この作品は、2012年3月の奈良模型愛好会春展に出展する目的で製作した、フェラーリ512Sです 「512」の数字を持つフェラーリは多いですが「512S」は、1970年代にスクーデリアフェラーリが主に耐久レースを戦うために投入したスポーツプロトタイプレーシングカーです。 当時のスポーツカーレースの世界では恐ろしくハイパフォーマンスなポルシェ917シリーズが活躍しており、残念ながらそれらに対抗することはかないませんでしたが、70年のセブリング12時間で唯一の優勝を飾りました。 70年のル・マン24時間レースにおいては、ワークス、プライベーターを含めて12台もの大量エントリーをして注目を集めるものの、完走はわずか3台という散々な結果に終わり、同年のル・マンを舞台にした映画「栄光のル・マン」でも、ポルシェの逆転優勝を演出する、少々残念な役回りとなりました。 |
まずは非常に特殊な分割構成の図です。ボディが下回りでみっつに分割され、ボディサイドのパーツは底面、側面、上面の一部を兼ねているという珍しい構成です。そのため、ボディーカラーの濃淡をしっかり合わせておかないと、組み立てたあとに「部分的に色が違う」ということになるので注意が必要でした。 |
内部構造の様子。 キットはフロント周りのモノコック構造やリアのスペースフレームまでが再現されて60〜70年代のスポーツプロトタイプカーの雰囲気が充分に出ており、車好きなら結構萌える雰囲気に仕上がっていると思います(笑) ここまでくればスペアタイヤを装着したいところですが、キットにはタイヤは5本入っているものの、ホイールは4本なので残念ながら断念となりました。 |
分割構成が非常に特殊なキットなため、組み立ては本当に大変ですが、組みあがっていくにつれて、このキットの意外(と言っては失礼ですが)なほどの出来のよさに驚かされました。
このキットの設計はどうもエレールのようでして、年代的にも古く、車体から細いフレームで宙吊りになったエンジンや、ミッションに直接マウントされるサスペンションから、ホイールディメンジョンをカウルにピッタリ合わせるのは至難の業というほかはありませんでした。 せっかく塗り分けたシャシーが、カウルを被せるとほとんど見えなくなるは少々残念ですが、見える範囲でシートにスエード地を貼ったり、シートベルトやプラグコードを再現するなどの、簡単なディティールアップを施しました。 |
車高やアライメントは、ホイールハブに加工を施して調整(3mm程度ダウン)していますが、なんとかそれなりに形になったと思っています。 |
ボディ塗装はガイアノーツのサーフェーサーエヴォブラック→クレオスのMrサーフェーサー1200(グレー)→フィニッシャーズのファンデーションホワイト→ファンデーションピンク→リッチレッド→クレオスMrカラーGXスーパークリア3という順番です。 フィニッシャーズカラーはこれまでの製作で実験的にディープレッド、シルクレッドと順番に使用し、今回はリッチレッドを初めて使用しましたが、個人的にはこの色が普段良く見ているSTANDOXの『FER300/12』に一番近いという印象を受けました。(同じFER300/12でもグラスリットやPPGとは色目が違うようですし、ひとくちにロッソコルサと言っても300/6や300/9など、時代によって違うカラーコードがあり、512Sの当時の塗装についても詳しいことはわかりませんが、フェラーリの赤のイメージとしては、これまで製作してきたカーモデルの中でひとつの完成形となりました) |
今年はカーモデルの製作においては「ル・マンを走ったフェラーリ」を個人的題材として、ほかに348GTC、F40GTEを製作予定に入れているのですが、今まで悩んでいた赤塗装に関しては、今後はこれで統一していくことができそうです。 今回の512Sの製作は、フェラーリのミッドシップスポーツプロトタイプの魅力に目覚める良い機会になりましたので、余裕があれば、250LMや330P4も作ってみたいですね。 |
このフェラーリ512Sは毎日風呂上りの一時間程度を使って地道に作業を積み重ねていたのですが、今回の春展では私にとって唯一のカーモデルでしたので、無事完成に安堵しているところです(笑) 512Sは、1970年の世界選手権で ポルシェにフルボッコにされたという印象ばかりが目立つ少々気の毒なマシンではありますが、クラシカルとモダンのちょうどの中間に位置するデザインがとても気に入っていて、以前からぜひ製作したいと考えていた車でした。 組み始めた直後はなんともいえない独特の分割構成に「本当に無事に完成するのか?」と、不安ばかりが先行したものですが、いざ作業を始めてみると、実車のフレーム構造を忠実に再現した本格的なパーツ構成にも関わらず、組立説明書の着色指定がありえないような適当さだったこともあり、自分で実車の資料を調べて「いかに実車に近い模型にするか」という挑戦意欲がこれまでにないくらい沸きあがり、その意欲が完成まで途切れることなく続くことになりました。 また、当時のフェラーリのスポーツプロトタイプは、キャビンおよびフロント周りがアルミモノコック、エンジンをマウントするリア周りがスペースフレームという構成でしたので、イマドキの高性能塗料を使ってモノコックをシルバーに塗装する楽しみもありました。 残念ながら、シルバー塗装を施したモノコックは、ボディを被せるとほとんど見えなくなりましたが、カーモデルを作っていて、これほど気持ちが盛り上がったのは初めてのことで、組み立てには苦労しましたが、ある意味このキットとは素晴らしい出会いだったという気がします。 |