1/500スケール 航空母艦 翔鶴 マリアナ沖海戦時
NICHIMO製インジェクションキット













ニチモ 1/500

ニチモの1/500航空母艦のシリーズはこれまでに主に赤城、瑞鶴、飛龍などを複数
に渡って製作してきましたが、今回は製作2回目となる空母翔鶴です。

最近1/700でも挑戦したマリアナ沖海戦時の年代設定で、先に製作した1/700と
ほぼ同じ内容の兵装の変更を施しました。

雑誌や模型写真集の作例でもあまり扱われる事がないマリアナ沖海戦時の翔鶴で
すが、当時最新の装備を追加した精悍な姿は個人的にはとても気に入っています。



***実艦について***

航空母艦翔鶴は、翔鶴型航空母艦の1番艦として1937年12月12日に横須賀海
軍工廠にて起工、1941年8月8日に竣工しました。

竣工時の主要要目は基準排水量25675t、満載時排水量32000t、全長257、5m
全幅26m、蒸気タービン(16万馬力)、4軸速力34、2ノット、搭載機72機というもの
で、当時世界最新ともいえる能力をもった高速空母でした。

この翔鶴型空母は前補充計画にて建造された『蒼龍』『飛龍』の拡大改良型として
設計され、主力艦隊どうしの決戦前に敵空母部隊に先制攻撃を与えることが任務
とされました。

艦橋の配置は当初『飛龍』で行われた左舷中央部の配置で設計がなされていま
したが、『飛龍』の運用上の経験から不具合が問題とされ、従来の日本空母と同じ
右舷前方に改められました。

開戦後は太平洋戦争における日本海軍最初の真珠湾奇襲作戦に参加し、作戦
を成功させた後はインド洋作戦、史上初の空母対空母の決戦が行われた珊瑚海
海戦おいては米空母レキシントンを撃沈する戦果を上げたものの、翔鶴もまた命
中弾を受け飛行甲板を大破し帰港修復を余儀なくされました。

ミッドウェー海戦後に戦列に復帰した翔鶴は、残された正規空母の1艦として機
動部隊の中核を担い、南太平洋海戦などに出撃したものの、マリアナ沖海戦に
て米潜水艦の雷撃を受け、あえなく沈没しました。

太平洋戦争において供に期待された瑞鶴が常に武運に恵まれた艦であったこと
とは対照的に、翔鶴は常に被害担当艦という不運に見舞われることになりました。


***キット、組みたて、ディティールアップについて***

今回も洋上モデルではなく、Nichimoのフルハルキットをベースに船底までを
モデリングした状態で完成させました。

Nichimoの1/500空母翔鶴のキットは同シリーズの瑞鶴のキットと同じく、翔鶴型のプラキ
ットとしては現在最大のもので、飛行甲板には伸縮継手はもちろん、飛行機係
止用眼環までがモールドされたシャープな仕上がりのもので、舷外通路の各ス
ポンソン支柱も個別のパーツとして再現されていて実感的に作られています。


全長はおよそ50cm程のサイズのもので、このキットをベースに、船体の構造を実感
的に見せるために鋼板の重なりモールドや転落防止ネットなどのパーツを自作にて
追加再現したほか、ゴールドメダルモデルズの稀少な1/500空母用エッチングパーツ
や小西製作所の1/500艦船模型用精密真鍮製鋳造パーツ、真鍮線による空中線支
柱の自作、他キットインジェクションパーツの流用やテグスによる空中線再現など、手
間と予算と時間をかけ、じっくりディティールアップしました。

キット状態の設定年代は開戦時になりますが、上記のとおり、マリアナ沖作戦時の状
態とするために、各種改造して製作しました。



↑1/500翔鶴鶴右舷前方側面からの詳細



↑1/500翔鶴鶴右舷後方側面からの詳細



↑1/500翔鶴鶴左舷前方側面からの詳細



↑1/500翔鶴鶴左舷後方側面からの詳細


***船体まわりの各部ディティールアップ***

まず、バリとパーティングラインの目立つ船体をサンディングしたあと軽くサフを吹
いて表面を整え、鋼板継ぎ目の再現のために等間隔に切り出したマスキングテー
プを貼り付けたあとにもう一度サフを吹き、マスキング面とのサフの段差を作りました。

今回も横方向の鋼板継ぎ目だけでなく、縦の継ぎ目も追加するため作業を複
数回にわたって繰り返しました。


↑サフの塗膜の段差を利用して自作した鋼板継ぎ目モールドの様子です。


↑自作した鋼板継ぎ目モールド。その2

続いて側面の舷窓をピンバイスでさらいなおしてモールドのめりはりを強調して船体
の下地を完成させました。

船首のディティールアップですが、船首側面の吃水ゲージはデカールによる再現で、
船首および船尾の錨甲板上の錨鎖に精密チェーンを使用し、立体的に再現しました。

船尾はスクリュープロペラに金属パーツを使用しました。もちろん、右用と左用を4軸使
い分けてあります。


↑金属パーツに交換したスクリュープロペラ


手摺、タラップなどの精密パーツ類はゴールドメダルモデルスの1/500日本空母用
のパーツを中心として、小西製作所のエッチングパーツなどを使用し、舷側の乗員
が歩く部分に取り付けました。


***対空兵装のディティールアップ***

翔鶴のこの時代の対空兵装は主に高角砲と機銃の2種類ですが、すべての高角砲
スポンソンには射界制限枠を真鍮線を使って自作して追加しました

また、シールドなしの高角砲は、小西製作所製の精密真鍮鋳造パーツを使用しまし
た。 このパーツは観測室シャッターや背面の出入り口も再現された精密なもので、
キットに付属のものよりはるかに実感的です。


↑1群1番および3番高角砲スポンソン周りの様子です。


↑3群5番および7番高角砲スポンソン周りの様子です。


↑2群2番および4番高角砲スポンソン周りの様子です。


↑4群6番および8番高角砲スポンソン周りの様子です。


機銃は全てピットロード製を流用しました。1/700の若干オーバースケールですので
1/500でちょうどいい大きさになりました。


↑ピットロード製を流用した機銃群。


***発動機調整所試運転甲板***

発動機調整所試運転甲板には、試運転に備えるプロペラ付きのエンジンを配置しました。

星型シリンダーのエンジンは1/700スケールのカウリングを流用しもので、整備中のエ
ンジンを想定して3基並べてみました。


↑発動機調整所試運転甲板に整備中のエンジンを3基設置しました。



***飛行甲板のディティールアップ***

着艦標示や白線などは発色と耐久性を考慮してデカールは使わず、すべてマスキングして
エアブラシ塗装で再現しました。 艦名標示や風向き標示、伸縮継ぎ手やワイヤーも全て
塗装による再現です。


↑飛行甲板を上空から見た図。白線等の表示は全て塗装で再現しました。


遮風柵は汎用メッシュエッチングパーツを使用し、立てた状態を再現し、支柱は真鍮線で自
作しました。 


↑汎用メッシュと真鍮線で自作した遮風柵は模型映え優先で立てた状態にセットしました。



***救助ネットの自作***

船首と船尾の人員救助網および船体中央部の飛行機救助網はゴールドメダルの空母用エ
ッチングパーツに付属のものと、客船用のフェンスエッチングパーツと真鍮線を使って自作し
たものの2種類を用意し、取り付けました。

 実感をだすために網を少し弛ませた状態で資料を参考に場所を選んで取り付けました。


↑フェンスと真鍮線で自作した船首側人員救助網の様子。船尾のものも同じ仕様です。



↑一方こちらは船体中央部の飛行機救助網の様子です。


***エレベーター***

後部エレベーターは零式艦上戦闘機を配置して少し落とし込んだ状態として発艦準備中の
動きのある情景としました。


↑甲板断面もマーカーでパンチング構造を再現しました。


***艦橋、マストなどのディティールアップ***

艦橋は窓枠を開口し、ジョーワールドの窓枠エッチングパーツで窓枠を再現しました。その他、
空中線支柱は真鍮線で自作しました。 


↑ディティールアップされた艦橋の全景です。


↑ディティールアップされた艦橋。別角度から

マリアナ沖海戦時に装備されたと言われる2号1型電波探信儀はゴールドメダル製のエッ
チングパーツです。

艦橋の前後に増備された機銃ブルワークはキットでは用意されていないのでガンプラなどに
使用する汎用のバーニアを流用しました。

起倒式マストはトラス部分のみにゴールドエダルモデルズの1/500空母用エッチングパー
ツを使用し、起倒機構はキットのパーツを切り取って使用しました。

***艦上機について***

艦上機はキットに付属している攻撃機がマリアナ沖海戦時と時代考証が合わないため、
今回は零式艦上戦闘機のみの搭載としました。 1/500の他空母キットより流用し、キット
定数より多めの11機を搭載しました。

日の丸表記などの再現にはデカールは一切使わず塗装で再現し、ゴールドメダルの
エッチングパーツでプロペラを再現しました。 

艦上機の主脚はゴムタイヤの部分を塗装し、ゼロ戦の引き込み脚の内側にはシルバー
を塗装してカラーリングのメリハリをつけました。また、機数のおよそ半数に増槽を装備さ
せました。


↑飛行甲板上に並べられた零式艦上戦闘機


***空中線について***

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0、128mm)を着色して使用しまし
た。取りつけは全て瞬間接着剤によるものです。

この空中線は着色してはいますが、もともとは極細のテグスですので糸のように
メンテナンスの心配はいりません。空中線支柱は一部真鍮線で自作しました。

また、部分的に白塗装にてガイシを再現しました。


***塗装について***

塗装はスケール性を考慮した上で船体やパーツの本塗装の前には塗装後の塗
膜の発色を良くするために、船体外舷色部分にはホワイトサーフェーサーで下地
を作り、船体加工のところで前述させていただきましたように鋼板継ぎ目のモールドを追加。

木甲板部分には白下地のあとに黄燈色の下地を吹いて黄下地を作って使い分けました。

船体色の再現にはエアブラシを使い、白下地の上からGSIクレオスの32番を吹き
つけました。

木甲板色の再現には黄下地の上に、今回はGSIクレオスのタンをベースに吹き付け
た後、クリアーイエローをコートして更にタン、さらに再びクリアーイエローと、薄く塗り
重ねていくことで色調を立体的に表現しました。

飛行甲板の表示は艦名標示、風向き表示、船尾着艦標示も含めて全てマスキン
グによる吹きつけ塗装で仕上げました。デカール再現と異なり、耐久性なども考慮
してあります。




***台座について***

台座はキットのプラ製のものは使わずに、今回はタイコびきのえんじゅ材を加工して自作しました。

今回は磨きこんだ上にクリアーコーティングで仕上げ、ナチュラルな仕上りとしました。

また、船体を固定する台座は小西製作所のブラス製のもので、ネジ固定で安定させてあります。


↑木製台座と真鍮製の飾り脚で高級感を演出しました。





**総括**

マリアナ沖海戦時の翔鶴はどちらかというと異色の作例と言えるかもしれません。しかしHIGH-
GEARedが幼い日に見た映画「連合艦隊」では21号電探を装備した瑞鶴の艦橋周りのセットと
特撮模型が登場していたために、「翔鶴型航空母艦は艦橋にレーダーが付いている」というイ
メージが出来上がってしまい、現在でもそれが多少尾を引いているようで、模型でも「これこそ
翔鶴型空母」というイメージで完成しました。

ディティールアップはこれまでとかわりのない内容ですが、基本的な造形やバランスが良好な
キットですので、これだけでも充分精密感のある良い仕上がりになります。

翔鶴型航空母艦は大戦初期には世界を代表する近代的な航空母艦の1隻でしたが、大戦
中期から後期にかけて、当時の日本海軍の最先端の装備を追加した姿はなかなか魅力的で
す。 最先端の技術と装備で期待された航空母艦だけに、僚艦瑞鶴と比較して活躍の場も少
なく、短命で終わったのがなんとも悔やまれるしだいです。






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