1/500スケール 航空母艦 瑞鶴 エンガノ沖海戦時
NICHIMO製インジェクションキット













ニチモ 1/500

今回は前回の1/500航空母艦翔鶴に引き続いてギャラリー初登場のニチモ1/500
スケールの空母瑞鶴(ずいかく)を製作しました。

基本的には同シリーズの翔鶴の箱換え、説明書換えというキットで内容には大
して差はありません。今回はエンガノ沖海戦参加時の航空母艦が施した対空、
対潜迷彩をデカールなどに頼らず全て塗装で再現するという方法で製作しました。

また、前回翔鶴の時に行った鋼板継ぎ目の再現以外に、迷彩以外の大戦後期
の空母の特徴でもある舷窓を閉そくした跡なども新たにディティールを追加しました。

舞台設定はエンガノ沖にて、航空母艦瑞鶴最期の戦いに備えて直衛戦闘機の
零式艦上戦闘機を発艦させるべく、飛行甲板に並べられようとしているその時を
情景としました。

船体の塗装は捷一号作戦当時の色彩を再現し、上記のように対空、対潜迷彩装
の様子をマスキングによるエアブラシ塗装で再現しました。
 


***実艦について***

航空母艦は瑞鶴は姉妹艦の翔鶴が大戦中、常に被害担任艦であったことに反
して、日本海軍屈指の武運艦として有名で、数々の大海戦に参加するも、ほとん
ど損傷を被ることがなかったことでよく知られています。

航空母艦瑞鶴は翔鶴型空母の2番艦として計画され、これまでに建造された大
型空母赤城、加賀、中型空母の蒼龍、飛龍、小型空母の鳳翔や龍驤によって空
母設計の技術的問題を解決していた日本海軍は、総力をあげてこの瑞鶴建造に
着手し、昭和14年11月27日に進水し、16年9月25日に待望の正規空母として竣工
しました。

開戦時、瑞鶴は真珠湾攻撃部隊の主力艦の1艦として作戦に参加し、58機の攻
撃隊をハワイに向けて出撃させました。 その際、瑞鶴飛行隊は未帰還機ゼロとい
うすばらしい活躍をし、栄光の初陣を飾りました。

その後はラバウル攻略戦を支援し、機動部隊と合同でインド洋作戦に参加。史上
初の空母対空母の激戦となった珊瑚海海戦では姉妹艦翔鶴が米攻撃隊の攻撃
によって大損害を被るも、瑞鶴はスコールに隠れて巧みに敵機の攻撃を避け、米
空母レキシントンを撃沈、ヨークタウンを大破させる戦果をあげました。

ミッドウェーでの機動部隊の敗戦の後は、南東方面に進出して第二次ソロモン海戦
そして南太平洋海戦に参加して翔鶴、隼鷹と協同で米空母ホーネットを撃沈して東
京空襲の仇をうち、エンタープライズを大破させる戦果をあげました。 瑞鶴はこの
海戦においても被害を受けず、呉で電探追加などの改装を行ったあと、トラック島
に進出しました。この時、瑞鶴飛行隊は「い号作戦」「ろ号作戦」に参加しました。

昭和19年のマリアナ沖海戦においては空母大鳳の沈没の後、機動部隊旗艦の
任を引き継ぎ、6月20日には艦橋後方に一発の命中弾を受けたものの戦闘航海
に支障はなく、無事に内地に帰港します。

10月17日、捷一号作戦の命令が下り、在泊中の機動部隊はレイテに向かって出
航しました。この艦隊はハルゼー提督率いるレイテ湾のアメリカ機動部隊を北方に
誘致し、栗田提督が率いる戦艦大和、武蔵を中心戦力とした戦艦部隊をレイテ湾
に突入させるための囮艦隊で、瑞鶴以外に瑞鳳、千歳、千代田の4空母、伊勢、日向
の2航空戦艦を中心とするまさに生還を期さない決死の部隊といえるものでした。

10月25日早朝、瑞鶴はゼロ戦以外の爆装戦闘機5機、天山艦上攻撃機4機、彗星
艦上爆撃機1機の残存航空兵力をクラーク基地に移動し、残った直衛戦闘機のみで
米攻撃隊を迎撃しました。

第一波の攻撃では右舷後部に魚雷を受け、操舵不能に陥り第二派攻撃では通
信施設が破壊されて旗艦を軽巡大淀に移し、第三派の攻撃では3本の魚雷を両
舷に受け、2時24分3年にわたって歴戦を重ねてきた武運艦瑞鶴も遂に力尽き、
フィリピン沖にて最期を遂げました。 

この戦いの様子は艦船ファンにはおなじみの映画『連合艦隊』でも描かれている
のでご存知の方も多いと思います。


↑模型の全長は約50cm、ブラス削りだし台座仕様です。

側面の対潜迷彩は空母を別艦種にみせるために工夫して描かれたものです。


***キット、組みたて、ディティールアップについて***

今回は洋上モデルではなく、Nichimoのフルハルキットをベースに船底までを
モデリングした状態で完成させました。

Nichimoの1/500空母瑞鶴のキットは同シリーズの翔鶴のキットと同じく、プラキ
ットとしては現在最大のもので、飛行甲板には伸縮継手はもちろん、飛行機係
止用眼環までがモールドされたシャープな仕上がりのもので、舷外通路の各ス
ポンソン支柱も個別のパーツとして再現されていて実感的に作られています。


↑スポンソン支柱とスポンソン下缶室吸気口などの様子。


全長はおよそ50cm程のサイズのもので、このキットをベースに、船体の構造を実感
的に見せるために鋼板の重なりモールドや舷窓の閉そく跡のモールドを手作業で
追加再現したほか、ゴールドメダルモデルズの稀少な1/500空母用エッチングパー
ツや小西製作所の1/500艦船模型用精密真鍮製鋳造パーツ、真鍮線による空中
線支柱の自作、他キットインジェクションパーツの流用やテグスによる空中線再現
など、これまでぶ製作した1/500航空母艦以上の材料費と手間と時間をかけて各部
をじっくりディティールアップしました。


***船体のディティールアップ***

船体はまず全体をサンディングしてバリやパーティングラインの修正をおこない、
舷窓の閉そく跡を再現すべく、舷窓の大半をパテで埋め、一部にプラリベットを
貼り付け、大戦後期の日本艦艇独特の舷窓閉そく跡を再現しました。

高い位置にある舷窓はいつもどおりピンバイスで開口して、閉そくされた舷窓と
されてない舷窓のモールドの差とメリハリを強調しました。

続いて舷側の鋼板の重なり再現のために細切りのマスキングテープを等間隔に
貼り付け、サーフェーサーを厚めに吹き付けて塗膜の階層を作って下地としました。


↑舷窓は一部パテで埋め、プラリベットを貼り付けて閉そくした状態を再現しま
した。鋼板の重なりもサフの階層を作ることにによって追加再現しました。


↑製作中のカット。塗装前の船体舷側の様子。


船首のフェアリーダーはジョーワールドの1/700フェアリーダーエッチングパーツ
から大きさのあうものを流用し、錨鎖はフラグシップの極細チェーンを使用し、立体
感のある仕上がりとしました。


↑船首のディティール。スポンソンに隠れていますが錨鎖も精密チェーン化しました。

船首喫水ゲージはデカールによる再現です。

空中線支柱は起倒式マストのトラス部分をエッチングパーツに交換し、基部の
ディティールはプラキットのパーツを生かして倒した状態として再現しました。ま
た、その他の空中線支柱は真鍮線を使って自作したものです。

艦橋は遮風板をプラ材で自作して装着し、各部に手摺とタラップを配して窓枠
をジョーワールドのエッチングパーツに交換しました。

防空指揮所の位置は少し前方に調整し、側面の空中線支柱も真鍮線を使っ
て自作しました。 艦橋前後にある3連装機銃は、キットではブルワークの再現が
なされていなかったので、ピットロードの1/700装備セットから形状の合うものを選
択し、流用しておきました。


↑艦橋周りの様子。


***飛行甲板のディティールアップ***

対空迷彩の再現にはデカールは一切使わず、4色の迷彩と白線表示のすべ
てをマスキングによるエアブラシ塗装で再現しました。

飛行甲板の迷彩には諸説あるようですが、ここでは天山発艦のニュース映画の
後方機載映像で確認されている『目』の字に似た輸送船の貨物ハッチに似せた
パターンを含む比較的新しい考証のものにあわせました。


艦首飛行甲板まわりの迷彩塗装の様子

遮風柵は汎用メッシュパーツから切り出して立てた状態を再現、背面には柵を
操作する支柱を自作しました。

飛行甲板周りには2種類のサイズの転落防止ネットを再現。客船用のフェンス
エッチングパーツを流用して船首と船尾には支柱を追加し、実物同様にたるま
せてとりつけました。

後部エレベーターは稼動中の設定で少し落とし込んだ状態としました。


***機銃、高角砲など対空兵装のディティールアップ***

機銃、高角砲スポンソンにはゴールドメダルモデルズの1/500エッチングパーツか
ら手摺とタラップを多く追加し、今回も航空母艦独特の舷外通路のせせこましさ(笑)
を再現しました。

九六式三連装25ミリ機銃機銃は1/700ハセガワキットに付属していた機銃が精密な
割りにオーバースケールで1/500換算でちょうどよかったので流用し、シールドのない
八九式12、7センチ連装高角砲は全て小西製作所の高級1/500精密鋳造パーツに
交換しました。

このメタル製の高角砲はジャッキステーや背面の観測室の出入り口まで再現された
精密感あふれるメタルパーツです。

また、高角砲周りには真鍮線を使って射界制限枠を自作し、空中線支柱も自作のも
のを追加しました。


↑左舷前方高角砲スポンソン周りの様子。真鍮製精密高角砲の様子など


↑同じく左舷後方高角砲スポンソン周りの様子



***艦上機について***

艦上機は今回はエンガノ沖海戦において、艦上機のほとんどをクラーク基地に移した
後、残った直衛戦闘機を発艦させて米攻撃隊を迎撃しようとしている場面を想定しま
した。

この時の搭載機は零戦のみということですので、今回はキットに付属の零式艦上戦闘機
を52型の色彩に塗装し、7機を飛行甲板上に搭載しました。

プロペラはゴールドメダルモデルズの1/500日本空母用エッチングパーツから使用し
て全機再現、零戦のスピンナーカバーはプラから削りだしたものを取り付けて再現し
たものです。 


飛行甲板上の零式艦上戦闘機


艦上機のマーキングもデカールは一切使わず、すべて塗装で仕上げました。


***空中線について***

空中線の再現にはいつもと同じく0、6号釣り糸(太さ0、128mm)を着色して使
用しました。取りつけは全て瞬間接着剤によるものです

空中線の一部には白塗装でガイシを再現し、空中線支柱は一部真鍮線で自作しました。


***塗装について***

塗装はスケール性を考慮した上で船体やパーツの本塗装の前には塗装後の塗
膜の発色を良くするために、ホワイトサーフェーサーで下地を作った白たちあげ
にて塗装しています。

また、前述のように鋼板の重なりを再現するための階層を作ったサーフェーサー
処理と、舷窓の閉そく状態を再現すべく、パテ処理とリベット貼り付けの作業を施
してあります。

船体色の再現にはエアブラシを使い、白下地の上から対空対潜迷彩色を資料に
従って吹きつけました。


↑飛行甲板上対空迷彩塗装の全景。


迷彩色の再現のために使用した塗料は日本海軍空母迷彩専用色のGSIクレオ
スMrカラー艦艇色から外舷21号色と外舷22号色を使用、その他の部分はウッド
ブラウンとカウリング色で仕上げました。 

喫水ゲージ以外の広い部分にデカールは一切使用していないので耐久性など
も安心です。

最後の仕上げには艶消しのクリアーをコートし、質感を落ち着かせました。


↑船尾の様子。

船体以外の塗装面の乾燥には専用のマイナスイオンドライブースを使用して仕
上げましたので、屋外乾燥と比べて落ち着いた塗膜となりました。(船体はブー
スに収まりませんでしたが最も乾燥した天候の日を選んで塗装してあります)




**総括**

1/500翔鶴型空母は前回の翔鶴製作の際に軍艦色の作例を完成させたこともあ
るので、今回は違った色彩の作例ということでエンガノ沖海戦の状態としました。

この塗装の時に問題となる時代設定が所謂舷窓の状態と機銃の防盾の有無と
いう問題です。今回は舷窓のみを処理したのですが、鋼板継ぎ目の追加も相ま
って大戦後期の艦艇独特の雰囲気がでました。

対空迷彩のパターンは主に2種類の説があるようなのですが、今回はニュース
映画の写真でも確認されている貨物ハッチを模した迷彩のあるタイプを参考に
製作しました。 日本海軍の各空母の飛行甲板標示と対潜迷彩については、
学研から全ての空母の図面を総まとめにした資料がリリースされていますので、
これを使えば便利です。 1/500スケールの迷彩空母もなかなか味があって
良いです。

幼い頃、映画『連合艦隊』を観て、その活躍を知った瑞鶴。以前から特に思いいれ
のある艦として、たくさんのキットを組み立ててきたものですが、瑞鶴の模型という
ものは武運に恵まれた艦として、展示するにもひときわ高い価値をもつものなのか
もしれないと思いました。





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