこして大火災に見まわれ第4駆逐艦隊の魚雷により沈没処分されました。


赤城と言えば、真珠湾作戦時の機動部隊の旗艦でもあり、航空母艦の技術が
飛躍的に優れていた日本海軍が誇る当時世界最強の航空母艦とも言われ、
世界にその名が鳴り響いていました。


↑模型の全体像です。全長は約52cmと、1/700などと比べるとかなりの
ボリューム感があると思います。


***キット、パーツについて***

今回の作例も、船底までモデリングされたnichimo製のもので大きさは1/500スケー
ルのものを使用しました。

1/700と1/500と数字で比較するとあまり差がないように思いますが、船底や台座
などを含めると感覚的には随分大きなものでなかなか見ごたえがあります。

nichimoのキットはハセガワの1/700WLよりも彫りの深い造形で、スポンソン支柱も
三角片ではなく棒状の単体パーツで再現され、特に左舷高角砲甲板などは内部
までよく再現されていてディティールアップしがいのあるものです。

今回は主にゴールドメダルモデルズの日本空母用エッチングパーツを使用した他、
汎用のメッシュエッチングパーツを使用して救助ネットや遮風柵を自作し、機銃や
艤装にピットロードのインジェクションパーツを流用、汎用の真鍮製スクリューパーツ
などを使用して徹底的にディティールアップを施しました。

船体はそのままでは合いがよくないので、内部に骨組みを作ってキャンバーを調整
し、また接着面積を増やしてより頑丈に仕上げました。


↑船体内部にはプラ棒でフレームを作り、舷側キャンバー調整や接着面積を稼ぐための工夫をしました。

また、台座にも手間と予算をかけ、木製飾り台を使用し、ニスを吹き付け塗装した
うえで真鍮製高級飾り脚を組み合わせてディスプレイの際の模型映えを追求しました。


***船体のディティールアップ***

まずは全体像を4枚の画像にわけて撮影しましたのでご覧ください。


全体像1。右舷前方の様子


全体像2。右舷後方の様子


全体像3。左舷前方の様子


全体像4。左舷後方の様子

船体は無数にある舷窓をピンバイスによって開口してモールドのメリハリを強調した
上で、船体舷側の鋼板の継ぎ目のモールドを追加しました。


***舷側の鋼板の継ぎ目モールドを追加***

鋼板の継ぎ目モールドの追加方法は同じ大きさに短冊状で切りそろえたマスキン
グテープを舷側に貼り、サーフェーサーを吹いて塗膜の段差を作る方法で行い
ました。 縦の継ぎ目を追加する目的で同様の作業を何度も繰り返して完成しま
した。


↑鋼板の継ぎ目の様子です。舷側だけでなく格納庫側面にも同様の処理を施しました。


↑左舷高角砲甲板。製作中の様子。ほとんど見えない内部も再現しています。



***手摺とタラップ***

また、船首にはスライドマークにて喫水ゲージを追加し、格納庫側面の複雑な通路
には手摺とタラップを細かく配置しました。 

錨鎖も船首、船尾とも精密チェーンにより、立体的に再現しました。


↑船首部分は建造物としてのディティールが集中しているため、タラップや
チェーンなどで立体感のあるディティールを強調しました。

手摺とタラップはゴールドメダルモデルズのエッチングパーツによる再現で、タラッ
プは手摺ありのものと手摺なしのものを状況に応じて使い分けました。


↑右舷前部格納庫部分の側面の様子です。通路には手摺やタラップを配しました。
また、下記で解説している「X」形状のスポンソン支柱を自作にて追加した様子。

カッターの艤装は汎用メッシュエッチングパーツと真鍮線による自作のものを装備
させました。


***キットで省略されているスポンソン支柱の追加***

スポンソン支柱はキットの状態で単体パーツ再現がなされているのでそのままでも
実感的ですが、「×」の字の形に交差するスポンソンは成形上の都合か?省略され
ているので真鍮線で自作して追加しました。


↑キットでは省略されている後部飛行甲板支柱を自作して追加しました。

スクリューは真鍮製のパーツに交換して実感と模型映えを高めました。もちろん、
左右のピッチの違いも使い分けて再現してあります。


↑金属パーツに交換して実感を高めたスクリュープロペラの様子


***兵装のディティールアップについて***

空母赤城の滞空兵装には機銃と高角砲がありますが、今回はその両方にディティ
ールアップを施しました。

まず、高角砲は左舷、右舷の両方に射界制限枠を追加しました。これらは真鍮線
の現物あわせの自作のもので、左舷側に関しては補助フレームも再現しました。


↑左舷高角砲群。射界制限枠はもちろん、高角砲甲板内部も作りこみました。


↑右舷煤煙避け付高角砲群。射界制限枠の様子等。

機銃はピットロード製がスケール的にちょうど良かったので流用しました。銃身と銃座
が別パーツで構成されるパーツですので、より立体的に再現できました。


***艦橋周りのディティールアップ***


↑艦橋周りの写真です。

艦橋は窓枠を再現するためにプラ製のパーツを外して汎用エッチングパーツで再
現し、側面や探照灯周りに手摺を追加しました。


艦橋別角度から その1


艦橋別角度から その2

艦橋背面のマストは骨格にキットのパーツを使用し、助骨を真鍮線で追加しました。

空中線支柱も真鍮線による自作です。



***飛行甲板の塗装***

飛行甲板の塗装は今回も細かい重ね塗りで木甲板色を再現しました。

木張り部分は「ベースホワイト」→「黄橙色」→「タン」→「クリアーイエロー」の順番で
塗り重ね、光線の加減など雰囲気の違う実感のある色調としました。

飛行甲板の白線表示も耐久性と発色のよさを考えてデカールなどは一切使わず、
全てマスキングによる吹き付け塗装にて再現しました。 赤白マダラ状の着艦表示
も艦名表示の「ア」の文字も同様の塗装仕上げです。 


↑飛行甲板の白線表示の様子。全て塗装による再現です。

エレベーター部分の塗装はは本体と縁取りに2種類のグレーを使い分けてアクセン
トとし、メリハリをつけました。


***各種救助網の自作***

航空母艦独特の装備である人員および飛行機救助網もキットでは省略されている
ので、飛行機救助網は自作し、人員救助網はエッチングパーツを基本に、更にデ
ィティールアップを施しました。

まず、船体中央部の飛行機救助網ですが、これは汎用メッチュエッチングパーツを
塗装し、フレームとなる部分を真鍮線で自作して取り付けました。 メッシュ部分は実
感を出すために少したるませた状態に加工しました。

人員救助網はゴールドメダルの空母用エッチングパーツに付属のものをベースに、
飛行機救助網と同様にフレームとなる部分を真鍮線で自作してディティールアップ
しました。


↑船首、人員救助網の様子。



↑船体中央部、飛行機救助網の様子。



***エレベーターと遮風柵***

今回は艦上機の状態を発艦準備中の情景としたため、後部エレベーターのみ作
動中の様子を再現し、少し落とし込んだ状態としました。

その際、飛行甲板の断面が実感的に見えるように、断面部分にパンチングを模した
塗装を行い、断面がより実感的に見えるように工夫をしました。


また、遮風柵は汎用メッシュエッチングパーツを加工して自作し、立てた状態とし
ました。 遮風柵支柱も真鍮線で自作して追加し、実物同様の見た目としました。


↑遮風柵と零戦、前部エレベーターなどの様子です。


***艦上機について***

今回は真珠湾第一次攻撃隊の発艦準備中の情景を再現してみました。

第一次攻撃隊の編成に基づいて、艦爆は搭載せず、零戦と艦攻のみの編成としました。

零式艦上戦闘機は作戦に参加した9機の中から8機を飛行甲板に並べ終え、97艦攻は
5機が既に並べられ、真珠湾第一次攻撃隊指揮官機である淵田中佐の搭乗機がいま
まさに飛行甲板に上げられようとしている様子を再現しました。  

このカラーリングの機は真珠湾攻撃を描いた大作映画「トラ!トラ!トラ!」にも登場
するなど、戦争映画ファンなどにもお馴染みのものです。

艦上機のプロペラは、全てエッチングパーツにて再現してあります。

また、艦上機のマーキングは全て塗装によるもので、航空母艦赤城所属機を示す赤い
ラインも手書きで表現しました。


↑飛行甲板上の零式艦上戦闘機(ゼロ戦)21型。


↑飛行甲板上の97式艦上攻撃機。



***空中線について***

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0、128mm)を着色して使用しました。

空中線支柱はほとんど真鍮線で自作しました。

また、部分的に白塗装にてガイシも再現しました。


***塗装について***

塗装はスケール性を考慮した上で船体やパーツの本塗装の前には塗装後の塗
膜の発色を良くするために、船体外舷色部分にはホワイトサーフェーサーで下地
を作り、船体加工のところで前述させていただきましたように鋼板継ぎ目のモールドを追加。

船体色の再現にはエアブラシを使い、白下地の上からGSIクレオスの32番を吹き
つけました。

木甲板色の再現には甲板の塗装の説明にも記載していますように、黄下地の上に
タンをベースに吹き付けた後、クリアーイエローをコートして色調を立体的に表現しました。

飛行甲板の表示は艦名標示、風向き表示、船尾着艦標示も含めて全てマスキン
グによる吹きつけ塗装で仕上げました。耐久性と発色でデカールより優れた表現です。


***台座について***

前述しておりますように、今回は塗装した木製飾り台と真鍮製の高級飾り脚を組み合
わせて模型映えを追求しました。 台座はボルトを介して模型に固定されていますの
で、発送の際にこの部分を固定できるよう、しっかり強度を出しました。

また、今回からプラスドライバーを使用して、船体を台座から取り外すことも可能にしました。


↑台座も予算と手間をかけて高級感のある仕上げとしました。




**総括**

ついに7隻目となった1/500。製作の紹介もかなりワンパターン化してきたので、今回は前回
の総括にも記載した模型の剛性アップのための内部構造を少しだけ紹介しました。

完成後は見えない部分だけに、あまり丁寧に作られてはいませんが、拘る方はこのあたりの
つくりも拘られることでしょう。 実はこの後、初めてハセガワの1/450赤城を製作したのですが、
このあたりのノウハウは1/450モデルの製作の際にも役立ちました。

HIGH-GEARed HOBBY WORKS!!にて、この1/500赤城を多数製作している例を見て、
上手く組み上げられないという方からメールを頂くことが多いのですが、こうした資料が少しで
も参考になりましたら幸いです。







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