1/500スケール 航空母艦 飛龍 ミッドウェー海戦時
NICHIMO製インジェクションキット













ニチモ 1/500

今回の作品は以前に製作した1/500航空母艦飛龍真珠湾作戦時に引き続いて
1/500航空母艦飛龍のミッドウェー海戦時を再現したディティールアップ品です。

飛行甲板にはこの海戦時に施された大きな日の丸の表示を再現し、山口多聞
提督が命じた米空母への反撃のための第一次攻撃隊の発艦準備中の様子を想
定し、零戦と艦爆が飛行甲板上に並べられているそのときを情景としました。

HIGH-GEARed's HOBBY WORKS!!では空母飛龍の作例が多いのでこれま
でも幾度か重複してきましたが、実艦の解説です。


***実艦について***

昭和5年のロンドン軍縮条約下において建造された空母が『蒼龍』『飛龍』であり、
昭和9年度軍縮拡充計画によるものでした。

設計は飛龍に先駆けて昭和12年度に完成した蒼龍の運用実績を踏まえた上で
各種改良が施され、発艦する艦載機の邪魔にならないようにと艦橋を船体中央部
に配置することになり、右舷側だと煙突の排煙の影響を受けるという理由から左舷
側に配置されました。

この改良は操艦性を左右する重量配分という点では好ましい配置ではあったので
すが、これは着艦する艦載機に艦橋が起こす気流の影響が働いて結果的には艦
載機の搭乗員には評価されませんでした。(この教訓から以降の空母では右舷側
の配置となります)

しかしこうした問題は指摘されたものの飛龍の設計は世界的にも極めて優秀なもの
で、34ノットを越える超高速性能、強靭な防御力、57機という搭載機数など、当時
最新鋭の近代型空母として活躍が期待されました。

連合艦隊史において知勇兼備の名将として知られる山口多聞提督指揮のもと、そ
の戦歴も華々しいもので昭和16年12月8日の真珠湾攻撃をはじめとして、ウェーキ
攻略、ジャワ、ニューギニア方面掃討戦、インド洋作戦においては飛龍発艦の艦爆
隊が脅威的な命中率で英国空母「ハーミス」重巡洋艦「コンウォール」を撃沈する
成果を上げました。

ミッドウェー海戦においては、情報が錯綜する中での兵装転換作業の最中、飛来
した米国艦爆隊急降下爆撃によって寮艦『赤城』『加賀』『蒼龍』の3大空母が大損
害を被る中、唯一無傷で生き残り、米空母への攻撃を続行、米空母「ヨークタウン」
を航行不能に陥れました。しかし、残り2隻の米空母を発艦した攻撃隊からの空襲
で直撃4発、至近弾2発を被弾し、航行不能に陥りました。

その後、飛龍は駆逐艦「嵐」「野分」によって雷撃撃沈処分がなされましたが沈没
せず、後に味方空母鳳翔の偵察機によって漂流するすがたを発見されたものの、
その後2度とその姿を見られることはありませんでした。


***キット、組みたて、ディティールアップについて***

今回も洋上モデルではなく、Nichimoのフルハルキットをベースに船底までを
モデリングした状態で完成させました。

Nichimoの1/500空母飛龍のキットは、プラキットとしては現在最大のもので公式図
を元に設計されており、アオシマの1/700キットがリニューアルされるまで長年にわ
たってモデラーから親しまれた名キットで、1/500のビッグスケールモデルの利点
を生かし、舷外通路の各スポンソン支柱なども個別のパーツとして再現されていて
実感的に作られています。

全長はおよそ45cm程のサイズで、このキットをベースに船体の鋼板継目モールド
を手作業にて追加し、ゴールドメダルモデルズの稀少な1/500空母用エッチングパー
ツやジョーワールドのエッチングパーツ、小西製作所の1/500艦船模型用精密真鍮
製鋳造パーツ、真鍮線による空中線支柱や無電アンテナの自作、他キットインジェ
クションパーツの流用やテグスによる空中線再現など、多くの手間と時間をかけて
各部をじっくりとディティールアップしました。


↑左舷からの全体像


↑右舷からの全体像


↑Nichimoの1/500空母キットでは飛龍だけがWAVEのTケースに収納可能です。


***船体と飛行甲板のディティールアップ***

船体はまず全体をサンディングしてバリやパーティングラインの修正をおこない、
舷窓を全てピンバイスでさらいなおしてモールドのメリハリを強調しました。

続いて舷側の鋼板の重なり再現のために細切りのマスキングテープを等間隔に
貼り付け、サーフェーサーを厚めに吹き付けて塗膜の階層を作って下地としました。


↑船体舷側の様子。鋼板の重なりはサフの階層を作ることにによって追加再現しました。

手摺、タラップ、転落防止ネットなどの空母独特のパーツ類はゴールドメダルモデ
ルズの1/500日本空母用のパーツと客船フェンス用のエッチングパーツを使用し
てディティールを追加しました。

船首船尾に設けられている救助ネットには真鍮線で支柱を自作し、実物同様にた
るませてとりつけました。

船首フェアリーダーはジョーワールドのエッチングパーツで再現し、喫水ゲージを
スライドマークで追加しました。


↑船首のディティール。

船首飛行甲板上にはミッドウェー海戦時の日本空母の特徴のひとつである日の丸
表記を書き入れました。これは珊瑚海海戦での戦訓に基づき塗装されたものです。

飛行甲板上の遮風柵はメッシュ状のエッチングパーツを使用して立てた状態を再現
しました。また、支柱も真鍮線を使用して自作しました。


↑飛行甲板上の遮風柵の様子


***高角砲、機銃など、対空兵装のディティールアップ***

シールドなしの12,7cm連装高角砲は小西製作所の高級真鍮鋳造パーツを使用し
て大幅にディティールアップしました。精密かつ重量感のある仕上がりになってます。

また、この高角砲を据えるスポンソンには真鍮線で射界制限枠を自作し、真鍮線
でジャッキステーを自作し、追加しました。


右舷船首側高角砲スポンソン。精密真鍮製高角砲等の様子


左舷船首側高角砲スポンソン。自作の制限枠やジャッキステーなどの様子も


右舷船尾側高角砲周り。起倒マストと空中線の様子も


左舷船尾側高角砲スポンソン周りの様子

25mm3連装機銃は1/700インジェクションパーツからの流用です。


***艦橋、マスト、煙突などのディティールアップ***

煙突はジャッキステーなどを真鍮線で追加し、格子を自作して実物どおりの開口さ
れた形状に改造しました。


右舷側に装備された煙突。

艦橋は防空指揮所ブルワークの位置を少し調整し、無線電話用アンテナを真鍮
線で自作して窓枠をジョーワールドのパーツでエッチング化しました。


↑艦橋周りの様子。


↑艦橋別角度から

艦橋背面のマストは真鍮線で自作しました。


↑自作のマスト。艦橋背面の転落防止網の様子も

空中線支柱は起倒式マストのトラス部分をエッチングパーツに交換し、基部の
ディティールはプラキットのパーツを生かして倒した状態として再現しました。マ
ストトップは真鍮線による自作で、その他の空中線支柱も真鍮線を使って自作し
たものです。
br 
↑空中線支柱と空中線の展開


***艦上機について***

今回の飛龍に搭載した艦上機は敵空母への第一次攻撃隊の設定に合わせて発
艦準備中の零式艦上戦闘機21型を5機、同じく発艦準備中の99式艦上爆撃機を
6機(ずべて爆装)の合計11機としました。

プロペラは零戦、艦爆ともにエッチングパーツを使用して再現し、零戦と艦爆のプ
ロペラは大きさの違うものを使用してサイズを調整しました。零戦のスピンナーカバ
ーは大きさの合うプラ片を接着したものです。

艦上機には主に空母飛龍所属機を示す2本の青帯を塗装で再現し、うち零戦二
機に加賀飛行隊所属機の赤二本の帯を書き入れました。

その他のマーキングも全て塗装によるものですのでデカールと比較して耐久性に
優れます。背面は、零戦には増槽を、艦爆には爆弾を搭載しています。


↑飛行甲板上の零戦21型。


↑同じく飛行甲板上の九九艦爆。


***空中線について***

空中線の再現には今回は0、6号釣り糸(太さ0、128mm)を着色して使用しまし
た。取りつけは全て瞬間接着剤によるものです。支柱は一部自作しました。


***塗装について***

塗装はスケール性を考慮した上で船体やパーツの本塗装の前には塗装後
の塗膜の発色を良くするために、ホワイトサーフェーサーで下地を作った白
たちあげにて塗装しています。

船体色の再現にはエアブラシを使い、白下地の上からGSIクレオスの32番を
吹きつけました。エレベーターと飛行甲板鋼板張り部分部分はアクセントを
つけるため、若干トーンを明るめにしてあります。br 
木甲板色の再現は、木の色調を出すためにGSIクレオスのタンをベースに吹き
付けた後、ウッドブラウン→黄燈色→を薄めたものをコートし、さらに薄めたタン
を仕上げに吹きました。重ね塗りで立体的な発色を狙っての作業です。

飛行甲板上の標示は全て塗装で施しました。デカールと比較して発色も耐久
性にも優れます。

艦載艇は全てひとつひとつ筆塗りの手作業で塗りわけ、最後の仕上げに艶消し
クリアーをオーバーコートして質感を統一しました。

また、今回から塗装面の乾燥には専用のマイナスイオンドライブースを使用し
て仕上げましたので、屋外乾燥と比べて落ち着いた塗膜となりました。


↑全体の色調。真上からの全体像



**総括**

HIGH-GEARed's HOBBY WORKS!!の模型ギャラリーによく登場する飛龍ですが、
やはりスタイリッシュな艦容と、太平洋戦争の運命の海戦にて奮戦したという点で人
気のある艦であるという点が大きいと思います。

真珠湾攻撃時もミッドウェー海戦時も、装備という点ではあまり差のない艦ですので、
飛行甲板上の日の丸標示以外には出撃する攻撃隊の考証をワンポイントに置いて
みました。

1/500スケールでは1/700のように艦上機の別売りがされていないので機数まで完
全再現とは行かなかったのですが、空母加賀所属の零戦を加えるなどして飛龍反
撃の雰囲気が出せたのではないか?と思ってます。

ところで最近ネットや雑誌で1/500空母の作例を少しずつ良く見るようになってきました。

最近、小西製作所の社長さんと半日近くお話させていただく機会があったのですが、その
ときに、Nichimoはもう新商品開発をする予定はないという話を聞いて、もう終わりかかっていた
ジャンルかと思って残念に思っていたところだったので、こうした機会にまたぜひこのスケール
の艦船模型が活気付いてくれたら嬉しいです。





MODEL ARTに戻る


左側にメニューページが表示されない場合はここをクリック

艦船模型製作代行 モデルファクトリー ハイギヤードはこちら

スケールモデル完成品販売ネットショップ CHERRY&ANCHORはこちら

■管理人オススメ!本格海戦ゲームアプリ「蒼焔の艦隊」■


↑Android版のダウンロードはこちら↑

↑iOS版のダウンロードはこちら↑

フル3Dで作成された艦艇で迫力の大海戦を勝ち抜いていくゲーム。無料にて配信中!(一部有料アイテムあり)






inserted by FC2 system