1/700スケール 戦艦 大和 菊水作戦時時 3回目
TAMIYA製インジェクションキット













田宮模型 1/700

このギャラリーをご覧になってる方々は『また大和か』って思ったこ
とでしょう。(笑)

その時々の自分の技術の限界が見たい時、そしてリクエスト評が集ま
ったとき(笑)にこの1/700大和を作ることにしています。

理由はやはり、資料不足とはいえ、隅々まで良く知っている船である
からキットの不備を訂正しやすいということと、各種ディティールア
ップパーツが豊富で、その中から使うパーツを自分のセンスで選べる
ところが大きいでしょう。


今回、大和の再現に使用したキットとパーツ一式です。妥協なく仕上
げようと思えばこれだけの材料が必要です。その制作費はこのスケール
としては驚愕の3万円以上にもなります。

今回は外舷色の変更と、天幕支柱の増強、そして防空指揮所のディテ
ィールに拘って前作を更に焼き直してみました。

興味のある方は、前作、前前作と見比べてみてください。


今回も、ベースはもちろんインジェクションキットの中で大和では
最新作にあたるタミヤの1/700スケールニューキットです。

これをエッチングパーツ、レジンキャストパーツ、精密鎖、
真鍮砲身、真鍮線による自作パーツ、空中線、ピンバイス
加工やバリ&パーティングライン取りなどでディティールアッ
プしています。



ディティールアップの中心として使用したエッチングパー
ツは大和用のものだけで『ゴールドメダルモデル』『ピッ
トロード』『エデュアルド』の3種類を使用し、場所によ
って最適なものを使い分けました。これらは同じ大和用で
もそれぞれの部品のディティールが異なり、またゴールド
メダルにかけてるものがエデュアルドには含まれていたり、
またその逆もあったりするので贅沢な方法になり工数も増
えますが、その分見栄えのするものになります。



他にはジョーワールドの『応急舵(ボート用オール)』
『25ミリ機銃用盾』『精密窓枠』のエッチングパーツ、
機銃のベースやパラベーン、リールなどにピットロードの
艦船装備セットのディティールアップパーツを使用してい
ます。 プラパーツはピットロードのものの他に、今回はじ
めてファインモールドのクリアー成形の探照灯を使用し、
エバーグリーンのプラ材も種類を変更し、タミヤのプラ板
なども使用してスケール製を高めました。



大和のニューキットは他キットに比べ、艦橋基部や艦尾形
状など、既に最新の考証に近づいた設計になっていますが、
その後資料や生存者の証言、または写真解析によって新
たに発見された事実に基づいた完成品とするために、ピッ
トロードの大和用グレードアップキットのレジンキャスト
パーツを使用しました。


また、今回はこの大和用にオーダーメイドした木製ニス塗
り台座つきアクリルディスプレイケースも用意しました。


↑付属のアクリルケースに収めた様子。モデルの大きさは長
さ がおよそ38cm、ケースは特注のもので幅420mm×奥行120mm×高
さ120mmの木製台座のものです。


それでは、まずは艦首のディティールからです。


**艦首**

艦首のフェアリーダーはキットでは成形の都合か無視されてし
まっているため、ピンバイス加工にて菊花紋章サイドの切れ目
を再現しています。

錨鎖はアイコムのホビーチェーンを使用し、本物の鎖だけにし
かだせない立体感を表現しています。銅製のこの精密チェーン
を専用の黒染液剤でブルーイング処理して流しこみ用の瞬間接
着剤で固定しました。


フェアリーダー、錨鎖と菊花紋章


菊花紋章はエデュアルドのエッチングパーツを使用して、プラ
製より数段薄いスケール感の高いものに交換しました。

また、第一砲塔の前の波除け板近辺に並べられていたホーサー
リールは半円柱状の純正モールドを削り取り、実物と同じ円柱
状に成形されたピットロード日本艦船装備セットのインジェク
ションパーツに交換しました。後部幅砲バーペッドや航空作業
甲板も同様です。


ホーサーリール、天幕支柱等の様子

甲板の周りの手摺はエデュアルドのエッチングパーツで再現し、
手摺と一緒に並んでいる天幕支柱は0、3mmの真鍮線を切って2本
組み合わせ、自作したものです。瞬間接着剤で約110本の真鍮線
を1本1本固定してあり、これは艦首から航空作業甲板までずらり
と並ばせてあります。

第一、第二主砲の間に設置されている土嚢で組み上げられた簡
易ブルワークはピットロードのレジンキャストパーツを使用し
て再現しました。ピットロードの土嚢は「○型」に成形されて
いるため、これを「コの字状」に切削加工して、写真解析に合
わせた最新の考証による形状に改めました。

そこに置かれる機銃も、より新しい考証に従って25mm三連装機
銃から25m単装機銃を2基並べた状態に改めています。


**主砲**

主砲の砲室は、複雑な多角形の形状をはじめて正確に再現した
といわれるタミヤの大和キットのものをそのままベースとして
使用し、その他真鍮パーツやエッチングパーツを使用して仕上
げました。

砲身にピットロードの真鍮製砲身を使用しました。正確なスケ
ール感と真円形状、そして正確に開口された砲口でスケール感
をだしています。


主砲に各種パーツを取りつけてディティールアップしていく様子。
砲塔上の手摺はゴールドメダルモデルズの専用品を使用し、砲
室側面の梯子はエデュアルドのエッチングパーツ、第二、第三
砲塔天蓋の機銃座ブルワークはキットの円形のものからより正
しい考証に基づいて再現されたピットロードの大和グレードア
ップキットのレジンキャストパーツを使って再現しました。

防水布ガードはエデュアルドのエッチングパーツによるもので
第一砲塔天蓋から側面にかけて伸びている電路は0、3mmの真鍮
線を折り曲げて再現した自作です。


主砲およびバーペッドの各種ディティールアップの様子

第二砲塔のバーベット側面に見える補強板はエバーグリーンの
0、75mm×0、75mmのプラ材を貼りつけて表現しました。第二
砲塔バーベットと副砲バーペッドの側面に見える弾薬箱も同じ
ようにエバーグリーンのプラ材を使用して再現したものです。

側面に見えるパラベーンはキットにはモールドされていない
ため、ピットロードの日本艦船装備セットのディティールア
ップ用インジェクションパーツを使用して再現しました。


主砲およびバーペッド画像、別角度から


サイコロ状の測距儀窓は灰色9号による塗装とスミ入れによっ
て再現しています。


**副砲**

副砲も全面的にディティールアップを施しました。砲塔天蓋の
手摺はゴールドメダルモデルズのもので、防水布ガードと空中
線支柱、引き戸式の出入り口がエデュアルド製のエッチグパー
ツです。バーペッドのディティールアップもエデュアルドのエ
ッチングパーツによるもので、第一副砲バーペッドは補強板、
後部の出入り口、バーベット上の手摺や滑り止め鋼板まで再現
しています。後部副砲バーペッドは缶室吸気口や手摺などを再
現しています。

また、副砲塔サイドの放熱板スリットはスミ入れによる表現です。


第一副砲およびバーペッドの様子。エッチング多用です。


後部砲塔および、後部艦橋周りの様子です。バーペッドの吸気口など。

**機銃**

大和の最終状態に装備されていたシールドなし25mm三連装機銃
はすべてタミヤのキット純正パーツからピットロードの日本艦
船装備セットの2ピース構造のものに交換し、ジョーワールド
のエッチングパーツから96式25mm機銃用防盾をとりつけました。

ピットロードの機銃は静岡模型協同組合のリニューアルパーツと
比べて銃身が細く、左右にも場所を取らないし、このように防盾
などのパーツを使って後期型の機銃にアップグレードをすること
が容易なので重宝しています。

この防盾は昭和19年以降の日本海軍25mm三連装機銃に取りつけ
られたと言われるもので、ジョーワールドのパーツはエッチン
グでのみ再現可能なシャープな機銃の姿を再現するのに役立ち
ました。


防盾付きの機銃はプラとエッチングの3ps構造です


25mm三連装機銃のシールドありのものは、大和最終時には2種類
のシールドのものが備え付けられていました。初期型の丸型天
蓋のものと、後から取りつけられた戦時急造型の角型天蓋のも
のがあるのですが、タミヤキットには丸型天蓋のシールドしか
用意されていないため、戦時急造型の角型天蓋シールドをピッ
トロードのレジンキャストパーツから使用し、考証に順じた場
所に使い分けました。


写真左側が初期丸型シールド、右側が戦時急造角型シールド


**中央構造物**

中央構造物は高角砲甲板と高角砲を含めたほぼ全体に手摺を張り
巡らし、滑り止め甲板の表現はエデュアルドのエッチングパーツ
を貼りつけて再現したものです。


中央構造物にエッチングパーツを貼りつけてディティ
ールアップしていく様子です。


構造物には無数の出入り口と缶室吸気口のグリルをデュアルドの
エッチングパーツで再現し、梯子はゴールドメダルモデルズのパ
ーツを使用しています。


中央構造物のディティール

大和の特徴である美しい塔型艦橋は特に力をいれてディティー
ルを施しました。艦橋窓は第一艦橋、第二艦橋とも窓のモール
ドを削りとって開口し、ジョーワールドのエッチングパーツ
『精密窓枠Ver B JPE28』によって窓枠を再現しています。


艦橋を後から見たところです。タラップ、兵員待機所、測距儀
支柱などの各種ディティールアップの様子。


艦橋背面のタラップはピットロードの専用エッチングパーツを
使うことで手摺なども再現されて詳細なディティールを盛りこ
みました。


エッチングパーツによる窓枠再現の様子

伝令室、作戦室の窓モールドはピンバイスでさらいなおし、さ
らに海図室の窓をピンバイスで追加しています。第二艦橋前の
応急梯子はエデュアルドのエッチングパーツです。

防空指揮所のリノリウム貼りの床面は塗装によって再現し、2本
繋ぎ合わせた0、3mmの真鍮線をカットして自作した双眼鏡を並
べ、防空指揮所のディティールもしっかり再現しました。

観測室はキャットウォークとその手摺(ピットロードのエッチ
ングパーツ)や主砲射撃所頂部の手摺(ゴールドメダル)を再現
しました。


真上からのアングル、防空指揮所その他の様子

15メートル測距儀に関しては、補強板をピットロード、二号
一型電波探信義をエデュアルドのエッチングパーツにて再現し
ています。

また、艦橋基部兵員待機所や、メインマストの後下にある後部
電探室には窓モールドおよびエッチングによる出入り口を追加
して設備としての存在感を出してみました。兵員待機所の天蓋
には滑り止め鋼板の再現もエッチング板を貼る事で施してあり
ます。舷灯はプラバンを貼って着色した自作のものを使用しま
した。

煙突は開口し、フィンをピットロードのエッチングで再現して
います。このフィンはゴールドメダルのエッチングパーツの中
にも含まれますが、ピットロードのものはより立体的で16個の
細かいフィンを組みたてる精密な構造になっています。


開口し、フィンを再現した煙突をマストの様子


煙突の上部から。煙突周りの通路の様子や構造物上の
滑り止め鋼板のエッチング再現、クリアーパーツによ
探照灯などのディティールアップの様子。


艦橋から煙突に伝わる通路と煙突頂部に上る梯子はピットロード
とエデュアルドのものを通路を隔てて繋げて使用しています。

探照灯はファインモールドの『AM-19 日本海軍探照灯セット1
大和 武蔵用』から150cm探照灯のクリアーパーツを使用しました。

このパーツはその名の通りクリアー成形されているので、反射
鏡をシルバーに塗装し、レンズ部分を無塗装とすることで、透
明レンズを再現でき、実感的な雰囲気を作るのに役立ちました。


12,7cm連装高角砲周りも積極的にディティールアップを施
しました。シールド付きのものは手摺を装備し、シールドなし
のものは観測室部分の足を削って実物に基づいた形状に成形し
なおしてあります。

また、大和の高角砲の周りに設けられた射界制限枠のフレーム
は資料に従って0、3mmの真鍮線で自作したのものです。

マストに搭載された十三号電波探信儀はエデュアルドのエッチ
ングパーツを使用し、マスト全体にゴールドメダルモデルズの
梯子のエッチングパーツを貼りつけてあります。


**航空作業甲板**

ジブクレーンはピットロードの大和用エッチングパーツを使用し
たもので、カタパルトもおそろいでピットロード製を使用し、資
料どおりの構造とトラス構造となった製密感溢れる仕上がりとし
ました。

船尾および航空作業甲板、内火艇格納庫に搭載の艦載艇はすべて
ピットロードの日本艦船装備セットのディティールアップパーツ
に交換してあります。中でも船尾のカッターはキットには含まれ
ないエンジン付きのものに交換することで正確な考証のものに近
づけることができました。航空作業甲板上の船もカッターから通
船に交換し、エッチングパーツによってオールを載せてあります。



ピットロードのパーツに交換した艦載艇

ターンテーブルにエデュアルドのエッチングパーツを使用し、エ
レベーター下の艦載機格納庫の観音開きの扉はキットでは無視され
ていたため、プラ板を使って閉まった状態で再現しました。


エッチングによる航空作業甲板下の補強板


船尾の応急舵はピットロードのレジンパーツもあったのですが、
薄さを重視してジョーワールドのエッチングパーツで仕上げました。


航空作業甲板全景

続いて塗装ですが、これはまずはいつもどおり白立ち上げからはじ
めてます。パーツを洗浄したあと全てのパーツに足つけをし、レジ
ンパーツなどはプライマーをかけたあと、ベースホワイトで下地を
作っています。

船体の外舷色はGSIクレオスMrカラー艦艇色セット@から日本海軍
工廠標準色のSC-01呉海軍工廠標準色を使用しました。ピットロード
の呉工廠色もそうですが、これも資料に基づいて再現したものとあ
って、同じく青みがかかった美しい塗色です。

木甲板もいつもどおりの方法で、GSIクレオスMrカラーのタンを下
地に塗装し→ウッドブラウン→黄燈色と重ねぬって木の色合いをだ
しました。

もちろん、どちらもエアブラシでの塗装です。

防空指揮所をはじめとしたリノリウム部分にはピットロード艦船カ
ラーのリノリウム色を筆で色さししました。


↑全体の色調

上記のように、ほとんどの塗装に塗膜の丈夫なラッカー系塗料を使
用しましたが、菊花紋章や探照灯の反射鏡、機銃の銃身などは金属
色の表現に適したエナメル塗料を使用しています。

また、主砲や副砲、艦橋の測距儀や高角砲、機銃シールド、射撃指揮
所の窓などはスミ入れをしてモールドのメリハリを強調し、最期の仕
上げに船体全体に艶消しコートを施して質感を統一してまとめました。

空中線は、0,6号釣り糸(太さ0,128mm)を着色して資料に従
った張り方で再現しました。着色していますが、この釣り糸は製密テ
グスですので糸のようにメンテナンスの必要がないのがメリットです。



**総括**

2003年度最初の大和製作になりましたが、回を重ねてきただけあって、
見栄えのするモデルが完成して満足でした。大和の場合、どうしても
工数が増えて苦しい思いをすることも多いのですが、その分完成した
時の喜びも大きくてまた次もがんばろうという気持ちが沸いてきます。

今回はクリアーパーツを使用した探照灯の再現や、外舷色の変更など、
新しいパーツなり材料なりを投入し、空中線の張り方も一部変更など
してみたのですが、どれも大和を表現するのに効果的に働いてくれた
と思います。自分の製作技術や表現力を確かめるだけでなく、こうして
まだまだ改善していける部分を発見できて、大きな収穫となりました。

いつかきたる4回目に向けて、またこれからも大和と艦船模型に対す
るイメージを作り上げていきたいです。





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